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第16話 【ミオside】やっぱりわたしは

【ミオside】

 家に帰ってようやく一息ついたわたしは、ベッドの上でぬいぐるみを抱いてころころと寝転がっていた。


「ふふっ」


 グランさんと別れてから、頬が緩んで止まらない。

 今日は色々あったけれど、わたしを守ってくれた時のグランさん、とっても格好良かったな……。




 グランさんと王都で楽しくおでかけしていたら、いつのまにか治安の悪い場所まで来てしまった。慌てて引き返そうとすると、わたしとグランさんは盗賊たちに捕まってしまった。

 これからどうなってしまうのだろう……。恐怖で怯えるわたしの手を引いて、グランさんは次々に襲いかかる盗賊たちを全員倒して、わたしを外に連れ出してくれた。

 もし、わたしが旅に出たら、今日みたいな目にもう一度遭うかもしれない。

 それを思うと少し怖くなるけれど、それ以上にわたしの目蓋には、グランさんの勇姿が焼きついていた。


 大人数を相手に戦って、余裕で勝利をおさめたグランさんはまるで物語から飛び出した主人公のよう。

 その後、遅れて恐怖を感じて泣きじゃくると、グランさんがわたしに隠れた才能があることを教えてくれた。

 あの時グランさんが教えてくれなかったら、今頃わたしの心には深い傷が残っていたと思う。


「…………」


 グランさんのことを思い浮かべながら、腕に抱いたぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。

 ……やっぱりわたし、グランさんのことが好き。


 グランさんは子どもの頃からやけに大人びていて、時々寂しそうに遠くを見ていた。

 わたしでよければ話を聞かせてください。何度そう言っても、グランさんは困って笑うだけで、結局わたしを頼ってくれなかった。


 だけど、少なくとも嫌われているわけじゃないと思う。実際にわたしになにかあった時、グランさんは真っ先に駆けつけてくれた。


『お前になにかあると原作の展開……いや、色々と面倒な事になるからな。決してお前のことが好きなわけじゃないぞ! そこら辺誤解しないように』


 なんてグランさんは時々冷たいことを言うけれど、本当は優しい人だっていうことを知っている。


 もし、わたしがいつか旅に出るなら、その時はグランさんも一緒がいい。

 だけどグランさんは村長で、この村のことを誰よりも一番愛している。グランさんが村長をやめてわたしと一緒に旅立ってくれるとは思えない。

 子どもの頃は外の世界に憧れていたけれど、今ではグランさんと一緒にいられるのなら、この村にずっといるのもいいかなって思ってる。


 どちらにせよ、わたしの治癒術は今後グランさんになにかあったときに役立つだろう。

 だから、明日からグランさんに内緒でこっそり治癒術の勉強をしようと思う。いざというとき大切な人たちを守れるように。グランさんの隣に立てるように……。

 その日まで待っていてくださいね。グランさん。




 大好きな人のことを思い浮かべていたら、だんだん目蓋が重くなってきて……わたしはぬいぐるみを抱いたまま眠ってしまった。

 その日、わたしは久しぶりに子どもの頃、グランさんと一緒に遊んだ時の幸せな夢を見たのだった……。

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