とんでもない男に捕獲されました!
ヤバい詰んだ。
in高位貴族の子息たちが集まってる生徒会室。
眼前には悠然と紅茶を飲む我が国の王太子殿下とその婚約者である公爵令嬢。そして彼にお茶を出したのは宰相様のご子息。
王太子殿下の背後には騎士団長様の親戚と言われる方。
そんな方々と対面するように座る私は、田舎子爵の次女。後ろ盾は特にない。
「さて、少し話をしようか?フェアリー・ライバー令嬢。この場は非公式故、不敬罪は咎めないから好きに喋って構わないよ」
こんなやばい方々に呼ばれた理由は分かりきっている。
それもこれも全部あの男。
勘違いストーカー野郎のせいだあああああ!!
始まりは入学式であった。
田舎子爵である父は、出来たら政略結婚よりも自分で縁を結んで欲しいと言う思いで私を首都の学園へと送り出してくれた。
田舎者であったが、覚えられるだけ知識を詰め込み
覚えられるだけマナーを詰め込んだけれど
………私は都会の人混みという洗礼に負けて気分が悪くなってしまった。
香水や整髪料の香りも、集まれば害臭である。
それでもかろうじて上の学年にいる王太子殿下の祝辞中は頑張ったけれど
祝辞が終わってすぐ私はふらっと倒れ込んだ。
そんな私を咄嗟に抱きとめて、医務室に連れていってくれたのが……隣の列に並んでいた首都最大最悪の害虫、コールマン公爵子息だった。
「大丈夫かい?名前の通りか弱いんだね」
「お手を煩わせてしまい申し訳ありません…」
その時の私はとにかく親切な先輩に感謝し、同時に申し訳なさで萎縮していた。
そんな私を慰めるかのように私の背を心配気に撫で介抱するコールマン公爵子息。
だが思い出せばこの時から片鱗は見えていたのだ。よく思い出せばこの時から彼は私のことを名前呼びであった。
ここまでなら、まだ後輩に優しい先輩だった。
そう、ここまでなら良い思い出だった。
「やあ、フェアリー。体調は大丈夫かい?」
「…ご心配かけて申し訳ありません。もう大丈夫です」
なんでファーストネームで呼ぶの…?大して親しくも無いのに…?
そう思いつつも先輩である。そして最上位の貴族子息であるので無下には出来ない。
女子寮の入口で誰かを待っている様子から婚約者でも待ってるのかなと思い、会釈をして横を通り過ぎようとすると……当たり前の顔をして私の横に並んだ。
「昨日は心配したよ。でも今日はだいぶ顔色がいいね」
なんで、一緒に登校する感じになってるの……?
なんで、私の髪をひと房手に取って口付けるの…?
都会って怖い。そして、顔が良いから様になってるものの、勝手に髪に口付けるとか気持ち悪い。
完全に笑顔が引きつっていたがコールマン先輩は上機嫌で……一年のクラスまで送ってくれた。
「じゃあまたね、フェアリー」
「はい……先輩も勉強頑張ってください」
引きつった笑顔で、こんな無駄な時間を過ごすよりも勉強した方が良いんじゃないかと言ったつもりだったが、私の意図は完璧に伝わらずコールマン先輩は上機嫌で去っていった。
「ちょっと!フェアリー、貴方コールマン先輩とどういう関係なの!?」
「し、知らないよ!昨日体調崩した時にお世話になったけど、なんか今朝、女子寮の入口で待ってたんだよ」
取り残された私は、同じく田舎出の親友に事情聴取を受けたが私の方こそ今の現状を聞きたい。
お父様は縁を自分で掴んでおいでと言ったけれど
身分的にも性格的にもあの人は無理だ。生理的に受け付けない。
「えぇ……フェアリー、コールマン先輩は王女殿下と婚約を結んでいるのよ。厄介事になる前に縁を切った方がいいわ」
