表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

1回目

「嘘じゃないのよ、ほんとに聞こえたの!」


翌日、教室に着くなり真代を捕まえ、昨日の鐘の音についてまくしたてるように説明した。

あれは絶対に空耳なんかじゃないと切に訴えたところで、真代はからかう姿勢をやめない。


「あんたそんなキャラじゃないんだからやめなさいよね。どうせ怖い動画とか見たんじゃないの?」


せせら笑う彼女に、怒りではなく憎しみの感情を覚えながら、冷静になり切れない震えた声でもう一度だけ言った。


「ほんとに、聞こえたのよ。」


普段冗談を言わないため、これは冗談ではなさそうだという雰囲気がようやく伝わったらしい。

まだにわかには信じられないという面持ちだが、先ほどまでの完全に冗談として扱う姿勢は取りやめてくれた。


「テレビついてたとか、携帯から音楽流れてたとか、窓が開いてたとか、なんかそういうのじゃないわけ?」

「あたしシャワー浴びてたの12時過ぎよ。ママたち寝てるから余計な音出さないようにしてたし。そもそもうちのお風呂場窓ないもん」


と、そこまで話してチャイムが鳴った。

続きは後でとなり、そのまま化学の授業が始まる。

ただでさえちんぷんかんぷんなのに、今日にいたっては先生の声すら届かない。

ガマガエルに似た先生で、授業も淡々と進むため生徒からの人気は低い。

他の生徒も上の空になっているためもう慣れているのか、特に注意されることなく授業は終わった。

その間中ずっとあの鐘の音が反芻していて、とても授業どころではなかった。


「お払いだよ。お払い行こ」


真代は昼休み、ずっと考えていたことを大発表するかのように伝えてきた。


「お払いって、神社とかの中でやるやつ?なんていえばいいのよ。鐘の音が後2回なったら私死んじゃうんですって?」


真代はきっと親身になってくれているのだ。

頭ではわかっても、ささくれだった心にその言葉をそのまま受け入れる余裕はなく、なぜか反発してしまう。

自分で言った言葉にショックを受けつつ、「まあでも、それくらいしか解決策なんて思い浮かばないしね。とにかくやれるだけやるしかないか」と、さらにひどい言葉でフォローしているかのような形をとった。

普段セーブしていたものが、こんな状況になると止める間もなく自分の外に出て行ってしまう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