縁談がきた
この国、ノーワルドは基本、平和だ。
戦争などはとっくに終わっているし、国民同士も仲が良い。だが、そうではない家庭もある。この物語は、人に本当に愛され、自分から愛せるようになるまでのとある少女のお話。
「不味い!なんなんだ、このお茶は!さっさと入れ直してこい!」
「申し訳ございません」
快い朝に、それをぶった切るお母様の怒鳴り声。
「うふふふ。可哀想なお姉様ねぇ」
それを笑う妹、エイナの声。
そしてそれらを無視するお父様。
大抵のグールガ公爵家の毎朝はこんな感じ。
私はカノ・グールガ。18歳。この国ではとっくに結婚している年齢だ。それなのに縁談さえこないのはこの環境だから。
この国は、ほとんどの人が多少差はあるが、利き手の手の甲の中心ほどに小さなバラのアザがある。それが魔力の大きさだ。それは、6歳までには絶対にでる。私も両親に愛されていたと思う。6歳までは。
私はアザが出なかった。そして、公爵家の令嬢から使用人くらいまで価値が下がった。
この頃はまだよかった。もっと酷くなったのは6歳になって半年後。妹のエイナが生まれた。エイナは、生まれた時からアザが手の甲一面にあった。それからは、両親はエイナだけに夢中で、私のことなどは『エイナのため』といって、なにも目にとめてくれなかった。
エイナが3歳の頃くらいから、時々お母様に鞭で打たれた。エイナが成長するにつれ、お母様の暴行はエスカレートしていった。
毎日鞭で打たれ、髪を引っぱられたり、3日間食事抜きや、時には熱湯をかけられたりした。そして今に至る。
「お茶をお持ちいたしました」
「ふんっ、まぁまぁね」
まぁまぁかい。
「お嬢様も、どうぞ」
「ありがとう」
これが本当なのか演技なのかがわかりにくい。できれば本当がいいが。
「ああ、そういえば、お前に縁談がきたぞ」
今日始めてお父様が声を出した。
「はい。どちらさまでしょうか」
「シェント・ノーワルド様だ。地図と着物を渡しておく。それを着て、本日中に出て行くように」
「かしこまりました」
…ん?ノーワルド?
「よかったじゃなぁい。女嫌いで冷酷過ぎる王太子様じゃん。ボロボロになっておいで」
世間知らずな私でも知ってる。シェント・ノーワルドの噂は。
『女嫌い』 『冷酷』 『氷の王子』などなど。
まぁ言えばいやな噂しかない人だ。
そこへ嫁げと。
「無礼のないよう」
「御意」
2時間後…
「では、いって参ります。今までありがとうこざいました」
「きったない黄色の髪の毛、緑色のきったない瞳。最後までブスね」
「さようなら、お姉様」
これで、ここでの生活が終わった。
解放された気分だった。
初めまして、抹茶畑です。
時間がない時にパパッと読めるよう、1話1話短めで書きます。
1週間に5回ほど投稿できたらいいな、くらいです。
よろしくお願いします。