親友のその一言で、元々印象が悪めだったコールマン先輩への好感度は地に落ちた。
婚約者がいるのに、髪にキスとか無いわ。全力でないわ。
都会の遊び人って怖い。絶対関わらないようにしよ。
この時は、そう思ったのだけれど……
「やあ、今日はAランチかい?」
「…こんにちは。すみませんがそこは友達が座る予定なので」
「その友達って、僕だろ?」
ちげえよ。
「おはよう、僕のフェアリー」
「…私は先輩のフェアリーではございません」
「恥ずかしがらないで良いよ、君ならロイドって呼んでも良いよ」
「お断りします」
死んでも呼びません。
「フェアリー、今度の休みは一緒に街を回らないかい?」
「お言葉ですがそういうものは婚約者様と行かれるべきです」
「…ヴィヴィアンになにか言われたのか?気にしなくて良い。僕の心は君にあるのだから」
「いえ、要らないです。というか親しくもないのに名前で呼ばないでください」
「はは、恥ずかしがらなくていいよ」
「いえ、本当に無理なんです」
「話が、通じない……!」
「…同情するわフェアリー」
先輩だし高位貴族だしという気遣いは早々に捨て、かなり辛辣な塩対応をしているのに何故かあの人の頭の中で私は恥ずかしがり屋の恋人になってるらしい。何故だ、心底解せぬ。
「ライバー、今廊下の奥にコールマン先輩が見えたから逃げた方がいいぞ」
「ありがとうトレバー君感謝する!!」
コールマン先輩に唯一感謝するとすれば私が親友に日頃から愚痴ってるせいか、それとも本気で拒否対応を私のクラスでも行っているせいか、判別はつかないがクラスメイトの大半が私の味方になってくれたことだ。
フェアリーを逃がす会なるものが結束されていると聞いた時は真顔になったが、正直クラスメイトのみんなにはほぼ毎日助けられている。
そう、毎日私は襲撃を受けて
それを容赦なく撃退または逃亡をするうちに
学園内にはコールマンが子爵令嬢と熱愛という噂と
ライバー令嬢はコールマンを拒絶しているという相反する噂が出回るようになった。
そんなある日の事だった。
「フェアリー・ライバーは居るか?」
「はい、なんでしょうか」
「会長がお呼びだ。放課後、生徒会室に来るように」
生徒会長であり、王太子殿下であり、あのコールマンの婚約者の兄に呼び出されたのは。
そして話は冒頭に戻るということだ。
「さて、少し話をしようか?フェアリー・ライバー令嬢。この場は非公式故、不敬罪は咎めないから好きに喋って構わないよ」
「…お心遣いありがとうございます。マナーなどまだ未熟なものがありますのでそう仰っていただくと心強いです」
王太子殿下、ニコニコ笑ってらっしゃるけど目は笑ってません。
その横のご令嬢もとても綺麗だけれど表情は無に近いです。
おのれコールマン。
胃がキリキリと痛む中、誤魔化すように紅茶に口をつける。
「さて、実は君が悪評をばらまいているという話を聞いてね?なにか心当たりはあるかね」
にこやかな笑顔と共にそう言われすっと緊張が解けて思考がクリアになるのを感じた。
悪評。悪評か。
コールマン先輩の行動を悪と評価した覚えは大いにある。
「私は正当な評価をしたと思っておりますが」
「あら、そうかしら。いくら学園内と言えど、階級は存在しますわ。先輩であり高位貴族でいらっしゃる方を悪し様に仰るのはどうかと思いましてよ」
ご令嬢にそう言われ
毎日、毎日、本当に毎日
朝も昼も夜も気が休まらない日々を過ごしていた私は
プッツンと切れた。
そうか、あれが悪くないというのか。
悪くないと言うんだな?
言うんだな?
