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第23話 オレがなんとかする

 サラと別れたオレは、一人街中を歩いていた。

 歩きながら、原作であった出来事について思い返す。


 ――ジン。今は亡きナタリアの義兄で、金持ちであるのをいいことに、気に食わないやつに対しては権力を振りかざす嫌な野郎だ。

 不慮の事故でナタリアを死なせてしまったことを言い訳に、サラはジンに結婚を迫られている。

 本来ならこれはリグブレの主人公が解決するべき問題なのだが、この世界の主人公はどうにも頼りにならない。

 かといってこのままサラが苦しむ姿を黙って見ているわけにはいかない。


 サラはオレの推しだが、それ以上にオレの村の一員でもある。

 ここはオレがなんとかするしかないか……。


 誓うように拳をぎゅっと握りしめると、前を歩いていた兄ちゃんが、ポケットに入れていたバンダナをぽろりと落とした。兄ちゃんはそれに気づくことなく、すたすたと前を歩いている。

 オレが慌てて拾い上げると、兄ちゃんは右に曲がって路地裏の方に消えていった。

 こんな時、元の姿だったらすぐに追いつけたんだけどな。老人の姿じゃ思うように走れず、それでもオレは兄ちゃんを追いかけて、路地裏の中に入った。


 するとそこには、落とし物をした兄ちゃんと、ガラの悪そうな男ふたりがオレを待ち構えていた。

 くそっ、ハメられたか……。

 強い殺気にオレが一歩後ずさると、落とし物をした兄ちゃんがニヤリと笑った。


「落とし物を届けてくれたのに悪いな、爺さん」

「あんたたちは……」

「ジンさんからの命令でよ、あんたに少しだけ酷い目に遭わせてほしいそうだ」


 兄ちゃん――男が、愉快そうな顔でオレに詰め寄る。


「あんたに罪はないが、これも命令だからな。恨むならあの強情な女騎士様を恨むんだな」


 オレの目前に迫った男が拳を振り上げる。

 ジンの手下なら、手心を加える必要はないな。オレはすかさずしゃがんで、回した男で男の足を引っ掛けて転ばせた。


「!?」


 尻もちをついて混乱している男の腕をむんずと掴んで、後ろにいる男に向かって投げ飛ばす。

 ふたりはボウリングの球とピンのようにぶつかった後、あっという間に気絶してしまった。

 残ったひとりが、ひどく狼狽した様子でオレを見下ろす。


「爺さん……。あんた、一体何者なんだ……?」

「ふぉっふぉっふぉっ。年寄りを甘く見ないことじゃ」


 鳩尾に拳を叩き込むと、最後の一人も地に膝をついて倒れてしまった。

 まったく……。ジンのやつ、オレと会ってから間もないのに、手下に襲わせるとかどういう神経をしてるんだ……。

 ぱんぱんと手を叩いて、ついてしまった汚れを払う。


 この展開は原作のリグブレにもあった展開だ。

 アレンもまた、ひょんなことから一人で路地裏に入り込んだらジンの手下に襲われてしまった。

 手下をよこすということは、ジンも本気でサラを手に入れる気なのだろう。

 今すぐなんとかしてやりたいが、サラのことはしばらくの間静観することにする。


 ジンは王都の中で有数の権力者だ。オレがもし下手な真似をしたら、村のみんなに迷惑をかけてしまうことになる。

 だけどサラ。お前のことは絶対に守ってみせる。

 オレは心にそう誓って、薄暗い路地裏を静かにあとにしたのだった……。

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