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第15話 頑張ったご褒美

 ――サラともっと一緒にいたい。


 そんなオレの無茶な要求が通ったのはいいが、王都を出て村に向かっている最中にオレは大事なことに遅れて気がついた。モリアに勝手にお願いしてしまったが、サラはこれでよかったのだろうか。

 いくら村を離れるのが寂しいとはいえ、サラには騎士としての役目があるしな。もしかしたらオレは余計なことをしてしまったのかもしれない。


 もしサラが怒ってたらどうしよう……。とりあえず、今日は夜遅いし明日朝一でサラと話をしよう。

 落ち着かないまま村に帰り、ようやく自分の部屋に戻って一息ついていると、誰かがドアをノックした。オレが返事をすると入ってきたのはいつものメイドだ。


「夜分遅くにすみません。サラ様が今すぐ部屋に来てほしいそうなのですが……」

「部屋に?」


 もしかしてサラ、怒ってたりして……。そう思ったオレは慌ててサラの部屋に向かうことにした。

 コンコンとドアをノックすると、部屋の中にいるであろうサラから返事がきた。


「グランか。中に入れ」

「失礼します……」


 そっとドアを開けて部屋の中に入ると、真っ先に視界に映った光景にオレは息を飲んでしまった。


「どうした、グラン?」


 ベッドに腰かけたサラが不思議そうな顔をしてオレに尋ねる。


「い、いや、別に……」


 口にするのも恥ずかしくて、慌てて視線を逸らしてしまう。

 今のサラはキャミソールに短パンという、今までオレが見た中で一番露出の高い格好をしている。

 そういえばサラ、寝る時は薄着にならないと眠れないんだっけ……。原作でもこんな姿をしたスチルがあってフィギュア化もされていたが、実際にこの目で見れるとは思わなかった。これは嬉しいご褒美だが、あまりここにいるとオレの理性がいつか崩壊してしまいそうだ。


「で、話ってなに……?」

「さっき、騎士団長から手紙が届いてな。盗賊の隠れ家を見つけたお礼に、私にもう少しこの村にいてほしいと頼み込んだそうだな」

「勝手なことしてごめん!」

「いいや、別に怒っているわけじゃない。むしろお前には感謝ばかりだ」


 慌てて下げた頭を上げると、サラは穏やかに笑っていた。


「ありがとう、グラン。私ももっとこの村にいたいと思っていたから、お前が騎士団長にそう要求してくれたと知った時はとても嬉しかった」


 よかった、サラは怒るどころか喜んでくれたみたいだ! にこにこと笑みを浮かべる推しに、オレは胸を撫で下ろした。


「……だが、同時に困ったこともあってな」

「困ったこと……?」

「私がルーク村の村長のもとに嫁ぐのではないか。そんな噂が、騎士団の中で流れているらしい」

「え、えぇっ!?」

「まったく、困ったものだ……。まだ、恋人にすらなっていないというのに」


 と言うわりには、サラはまんざらでもなさそうな顔で苦笑している。

 あ、あれ……? 今日はなんか、ミオもサラも様子が変だぞ……? これじゃあまるでどっちもオレのことが好きみたいじゃないか。

 これがアレンならわかるが、今のオレはただのモブ村長だ。ふたりに好意を向けられていい立場じゃない。


「そういえばグラン。前に私が言ったお願い事についてはなにか思いついたか?」

「い、いや、まだ……」

「お前は本当に無欲なやつだな……。お前なら、多少無茶なお願いを要求しても私は構わない」


 もしかしてサラ、熱でもあるんじゃないのか!? サラが熱に浮かされたような顔をして立ち上がり、ゆっくりと近づいてくる。

 そんなに近づかれると、目のやり場に困ってしまう……。オレがせわしなく視線を泳がせていると、サラがなにかにつまづいてしまったようだ。


「あっ、危ない!」


 ――どすんっ!


 すかさず抱きとめたものの、オレもサラも同時に床に倒れてしまった。

 サラに怪我がないといいんだが……。反射的に閉じていた目を開けようとすると、顔面にとても柔らかい感触がした。


「すまん、グラン」


 サラが慌てて起き上がろうとすると、さらに柔らかい感触がした。

 あ、これってもしかしてサラの……。

 何物にも例えられない極上の感触に、オレはサラの胸に顔をうずめたまま、意識を失ってしまったのだった……。

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