確か王太子殿下はカイ・スチュアート殿下で
公爵令嬢はイザベラ・リーヌ様と仰ったはずだ。
すっと立ち上がった私を全員が警戒する中、私はリーヌ嬢の座るソファの横に跪く。
「そうかもしれませんね。わたくしのイザベラの仰る通りかもしれませんわ」
「…貴女に名を呼ばせる許可を出した覚えはありませんわよ」
「あら、恥ずかしがらなくてもいいのですわ。イザベラの気持ちはわかっていますわ」
吐き気を感じながらも手を伸ばし、リーヌ嬢の髪をひと房取りそこに口付けると
「やめてくださいまし!」
リーヌ嬢が悲鳴混ざりの声を上げて髪を振り払ってから王太子殿下に縋りよった。
リーヌ嬢は脅え、王太子殿下やその他の方々も無表情でこちらを見ている。
そんな一同を一瞥してから、また対面のソファに戻りまずはお茶を飲んで心を落ち着ける。
「貴女、なんなんですの」
「どうでしたか?今の行動は良い評価を出せるような行動でしたでしょうか?」
そこまで言うと王太子殿下は頭を抱え込んでため息を漏らし、リーヌ嬢はハッとしてから気まずそうに顔を顰めた。
「とんでもない御無礼、失礼いたしました。けれどリーヌ嬢も王太子殿下も私と似た感性をお持ちのようで安心させて頂きました。拙い私の淑女教育の中でもこれらのことは身分差を考慮しても不味いと思いまして、日々注意をしておりますがコールマン先輩は聞き入れてくださら無いのです。責められるべきは紳士失格な行動を取るコールマン先輩の方では?」
「…そうだな。ちなみに念の為に確認をしておくがライバー嬢はそれらの行動を容認してはいないのだな?」
「恥ずかしながら私は田舎の出でして、初めはこれが都会の紳士なのかと思いましたが…そうではないと気づいてからは本人に、人前でも諌めさせていただいています。最も訳の分からない言い分で聞き入れては貰えませんが」
私含め全員が険しい表情を浮かべる。
それはそうだろう、妹の婚約者が他の女に堂々とうつつを抜かしてるなど私なら相手の男をぶん殴る。拳で、腰をしっかり入れてぶん殴る。
「…謝罪致しますわ。紳士に有るまじき行為を取る相手に対して貴女は素晴らしい対応を取っていますわ。試すようなことを言って申し訳ありません」
「あ、いえ、私の方こそ突然再現をしてごめんなさい」
脳内でコールマン先輩をボコボコにしていると、本当にすまなそうにリーヌ嬢に謝罪をされて慌てて顔の前で手を振る。
「いえ、わたくしは貴女を噂で決めつけていましたわ」
「……私はロイドに聞いていたんだが……ロイドの語る君と現実の君は随分違うようだな」
「不思議ですよね。結構しっかり言ってるんですけど先輩の脳内彼女はなかなか壊れないんですよ…」
今度は私と殿下が遠い目になると、急に目の前のテーブルに紙束が置かれた。
驚いて置いた人を見ると部屋の中にはいつの間にかニッコリと笑いすぎて……目が糸のように細い青年がいた。
彼は目が見えているのだろうか。少なくとも私には彼の目の色が見えないけれど。
「はぁい。これがロイド・コールマンとフェアリー・ライバーの今日の会話記録だよぉ。僕も実際みたけどぉ、周りの人がライバー嬢に同情するくらい話が通じてなかったねぇ」
彼が出した書類は全員に回し読みされて……全員が頭を抱え込んだ。
「これはあまりにも変だわ」
「……これは見過ごせないな」
そして殿下が紙束を糸目青年に渡すと青年は奥の部屋にそれを持って行った。
なるほどいつの間にかあの部屋から来てたのか。全然気づかなかった。
「……さて、ライバー嬢。現状の把握ができたところで君に頼みがあるんだが」
なんだろう。いい予感が全くしないんだけれども。ゴクリと唾を飲み込んで覚悟を決めると宰相子息がお茶のおかわりを入れてくれた。
