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第26話 キーアイテムを入手しよう

 空一面が雲に覆われてる夜更けに、オレは王都にあるジンの屋敷の近くにいた。

 少し迷ったが、今回は元の姿のままでいこうと思う。老人の姿で行けば敵に遭ったとき隙を突きやすいが、万が一オレが下手を打ったとき、ルーク村の村長であることがバレてしまう。

 念のために黒のローブを身に纏い、目深にフードを被る。


 サラが危ないって時にこんなことを言うのは不謹慎だが、少しわくわくしてきた。今までは小さな村の村長として、のんびりスローライフを送ってきたからな。まるでゲームの主人公になった気分だ。

 まぁ、この世界の本当の主人公はアレンだし、今のオレには一緒についてきてくれた仲間もなにもいないわけだが……。

 ……って、そんなこと考えてる場合じゃないな。ぶんぶんとかぶりを振って高い塀を登り、敷地内に侵入する。


 そこら辺を歩いているごろつきに見つからないようにこっそり移動して、オレはあかりのついていない部屋の窓の前に立った。

 ジンの屋敷については、事前に調査済みだ。屋敷の中に入ったらどこを目指せばいいのかある程度把握はしている。


 これから忙しくなる前に、あらかじめ目的を確認しよう。今回のオレの目的はふたつだ。

 ひとつ、サラを連れ戻す前に、とある物を手に入れること。そしてもうひとつは、それを持ってサラを連れ戻すことだ。


 ……よし、行こう。覚悟を決めたオレは静かに窓を叩き割って、部屋の中に侵入した。

 部屋の中を通って廊下に出ると、角からふたりの男の声が聞こえてきた。


「あいかわらずジンさんは容赦ねぇなぁ」

「でも、そのおかげであの女騎士が折れたぜ。今頃はベッドの上でジンさんが美味しくいただいてるだろうよ」


 ……今とても不穏な会話を耳にした気がするが、落ち着けオレ。オレは男ふたりが油断している隙に、廊下の角から飛び出して姿を見せた。


「誰だ!?」


 男ふたりがこちらに振り向いているうちに、オレは距離を詰めた。手前にいた男の腹部に拳を入れて、もうひとりの男には、すかさず顔の側面に回し蹴りを見舞う。

 ふたりは抵抗する間もなく、あっという間に気絶してしまった。

 話の内容から察するに、やっぱりサラはもうジンの所に行ったみたいだな。取り返しのつかない事になる前に、早くあるものを手に入れて助けに行かないと……!


 そうと決まったらのんびりしている余裕はない。駆け出したオレが目指すのは一階の離れ。移動中にばったり遭ったごろつきを手早く倒して、やがてとある部屋の前にたどりついた。

 ドアを勢いよく開けると、部屋の中には寝巻姿のメイドがいた。


「きゃあっ!」

「騒ぐな」


 すかさずメイドの口を塞ぎ、抵抗しないように腕をつかんで拘束する。


「オレは、サラの友だちだ」

「――!」

「サラには、ナタリアという親友がいたこと、そして、ナタリアにはレナという、本当の姉のように慕っていたメイドがいたことも知っている」

「…………」


 そっと手を放すと、メイド――レナはとても驚いた顔でオレのことを見つめていた。


「……私になにか、御用ですか?」

「ジンから、とある物を預かっているだろ? それをオレに、渡してほしい」

「ですが……」

「大丈夫だ。キミの安全はオレが保障する。それに、キミも知ってのとおり、サラはさっきこの家に来てしまった。このままサラがジンのものになってもいいのか?」

「…………」


 レナはオレを値踏みするような視線で見た後、ゆっくりと頷いた。


「……わかりました」


 オレから背を向けて、レナが部屋の奥にある棚の前に立って、引き出しの中からとあるものを取り出した。


「どうぞこれを」


 レナから渡されたのは一通の手紙だ。封筒には「サラへ」と書かれている。


「その手紙には、ナタリア様の想いがすべて詰まっています。どうぞこれを、サラ様にお渡しください」

「ありがとう。……これからオレはサラの所に行くけれど、なるべく穏便に済ませるから、キミはここでじっとしていてくれ」

「わかりました。どうぞお気をつけて」


 万が一疑われたときはどうしようかと思ったが、レナは原作どおり聡明で芯の強いメイドだった。

 手紙を懐にしまって、オレはレナの部屋をあとにした。

 これで万が一の時に必要なものは手に入れた。後はサラを連れ戻すだけだ。

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