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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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14/55

3.アクセサリーを作ってみる 3

「……Was?(なんて?)

 一瞬頭が真っ白になり、とっさに口からこぼれたのはなぜかドイツ語だった。あれだよ、大学で第二言語として取らされてたのと、よくよく確認してみるとオートラヴィーダの中の名前ってドイツ語から持ってきてるの多いな~と思ってたのがいい感じにまじりあったせいだと思う、たぶん。

 いや、いきなり過ぎない? ってかおばさんと顔合わせたの二回目だけどなんでこんな提案が出てきたんだ???

「う~ん面白い顔だこと」

「いや、突然過ぎない? なんでそんな話になったの??」

「ふふ、まあびっくりされるとは思ってたけどねぇ」

 おばさんは相変わらずにんまりとしたまま楽し気にこちらを見てる。

「今までほかのユーバーとも話をしたけどねぇ。坊やほどしっかりできるところからやろうとしてる子はいなかったからねぇ。坊やなら、きっとあいつの残した工房をめちゃくちゃにしないだろうと思ったのさ」

 こっちを見ながら、どこか遠くにいる誰かを見てるようなおばさんは、どこか悲しそうに見える。もしかして、その知り合いって人は亡くなったのかもしれない。自分では経験もないし、よくわからないけど、親しい人がいなくなるのは悲しいことだとよく聞いてるから、そうなのかなと思った。

「あと、たぶん坊やはちゃんとしたアクセサリーを作れる気がするからね。それをいずれ入荷させてもらうための、先行投資の意味もあるんだよ」

「……青田買いしたいってこと?」

「そう思ってもらっても構わないさ」

 おばさんの言葉に少し考える。たぶん、こちらにデメリットはほとんどないんだろうなと思う。結局のところ、アクセサリーを作りたいなら作業テーブルは必須で、それはどこかに設置されてるものを借りるか、自分でそれを使える環境を整える必要があるんだろうし。

 たぶん、おばさんが言う「買わないか」は賃貸というよりも物件購入と同じ意味合いだと思うから、ローンを払い終えたら自分の持ち家になると思えば、いつまでこのゲームを遊ぶかはわからないけど、長く続けることになるなら悪くないと思う。

 そう考えて、おばさんに向けてこくりと一つ頷いた。

「じゃあ、甘えさせてもらうね」

「そうかいそうかい! じゃあ、ローンの契約についても話そうかねぇ」

 こちらの回答を受けて、おばさんがとてもうれしそうに一枚の紙を取り出した。釣られて目を通せば、いわゆる契約書らしくて約款が書かれている。さっと読み込めば、かなり簡素だけど必要最低限の内容が記されているのはわかった。

 ふんふん、ローンは1,000B以上で収入が増えたら一回の返済額を多くしてもOK、返済はゲーム内時間で4か月に一回(要は現実の1か月に1回ね)。それと合わせて、雑貨屋アメリーへ制作物の納品……。

「えっと、この、制作物の納品って……」

「そのまんまだよ。坊やが作ったアクセサリーを、坊やができる数納品してほしいんだよ」

「でも僕、まだ一回も作ったことないよ? そんな初心者の作品でいいの?」

「もちろん。そういう掘り出し物を探したい客もいるんだよ。もちろん、売れた分は売り上げとして渡すし、初心者が作ったアイテムを利用して技術を磨きたい人間もいる。全く売れないってことはないのさ」

「そうなんだ」

 うーん、いまいちよくわからない仕組みっていうか、なんだろうなぁ。まあ、雑貨屋さんを実際に営業してるおばさんがそういうなら、いいのかな。こっちとしても作った後にどうするか何も考えてなかったし。

「じゃあ、それで」

「よし。それじゃあここに名前をサインしておくれ」

「ん」

「ええっと……坊やの名前は、『カナカ』でいいかい?」

「うん。大丈夫」

「よしよし。アメリー・アリッサ・メッツェルダーが取り次ぐ。ユーバー『カナカ』との改まる契約をここに」

 おばさんが先ほど見せた鍵を、こちらのサインが入った契約書の上に乗せて、その上に手のひらをかざす。すると、おばさんと鍵の間にフォンっという音とともに契約書と同じくらいの大きさの半透明な……これは、なんだろう。丸い幾何学的な何かが浮かび上がった。

 現実では見ることがなさそうなその光景は、ほぅっと息が漏れるくらいきれいだった。そのきれいな丸い幾何学の何かは、現れたのと同じくらい急にフォンっという音を立てて消えてしまった。ちょっと残念だなと思いながらおばさんを見ていると、終わったよ、とおばさんが契約書の上に乗せていた鍵をこちらに差し出していた。

 受け取ってから、鍵の様子が変わっていることに気が付く。鈍い色をしていたはずの鍵がきれいな銀色になっている。さらに、持ち手部分は時々きらきらと緑色に光っている。

「契約の鍵さ。お前さん以外は許可がないと工房に入れなくするための魔法がかかった鍵だよ」

「へぇ……すごいね」

 現実にはない、その魔法というのは素直にすごいと思う。ぎゅっと鍵を握りしめたこちらを見て、おばさんは笑いながら地図を広げた。

 どうやら、工房のある場所を教えてくれるらしい。この雑貨屋から結構離れた区画にあるその位置を自分の地図に移す方法がないか調べるのに集中していて、気づかなかった。この時、ワールドアナウンスというのが周囲に響き渡っていたことに。

現在の生活に大分慣れてきたので、今後3~4日に1回のペースで更新していければと思います。

まだまだのんびりペースですが、よろしくお願いいたします。


現在のステータス


PC名:カナカ

身体状況:五体満足/所持金:5,000/所持品:初級アクセサリー制作キット/アクセサリー作成入門書/エルガー草×77/ミットライド草×62/薬草×15/グロル草×51/トラウリギケイタ草×34/ウェアツヴァイフル草×38

重要なもの:始まりの街 モーガンの工房の鍵

拠点:始まりの街 モーガン

所属:商業連合 雑貨屋アメリー

未使用SP:21P

取得済みスキル:歩行Lv7/視線察知Lv6/格闘技術Lv2/蹴術Lv1/アクセサリー制作Lv1/アクセサリー鑑定Lv3/採取Lv11/鑑定Lv3

※11/4 未使用SPの計算を誤っていたので修正しました。

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