このおかわりもゆっくりしていってねという意図にしか見えない。
「これはここだけの話にしてもらうがロイドは妹の婚約者に相応しくない。この縁談は妹の気持ちがメインで進められたが……このままであれば白紙撤回、またはロイドを浮気する気も起きないほど……叩き潰さなくてはいけない」
叩き潰さなくてはいけないと言った瞬間、殿下が纏う空気に飲まれるかと思った。
まるで私が潰されるかと錯覚するほどの……これは、怒気だ。
「君の気持ちはわかった。君は完全に巻き込まれただけですまないが……ロイドが関わっている以上、このままでは君も縁談などが難しくなるだろう」
それについては、私も同意する。
コールマン先輩は私を所有物扱いするのだから、真っ当な男性ならば私を避けるだろう。
何故なら彼は、この国で上から数えた方が早いほど高い地位にいるのだから。
「そこで、だ。ロイドから浮気などの確たる証拠を集めるのを協力してくれれば君の身の安全と、良縁をこちらで探そう。また、謝礼金も出す。どうだ?」
殿下のお言葉を吟味する。
要は妹の婚約者のあら捜しを手伝えということだ。この場合おそらく私はコールマン先輩を暴走するように誘導させるのだろう。
腐っても相手は高位貴族だ。
相手がいつ私をさらって閨に連れ込むか分からない。そう考えると身の安全の保証はありがたいが……
「ふたつよろしいでしょうか」
「なんだ?」
「私は恋愛結婚を希望しており、両親もそれを推奨してくれています。ですので良縁の紹介という項目の変更を希望致します」
真剣に言ったのだけれど、何故か殿下はぶはっと笑いだした。何故だ、解せぬ。
「なるほど?ちなみに変更内容は決まっているのか?」
「はい。婚期が遅れることを想定し、私にあった職を斡旋して頂きたいです。結婚をしない以上自分の食い扶持は自分で稼がねばなりませんから」
「お…おう。そうか、それくらいなら何とかしよう。ちなみに二つ目は?」
「二つ目の方はコールマン先輩に何かをしかけるにしても私は企みごとなどは苦手です。ですのでなるべく正確な指示を頂きたいです」
「なるほど……」
殿下はしばらく考え込んでからふむと声を出した。どうやら考えが纏まったようだ。
「まず君の行動は、証拠集めも兼ねているからこちらで動かそうと思っている。その指示役と護衛も兼ねて……とりあえず婚約者を用意しようと思ったんだが、仮の婚約でも嫌かな?」
「仮と言うと、白紙撤回は可能なんですよね?」
「ああ、口約束のようなものだ。だが、口約束でもあれば……少なくとも婚約済みの男への牽制には使えるはずだ。本当は私の部下から君と気の合いそうなものを婚約者にしようとしていたんだがな」
殿下の話しぶりからしてこの案は今決まったことではないのだろう。
当然だ、王女殿下の婚約者のことを軽々しく決めるようならば王として頂くには不安が残る。
殿下は、王太子として信頼が出来そうな方だ。
この方になら利用されてもいい。
と、言うかこの方に利用してもらわねば、私の将来はコールマン先輩の愛人まっしぐらだろう。
そんなのは、ゴメンだ。
「でしたら構いません。私としても現状、大変困っているので助けていただけるだけありがたいです」
「そうか。ならば婚約者候補を直ぐに選定するとしよう」
「ねえねえ、僕はどぅ〜?」
「おい、トーマス」
殿下と見つめあって、頷きあっていると先程の糸目の青年がいつの間にか戻ってきて自分を指さして嬉しそうに笑っていた。
でも、目が見えないので本当に笑っているかどうかは判別がつかない。
「初めましてぇ、僕はトーマス・レインだよぉ。一応伯爵子息でぇ、肩書きとは別に僕は公的書記の仕事もやってるんだぁ」
「…公的書記、ですか?」
