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呪われた令嬢、オタクで転生者な精霊様に救われる

私の名はセリス・ランディス。

バルレアンという街に令嬢として何一つ不自由ない生活をしていた今の私は、薄汚れた服を纏った見窄らしい奴隷。

こうなった理由は活性化した魔物達がバルレアンに侵攻し、私を含め大勢の人々が襲われたからです。

屋敷にいたお父様もお母様も私を慕ってくれた従者も、みんな殺されてしまいました。

なのに何故私だけが生き残っているのか。

その理由を私は、魔物達の会話から牢屋越しで偶然知ってしまいました……。


「あの元令嬢、どうやら魔力がとんでもねぇらしいぜ」

「とんでもねぇってどんぐらいだよ」

「魔族の王を作れるぐらいさ」

「ホントかよ!? そりゃとんでもねぇなぁ!」

「コイツはグランス様の孕み袋になるのさ」

「ギャハハハッ!! そりゃ楽しみだなあ!」


要するに私を生かした理由は、私の身体が目当てらしい。

気持ちが悪いです。

吐き気がします。

魔力があるせいで魔族の繁栄のために生かされてしまうなんて……そんなのあんまりです。

私の心の声が漏れたのか、魔物達は私を見て嘲笑っています。


「その前に俺らで楽しんじまうかぁ?」

「ギャハハハッ!! それもいいなぁ!」


……こんな力、欲しくなかったです。

実際の私は魔力があるだけで、魔法はほとんど使えないというのに。

……そんなの宝の持ち腐れです。

誰か、私のことをいっそのこと殺して──。


「同人誌でやれや魔物どもおぉおおおおおおっ!!!!!!」


そう願ったその時、叫び声が聞こえました。

それと同時に、嘲笑っていた魔物達が壁へ吹っ飛びました。

その後、魔物達はビクリとも動かなくなりました。

何。

何です。

一体何事です。

混乱する私の目の前には、金髪碧眼の精悍な顔つきをした青年が牢屋の前に立っていました。

彼が私に話しかけます。


「……神……!!」

「…………は?」


宗教家の方でしょうか。

余計に頭が混乱してきました。

私に話しかけているのでしょうか。


「えぇっと──」

「オウフ!!」


私に話しかけているのか問いかけようとしたら、金髪の方が倒れてしまいました。

しかも大量の涙を流しています。

まさか、魔物達の攻撃で傷を負ってしまったのでは──。


「推しに……! 推しに話しかけられた……! めっちゃ嬉しい……!!」

「??????」


本当に大丈夫なのでしょうか。

オシとは私のことでしょうか。

しかし話しかけられた、ということはやはり私に対してあの言葉を言い放ったのは間違いないです。


「あ、あの。貴方は……?」

「は!? すみません! 今助けます!」

「た、助けるって……」


私が閉じ込められているこの牢屋は、特殊な魔法が使われています。

そんな簡単に抜け出すことなんてできません。


「ふん!」


しかしそんな扉は、彼の手によって簡単にこじ開けられてしまいました。

えっえっ?

あら?

まさかこの人、人間じゃないのでしょうか。


「さぁ! まずはこんなテンプレみたいな牢屋から抜け出しましょう!」

「て、てんぷ……?」


相変わらず彼の言葉が理解できません。


「じゃあ失礼して……」

「え──」


混乱している間もなく、金髪の方が私を急に抱き上げました。


「きゃあっ!? い、一体何を!?」

「掴まっててくださいねぇ!」


彼はそう言った直後、天井へ真っ直ぐ飛び上がりました。


「ぶ、ぶつかってしまいます!!」

「大丈夫!!」


彼はそう言いましたが、私はそれでも恐怖心か

ら目を瞑ってしまいます。

ゴリゴリゴリと、耳に優しくない音が近距離で聞こえます。

その音はしばらく続きました。

音が聞こえなくなってから、私は目を開きました。

瞬間、夕陽が私達を照らしているのを確認できました。

この陽射しは、何ヶ月ぶりなのでしょう。

思わず涙が溢れてしまいます。

ルルーク様はゆっくりと地上に降り立ち、私を降ろしてくれました。

久方ぶりの地面を、私は踏みしめました。

余韻に浸りたい気持ちが強いですが、それよりも彼のことです。

一体何者なのでしょう。


「あ、あの。助けていただきありがとうございます……貴方は一体……?」


私が問いかけると彼はニカっと素敵な笑顔を浮かべてから、答えました。


「俺はルルーク!! オタクです! 多分転生者です! 一応精霊です!」


思っている以上に情報量が多かったです。

えっえっえっ。

精霊?

転生者?

……オタクって何でしょう?

しかしまずは、私も自己紹介しなくては。


「あ、ありがとうございますルルーク様。私はセリス・ランディスです」

「えぇ存じ上げてますぅ! まさかマジで会えるとは──」


ルルーク様が続けて何かを言おうとしてましたが、急に止まってしまいました。


「ど、どうされました──ってきゃあ!? 頭が!?」


彼の頭が血塗れになっていました。

周囲が暗くなっていたせいか気づきませんでした……。

まさか、天井をその頭で貫いたというの!?


「か、回復魔法を!!」

「フフフ──」


大変です。

ルルーク様が目の前で倒れてしまいました。


「ル、ルルーク様!?」

「我が生涯に一片の……悔いなし」

「私が悔やみますっ!!」


私は回復魔法を彼に必死で唱えました。

この殿方は一体何者なのでしょう……。


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