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第14話 前世はただのリーマンです

「…………」

「…………」


 それから騎士団の詰所に立ち寄って、どのくらいの時間が経ったのだろうか。

 オレが盗賊を倒したことを伝えると、とても気まずい空気になってしまった……。


「あ、あの……」

「……グラン村長」

「はい……」

「我々騎士団に協力してほしい。そうは言ったが、まさか一日経たないうちに手柄を上げるとは思わなかったぞ」

「い、いやぁ……ははは」


 なんだか最近こんな展開ばっかりだな!? あまりにも気まずくて、今のモリアの顔がまともに見れない。


「ちなみに貴殿が倒した盗賊は、王都で指名手配していた大きなグループだ。街のあらゆるところに手配書が貼ってあったが、見た記憶はあるか?」

「いや、全然……」


 村にも関係のあることなら話は別だが、オレはただのモブ村長だ。王都で指名手配されている悪党をわざわざ見つけようとは思わない。


「……やはり、騎士団に入る気はないのか」

「入りません」

「報酬金は」

「いりません」

「なら、女でもなんでもいい。欲しいものは」

「な、なにもありません」

「なんだ、貴様の前世は聖人か!?」


 いいえ、ただのしがないサラリーマンです!

 ついに爆発したモリアの間で、オレはただただうなだれることしかできなかった。


「…………」


 我に返ったモリアが、イスに座り直して机の上で手を組み直す。


「貴殿が何度拒もうと、こちらのメンツもある。今回の働きに見合う報酬を決めないかぎり、貴殿をこのまま帰すわけにはいかない」

「そんなこと言われたって……」


 大金なんかもらったらまた面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないし、女の子を紹介してくれるといっても、オレにはもう好きな人がいる。

 もし、サラがオレのお嫁さん……なんてわがままは言わない。なんでも話せる友人くらいにランクアップしたら幸せなんだけどなぁ。


「あ……」


 そういえば今思い出したんだけど、サラはもうすぐ村を出なきゃいけないと言っていた。なら……。

 これを言ったらモリアに難しい顔をされそうな気がするが、それでもオレは勇気を出して言うことにした。


「あの……。報酬といってはなんですが、サラをもう少しだけ借りてもいいでしょうか?」

「サラを……?」

「オレにとって、サラは憧れの人なんです。最近は彼女の善意で村の復興作業を手伝ってもらっていたんですが、もう少し一緒にいたくて……」

「…………」


 騎士団からひとりが抜けるとなると相当痛手なのだろう。モリアが顎に手を添えて真剣に考えこむ。

 さすがに今のは欲張りすぎたか? だが、近いうちに村からサラがいなくなってしまうと思うとどうしても寂しい。毎朝サラの乳揺れを見る楽しみがなくなるし、アレンは……まぁ、あいつのことはあいつが勝手にどうにかしてくれるだろう。


「サラはあれでも、次の騎士団長の候補に名が上がるほどの実力の持ち主だ」

「……はい」

「それでも貴殿はサラが欲しいと言うのだな?」

「……はい。サラを見ていると、毎日学ぶことばかりですから」


 サラがいなくなったら、毎朝の楽しみがなくなってしまうしな!

 祈るような思いでモリアの返事を待つ。

 するとモリアはわずかに嘆息した後、可愛い娘を嫁に送り出す父のように寂しげに微笑んだ。


「……わかった。サラのことをよろしく頼む」


「ありがとうございます!」


 モリアの英断に全力で頭を下げる。

 やった、これでサラともっと一緒にいられるぞ!

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