「うん。具体的に言うとぉ、僕が見聞きした記録は真実しか書けないけどぉ、それを真実として証拠に使えるんだぁ。仮の婚約者は僕でどぉ?」
真実として記録される。
つまり、私がコールマン先輩を嫌がってることを公的に記録に残せる。それはとんでもなく魅力的なお誘いだった。
「是非ともお願いします!」
「わぁい、よろしくねぇフィリー。僕のことはトーマスって呼んでねえ」
「…フィリーって、私のことですか?」
「うん。コールマン子息と同じ呼び方だとなんか嫌じゃない〜?」
それは、確かに嫌かも。
私は糸目青年改めて、トーマスの提案に頷き「よろしくぅ」と差し出された手をしっかりと握り返した。
トーマスの後ろ、ちょうど彼で見えないように隠された先にいる王太子殿下が
今日一番と言っていいほど頭を抱え込んでいるのは、私には見ることは出来なかった。
『良いか、とりあえずまずは仲睦まじい様子を見せて二人の婚約話が進んでいると周知させるんだ。そしてライバー嬢はロイドに対しては何か言いたい表情で、だが何も言うな。言葉を使わずにロイドに婚約は不本意で結ばれると誤解させるんだ』
「おはよぉ」
「おはようございます」
まずは朝。コールマン先輩が来るよりも早い時間に寮を出てトーマスと人目につきやすいところで待ち合わせをして一緒に登校することにした。
だが、私は待ち合わせ場所に現れたトーマスを見て驚愕した。
目が、完全に開いてない。
茶色の髪もボサボサで寝癖全開。そして眠くて目が開いてないのかフラフラと危なっかしい動きをする彼の袖を掴んでベンチの方へと引っ張る。
「危ないですよ。それからちょっとここに座ってください」
「んー?」
近くのベンチにトーマスを座らせると、私はポケットから櫛を取りだした。
そしてふわふわの猫っ毛な彼の髪を何度もすいて整えていく。
「早起きは苦手でしたか?」
「うん。起きれる自信が無かったからぁ、寝なかったんだぁ」
「……馬鹿ですか?寝坊したなら気にしないで置いていくので次からはちゃんと寝てくださいね」
「え?そこは来るまで待っててくれるんじゃないのぉ?」
「待ちませんよ。私まで遅刻するじゃないですか」
「…そっかぁ、そっかぁー」
いくら仮の婚約者とはいえ、巻き込まれて遅刻する気は無い。
そうキッパリ言っただけなのに何故かトーマスは嬉しそうに笑っていた。
寝癖が収まってくると、トーマスも目が覚めてきたのか行こうと言って立ち上がって手を指し出してきた。
「手を握って歩くのは嫌かなぁ?」
コールマン先輩と違って、ちゃんと聞いてくれるし私の反応を見てくれる。
比較対象が好感度マイナス直下のせいでトーマスへの採点が緩くなってしまっている気がしたが
「大丈夫ですよ」
まあ仮とはいえ婚約者だしそれくらい良いかと思って彼の手を取った。
「じゃあまたねフィリー。お昼は一緒に食べようねぇ」
「はい、また後で。授業中寝たりしてはいけませんよ」
「…なんで知ってるのぉ?」
関係を他者に見せつけるために手を繋いだまま庭園をぐるっと一周してから教室に戻ると、いつもと同じ時間に教室に着いた。
別のクラスだった首を傾げるトーマスを見送ってから教室に入るとーーー
「ちょっとフェアリー!あの人はなんなの!!」
即座に親友に捕まった。
親友よ、期待通りだが仕事が早いよ。
「彼は…その、婚約の話が進んでる人なの」
そう言った瞬間親友は嬉しそうに顔を綻ばせて、私の両手を握って「おめでとう!あの男から逃げられるのね!」と言って喜んでくれた。
さらにクラス中からも「おめでとう」と言われて拍手までされると内心少し焦ってくる。
ぎ、偽装婚約なんて絶対にバレちゃいけない。
ありがとうと嬉しそうにはにかむ私の内心は幸い誰にも気づかれることは無かった。
