表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/55

5.プレイヤーとの交流 2

「すごい、すごいですよ! ありがとうございます、ありがとうございます!」

 トルソーにかけられた明るい若草色に近い緑色のワンショルダーバッグをくるくると周りをまわりつついろいろな角度から見つめて、織物職人の少女、ハンナがきゃいきゃいと騒ぎ立てている。

 その様子にアメリーさんも苦笑をこぼしつつ、そのワンショルダーバッグには満足そうな様子だった。

 そう、本番のかばん制作を始めてから五日。なんとか出来上がったかばんをもってアメリーさんのところに店に来たところ、内布の制作者であった織物職人もやってきていて、かばんを見たとたんにこんな状態になっている。まあ、ギリギリご要望に添えたみたいでよかったけどね。

 出来上がったかばんの鑑定結果はこうだった。

 

 聖なる春風の空間収納かばん

 性質:聖/風属性 品質:S 売価:10,000,000B

 フルーリングスルフトの毛糸をヘイリグトゥムの花で染色し、丁寧にマクラメ結びで花のような紋様に編み上げたかばんの内布に空間魔法と時間魔法を織り込んだ布を使用している。

 このかばんの中に収納したものは、時間経過に伴う劣化を避けられるため、生物を収納することはできない。

 収納量は品質によるが、最低でも30㎥以上にはなるため、かなり大容量となる。

 編み上げられた聖域は春風と絡み合い、そのめぐみはいずこかへ届くことを祈るものがいるだろう。

 収納量:100㎥ 現在の残容量:100%

 

 やベーもん作っちゃったよね。いや、100㎥ってめちゃくちゃ大容量だし、延々とむしってむしってむしりまくってもかばんが満杯になるのはほとんどないと思う。これで心行くまでむしり続けられるけど、これ、本当にもらっていいんだろうか……。

 まさかの出来上がったものが品質Sでびっくりした。あと、売価ナニコレ。びっくりするくらいの値段に絶句したけど、よくよく思い出せは内布だけで半分くらいになるし、まあ妥当なのかなと考え直す。フルーリングスルフトの毛糸って結構高価みたいだし。

「それにしても、この収納量はかばんの大きさで変わるんでしょうか? 小さなものだと小さくなるんでしょうか?」

 ようやく少し落ち着いたのか、ひたすらワンショルダーバッグ(正式名称は聖なる春風の空間収納かばん)を見つめていたハンナがふと気づいたと言わんばかりにこちらを見てそう尋ねてくる。

「試してないからわからないけど、可能性はあると思う」

 そう答えると、ハンナはじゃじゃーんと言わんばかりに内布として使用したものと同じものを背後から取り出してくる。そしてそれを、なぜかこちらへそっと差し出してきた。

「……もう一つ作れって?」

「あの、同じこの大きなカバンじゃなくて、小さい、こう、ポーチみたいなサイズの、小さいもの作れませんかね?」

「……ポーチ……?」

 ハンナの言うモノがどんなものなのかよくわからなくて首をかしげると、笑っているアメリーさんが手のひらより少し大きいくらいの、小さなかばんを出してきた。

「イメージとしてはこんなサイズかね」

「ん……これくらいならそんなに時間がかからずに作れるかなぁ」

 自分で作ったかばんと見比べて、四分の一以下のちいさなかばんであれば、たぶん作れそうだ。工房の中に残っている素材の量を思い出しながら、このサイズならギリギリ間に合うかもしれないと頷く。

「フルーリングスルフトの毛糸はまだ残ってるかい?」

「うん。このサイズならギリギリ作れると思う。僕のと同じ形がいいのかな。違う形なら、ちょっと考えないとダメかも」

「じゃあ、こんな、蓋じゃなくて口を紐で閉めるこういう形ならどうでしょう?」

 すすすとハンナに差し出されたのは、長方形の短辺の方に紐を通して、きゅっと口の部分を絞っている小さいかばんだ。これなんだっけ、なんか名前があった気がするけど思い出せないや。

 とりあえず、ハンナの差し出してきた小さいかばんを受け取って、どんな感じなのかを確認する。構造はそんなに難しくなくて、絞られている口のところに紐を通す部分を作ってあって、そこに紐を左右から通して、口部分を絞ってるらしい。この紐を通す部分をどうしようかなと考えて、端を内側に結びつけるように紐を通す部分を作ればできるかな。

「うん、これならできるかも? 作ってみるけど、時間もらっていい? なんか、プレイヤー(ユーバー)のイベントがあるらしくて、それが終わってからになるかも」

 そう伝えると、アメリーさんが「そうなのかい?」と首をかしげる。それに、そうなんだよねと頷く。現実の時間で……ああ、明日かな。カササギさんからメッセージが来てから週が明けているので、今週の半ばだから、たぶん明日だと思う。とはいえ、今はまだ今日の一回目のログインなので、残りのログイン時間を使えば何とかなるかな。

「小さいの、できたらまた持ってくるね」

「ああ、頼んだよ。もし使えそうなら、継続して作成を依頼するかもね」

 アメリーさんの言葉に、まあ小さいのならそこまで手間じゃないだろうし、内布用の布地の分くらいなら作ってもいいかも。とりあえず、工房に戻って作ってみよう。かばんの紋様は、聖なる春風の空間収納かばんの紋様を小さくすればいいだろう。

 試作用のヘイリグトゥムの蔓はまだ残っていたと思うけど、もしかするとそのままじゃなくて細く裂いてから使った方がちょうどいいかもしれない。染色はどうしよう? ヘイリグトゥムの花での染色でいいかなぁ。ほかに何か染料あったっけ。

 なんだかんだ増えてきた素材を頭の中で整理しながら、早く工房に帰ろうとアメリーさんとハンナに小さく挨拶をして、アメリーさんのお店を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
また品質の壁越えしてて草生えますよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