夢……?
「失礼します。入ってよろしいでしょうか」
「あ、アイノさんですね。どうぞ」
「失礼します。絵を描くのは楽しめましたか?」
「っはい!ありがとうございました!」
「良かったです。……今日はもう遅いので、寝る準備をしましょうか」
「はい。えっと…絵に使った道具などは……?」
「私が片付けますよ。寝間着はこちらに」
「え、あ、ありがとうございます」
(わぁ、すごい。着物だ……旅館みたい…)
「手伝いましょうか?」
「あ、すみません。ありがとうございます」
「いえいえ」
「私が着ていいのでしょうか…」
「とても似合っております!」
(藤の柄……綺麗…)
「それでは、明日のために寝てくださいね。今日は私が隣で寝ますから」
「ありがとうございます…!」
(一人じゃ、不安でしたから…)
「それでは……おやすみなさい」
「はい」
違う環境だから寝れないと思っていたが、思ったより疲れていたのと、環境が良すぎるのですぐに寝付いた。
(ん…?ここは…?さっきまで、ベッドにいたのに…ああ、夢か)
「綺麗なお花畑…」
『気がついたか?』
「うひゃあっ!だ、誰?」
突然女神のような声が響いた。
『驚かせて、すまなかった。私は、魔法を使うために協力してもらう精霊の親、まぁ、貴方がいる世界では『精霊の女神様』と呼ばれているな』
「それって……」
世間知らずのカノでもエイナや両親が話していたから知っている。いつも両親が、
“精霊の女神様に気に入られるようにね”
と言っていた。
「えっと…なぜ、私はここにいるのでしょうか?」
『貴方が選ばれし者だからだ』
「選ばれし、者…?」
『ああ。まあ、詳細は起きてから、だな。
それによって、災いが降りかかるかもしれないが、絶対に幸せになれる。だから、…選ばれし…のと、……てい……』
(あれ…?言葉が聞き取れない…それに、視界がぼやけていく…)
『頑張れ』
その一言は、はっきりと聞こえた。その瞬間、意識が遠のいた。
「ん…?ここ、は…?ああ、ノーワルド家か…。んん~」
(久しぶりによく寝たかも……)
背伸びをしていたら、なんだか左手が違う色をしていることに気が付いた。
「ん?って、え、え?えええぇぇぇ?!」
「どうしましたか?!」
今までカノの部屋で用事をしていたアイノがその声に気が付いた。
「ひ、左手が……」
「左手ですか?って、え?これって……」