「フィリー、ご飯食べに行こ〜」
お昼休みのチャイムが鳴ると共に彼は私のクラスの扉を開いた。
先生はまだ最後の挨拶の途中だったので驚いて固まり、一瞬場の空気がシーンと固まるがコホンと咳払いをしてから「もう時間ですね。皆さん宿題を忘れないように」と言って苦笑いで授業を終えてくれた。
次に先生に会った時は謝ろう。
そう思いつつ、ニヤニヤ笑うクラスメイト達の間を抜けてトーマスの元へ行く。
「トーマス、随分授業が終わるのが早かったんですね」
「あーうん。そんな感じぃ」
「…貴方まさか途中で抜けてなんかいませんよね?」
「違うよぉ!先に迎えに行かないとってぇ、頑張ったんだよぉ?」
そう言われると、私の護衛のために来てくれてるのだから申し訳ない。
だが、彼の手にはバスケットがある。これは昼食を食堂外で食べる生徒のために用意されるもので……少なくとも彼はチャイム前に食堂に寄ってから私のクラスに来たことになる。
となるとチャイムが鳴るよりだいぶ早い時間に授業が終わってないとおかしい。
だが、確かにコールマン先輩が来るより先に彼と合流できなくては面倒なことになる。
「フィリー?」
「ならば今度から待ち合わせに致しましょう。二学年の教室と反対の裏庭ならば、道中私が食堂も寄れますし問題無いで……って、そういえばトーマスは何学年ですか?」
「んー、でもフィリー一人じゃ今までコールマンから逃げられなかったんだからやっぱり迎えに行くよぉ」
「…それはまあ、そうですね…」
「うんうん。ちなみに僕の学年は内緒ぉ?早く気づいてねフィリー」
内緒だと…。
この学園は制服もないし学年別の目印など無いから情報戦でしかそういったものは入手できない。
トーマス・レインについてクラスメイトに聞いてみようと思うけど…ニコニコ笑う彼の眼はやはり見えず、そのせいでそこそこ整っているものの顔の印象は薄い。
髪も猫っ毛だが普通の茶色だし…
普通にギリギリかっこいい部類に入るトーマス。彼の印象は何事も薄かった。ああでも、間の抜けたのんびりした喋り方は特徴的かも。
あと王太子殿下の側近の一人みたいだしすぐわかるよね。
「わかりましたわ。友達にも聞いてみます」
「あ、でも二年じゃないからぁ、二年の学園には近づかないでねえ」
それはコールマン対策なのだろう。
だが二年じゃないとなると……明らかに新入生じゃなさそうな彼の様子から学年は絞れたようなものだ。
「わかりました」
どこか可愛い彼にクスリと笑って着いていく。
簡単な調べ物だと思った。
そう、その時は思ったのだ。
そして三日後、私は恐るべき事実に直面した。
「トーマスのクラスが分からない…」
「あんたの婚約者何者なのよ…」
親友と共に三年について調べた。
途中から面白がったクラスメイトも数人混ざってトーマスの捜索が行われたけれど、彼は見つかったけれど見つからなかった。
おかしいわよね?
トーマスの存在は各クラスで認識はされているようだが、クラスメイトでは無いらしい。
『糸目の…ああ、あいつかな。この前誰かにノート借りに来ていたぞ』
『ああ、寝癖が酷い彼よね。この前男子と話してるのを見たけど他のクラスよね?』
と言った情報が三学年全てのクラスで出てきたのだ。
何故だ、何故なんだ。
登下校と昼休みは一緒なので捜索できる時間は少なかったが…その分人数でカバー出来たはずだ。
「大変だライバー!」
「どうしたのトレバー君」
「今四組の友人のとこにノート借りに行ったついでに糸目のトーマスってやつ知ってるかって聞いたんだが……そいつ、四組でも目撃情報があったぞ。ちなみにクラスは違うみたいだ」
「なんですと…!」
一年でも目撃情報があっただと…!
