5.プレイヤーとの交流 9
2025/7/31からひと月毎日日間のVRゲームランキングに入れていただきました。
投稿を始めてもうすぐ一年、途中投稿をお休みさせていただいていた期間もございますが、
こんなに評価やブックマークなど、ご覧いただけていてうれしい限りです。
ありがとうございます。
そのお礼としては不足しているかもしれませんが、本日こちらと同時にもう一話分を投稿させていただきます。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
全部を鑑定して、さっき自分でむしってきた素材は、全部今まで採取したことがなかったものだった。まあ、自分で採取してるのなんて工房のある町の東側のところしかないんだから、扱ったことのある種類が少ないのは当然だよね。
一つ一つ鑑定すると、アクセサリーの文字があるのとないのがあるから、ないのは後で倉庫に突っ込むことに決めて、とりあえず使える奴だけ並べる。自分でむしった中で、その文字が入っていたのは三つ。
ヴェルズィクト
性質:炎属性 品質:A 平均売価:20B
とある地域にしか生息していない樹木。
木材としては芳香高いが、柔らかくで扱いづらいため、料理の香りづけや芳香剤として使われる。蔓は細く裂くと強靭な紐になる。アクセサリー職人の素材として求められる。
アルフトラウム
性質:闇属性 品質:A 平均売価:20B
とある地域にしか生息していない草花。
五枚花弁の美しい花が特徴。アクセサリー職人の素材として求められる。
ベルヒガング
性質:治癒属性 品質:A 平均売価:20B
とある地域にしか生息していない草花。
三股に分かれた花弁が七枚の生育環境で色が異なる花が特徴。アクセサリー職人の素材として求められる。
ヴェルズィクトは、通りがかりに引っ張って引きちぎってきた蔓がたまたまそうだったみたいで、蔓自体は淡い青色をしていて、絶対現実にないような感じがするよね。細く裂くとってあったから、ぶちっとちぎった影響でぼさっとなってる端っこから裂こうとしたけど、うまく裂けなかった。
仕方ないからナイフを入れると、すっと刃が通ってすんなりと裂ける。裂いたのを見ると、外側は淡い青色だったけど、中は淡い緑いろをしていて、なかなかきれいだ。これをネックレスのチェーン代わりにするのも面白いし、ざっくりと編んでブレスレットの紐にしてもよさそう。
アルフトラウムとベルヒガングは、そのまま花を加工して使えそうだ。アルフトラウムはオフホワイトの五枚花弁の花で、花自体が大きくて自分の手のひらと同じくらいの大きさだから、ワンポイントとして使うよりも、メインにおいて考えた方がよさそう。
逆に、ベルヒガングは七枚花弁の花だけど、直径五センチくらいの小さめの花が、一つの茎にいくつもくっついていた。七枚の花弁も、四枚と三枚で重なって二段になってる感じで、ふわふわっとした八重咲とも違うけど、なかなか面白い。集めてまるくボールみたいに固めたらメインに使えるし、小さいままでも周りには使えそう。
そこまで考えて、どういう形にするのがいいか思い浮かばなくて、持ってきていたアクセサリー制作入門書を開く。パラパラと冊子をめくって、手元にあるこの花を使えそうなものがないかを探してみる。
結局入門書の中でちゃんと作ってみたのは「初心者のマクラメアミュレット」のみで、それ以外はかばんを作るときに、参考になるものはないかと見て、部分部分をそれらしく引っ張ってきただけだったから、せっかくの入門書を全く生かせていない。それはこの入門書にも失礼だと思う。素材の問題もあるから、作れないものがあるのは仕方ないかもしれないけど。
うーん、小金持ちになったんだし、拠点に帰ったときはこの入門書に書いてある材料を一通り集めて、全部一回ずつは作ってみよう。
そうしてパラパラ見ているうちに、いくつかよさそうな形が見つかる。全部作ってみようと思ったけど、必要な素材を考えると、たぶんさっきむしってきた分だけじゃ足りないし、これはついに金属にも手を出すべきか。頭の中に浮かんだものを、かばんの中に押し込めていたノートに軽く書き出す。それから、アクセサリーアイデア集やデザイン図案集も開いて、頭の中に浮かんでいるものをより現実的に作る場合について考える。
形、加工方法が頭の中に浮かんでは消えていく。それを一つ一つノートに描きだして、サイズ感もちゃんと描きだす。幸い、使いたい素材の一部があるから、それを基準にサイズの数値を記していけば、頭の中でくるくると立体になった映像が回転をし始める。
デザイン図案集も見ながら、自分の技量で作れそうな形へとまとめていく。いくつも浮かんだデザインの中から、一番と思われるものを、脳内の最終デザインだけ描きつけるノートに描いていく。この時に、軽くカラーパターンも作る。
「初心者のマクラメアミュレット」の時はこんなことしなくてもよかった。そのまま入門書に記載されたとおりに作るだけだったし、染色したとしてもそこまででもなかったから。でも、かばんを作るときは非常に困った。なにせ、かばんは入門書にもアクセサリーアイデア集にも、デザイン図案集にも載ってなかった。
現実でインターネットで検索したものをもとにして、マクラメ結びの結び方に間違いがないかのチェック以外にこれらの本は使えなかったし、逆に最初にデザインを描きだしていた中に最終案を描いたら、埋もれてどれが最終案かわからなくなってしまったので、別のノートにまとめて、わかるようにした。
人間が実際に着用したときのサイズ感イメージまで描き始めたところで、頭の中で声が響いた。
『おぉ~い。晩御飯できたから食堂へ集合しな!』
声だけだとはっきりとしないけど、たぶん、真鯛の刺身さんの声、かな。集合と言われたら集合するようにというカササギさんの指示が頭の中に声とは別に反響して、ノートに描く手が止まる。丁度描きあがったところでよかった。
一階に降りることを考えて、どうせなら素材を倉庫に放り込むのと、どんな素材があるのか見ておこうと思ったので、作業テーブルの上で所在なさげに転がっていた、アクセサリーの表記がなかった有象無象をもう一度かばんの中に詰め直す。
あと、使う素材もテーブルの上に放置はよくないかと思って保管箱に手早く仕舞い直し、一階の食堂へ向かって歩き出した。