三年生じゃなかったの…!?
「三年じゃないのか?」
「…一年も調べてみるか」
「…俺も二年の兄貴に聞いてみるかな。念の為に…」
好奇心で広がる捜査網と、ノリで増える捜査員。
送り迎えなどで毎日トーマスを見ている私たちであったが
十日たってもトーマスのクラスどころか学年も判明することはなかった。
「フィリー、ご飯行こー」
そんな私たちの心なんて知らず、トーマスは今日もチャイムと共にバスケットを持って昼休みに現れる。
その時私たちの心は完全に『お前何年なんだよ』で統一されていた。
謎は謎のままだったけれど
私はすっかりコールマン先輩を忘れて楽しい日々を過ごしていた。おそらくトーマスもそれを狙って各クラスでわざと目撃情報を残していたんだろう。
気づけばコールマン先輩に会わないまま半月が経過し、そこまで来てようやくコールマン先輩は手段を変えたようだった。
その日は中庭のベンチでご飯を食べていた。
「フィリーは真面目で丁寧なのに、庶民っぽくって近づきやすい感じでぇ好感度が高いよね〜」
「…そうなの?ただのマナー知らずだと思うけど」
「そうだねぇ、無知なのもあると思う。でもちゃんと締めるところは締めてるしぃ、失礼って感じは無いよぉ」
「学校で習った教養の授業の通りにやってるんだけど、やっぱり都会の方々とは違うものね」
「学校は商家の子達もいるから、必要最低限だからねぇ。フィリーが望むなら個別教師を手配するよぉ?」
「ううん、いらないわ。私はちょっと裕福なくらいの平民の男の人辺りを狙うもの。貴族夫人なんて、お金があっても面倒臭いからなりたくないわ」
「えー。やってみたら案外行けるかもよぉ」
「無理無理。私はドレスとかを着るよりも、仕事しつつ、家で旦那様のために料理を作る方が性に合うもの」
仮の婚約者とは言え、警戒心を抱かせないトーマスとはすっかり仲良くなり雑談を交わしながらサンドイッチを食べていると不意に影がさした。
なんだろうと思い上を見上げると…そこには傷ついた!といった表情を出すコールマン先輩が立っていた。
「……これはどういうことだフェアリー。俺というものが居ながら…」
ひさしぶりの先輩に頭が働かずに固まっていると隣に座っていたトーマスがサッと私を庇うように私の前に手を差し出した。
「…誰だ、お前は」
「僕はフィリーの婚約者のトーマス・レインだよぉ。フィリーが怯えるようなことはやめてくれますかぁ?」
えっと、婚約は不服だけど何も言えないふり!
ちらっとコールマン先輩を見て目を合わせてからわざとらしく逸らす。
「……婚約、だと。俺のフェアリー、それは本当か」
「……はい」
私とコールマン先輩の間に気まずい空気が流れるが、それをトーマスがズバッと切って割って入る。
「そういうわけでぇ、コールマン先輩はもうフィリーに近づかないで下さいねぇ。僕は浮気とか絶対に許さないんでぇ」
言葉と共にふわっと抱きしめられる
こ、こここんな異性を身近に感じることされたことないからかっと顔に血が上ってオロオロしていると何故かコールマン先輩は何かを決意したような表情を浮かべた。
「必ず、助け出す。それまで我慢しててくれフェアリー」
そして踵を返して立ち去って行った。
「すっごい何かやる気満々だねぇ。フィリーナイス名演技だよぉ、でもそんな泣きそうになるほど僕に抱きしめられるの嫌ぁ?」
「…とりあえず、離して。こういうの、慣れてないの」
もう終わったでしょ。そう思ってトーマスの体を押すも、何故かトーマスは嬉しそうに笑ってさらに強く抱きしめてきた。
「照れてるフィリー、かわい〜!」
「離せって言ってるでしょ!?」
それからコールマン先輩はちょくちょく襲撃をしてくるようになった。
訳が分からないが「ヴィヴィアンの仕業だな」とか「意にそぐわぬ婚約など拒否して良いんだ」とか言ってきたが私はそれら全てを黙ってやりすごした。意にそぐわない求愛はきっちりと拒否したはずなんですけどねえ。
代わりにトーマスがコールマン先輩を煽って煽って、どんどん危ない言葉を引き出していた。
そしてある日、決定的な言葉が引き出されてしまった。
「ヴィヴィアンなんかどうでもいい!私が愛するのはフェアリーだ!!」
公的書記であるトーマスの前で
コールマン先輩は最低最悪な発言をした。
…婚約者である王女殿下の気持ちを思っても胸糞悪いし、目の前で破滅の階段を駆け上がっていく先輩の姿を見るのも胸糞悪い。
一方的で、話を聞いてくれないけれど
それでも人が破滅する姿を見て、嬉しいなんて思えない。
「でもぉ、フィリーの婚約者は僕だよぉ」
「それも今だけだ!良いか、直ぐにその婚約は破棄させてやるからな!!」
いつもは、黙って見ているだけだったけれど。
その日はトーマスの服を引っ張った。
トーマスはやっぱり目が見えないけれど驚いた表情でこっちを向いた。
…悩んだけれど、私はトーマスの糸目をしっかりと見た。
「もう、行こうトーマス」
これはトーマスの仕事の邪魔だとわかっていたけれど
もう見ていられなかったんだ。
コールマン先輩が破滅するのも、王女殿下が傷つくような発言を聞くのも。
ーーーーー応えられない気持ちを聞くのも。
「あの、失礼します」
「フェアリー!」
「ついてこないでください!」
トーマスの服を引っ張ってこの場から立ち去ろうとするとコールマン先輩が切なげな声で私を呼んだけれど
私は強い口調で彼を拒絶した。
お願いだからこれ以上酷い有様を見せないで。
お願いだからもう何も言わないで。
この日、私は明らかにコールマン先輩を庇った。
「……どういうつもりぃ?」
「もう良いでしょ。あれだけ記録すれば」
そして二人だけになると、案の定トーマスは今まで聞いた事の無い口調で私を責め立ててきた。
協力するって言ったのに、責めるのは当然だ。
でも、どうしても。
相手がコールマン先輩だったからじゃない。私は破滅する人を見ていられなかったんだ。
「ダメだよぉ、全然足りないよぉ。ああいうのはねぇ、徹底的に潰さないとダメなんだよぉ。甘さを見せたらそこを利用されるんだよぉ」
「でもあれ以上の事があれば……」
コールマン先輩の命すら危うくなるかも。
そう思った言葉は、口から出ることは無かった。
壁を背にする形で追い込まれ、苛立った様子のトーマスがドン!と私の頭の横の壁を殴ったのだ。
至近距離で、しかも怒った男の人を見る機会なんてないから恐怖ですくみ上がるけど……それでも、私の矜恃をかけて発言の撤回はしないし謝罪もしなかった。
「なぁに?まさかフィリー、コールマンに絆されたとか……ないよねぇ?」
「そんなわけじゃ、無いけど…」
ゆっくりと距離が縮まっていく。
キスをするんじゃないかというくらいまで
あとほんの少しでキスをするっていう距離で、トーマスと睨み合い……意見を述べるならば、これが最後だと察する。
「罪を犯せば償わないといけないと思う。でも、必要以上に罪を重ねさせるような真似は私は嫌いよ。コールマン先輩が好きとか嫌いじゃない。あれ以上やれば、あの時止めれば良かったって一生後悔するから私はとめただけよ」
「……そんなんじゃあ、貴族社会じゃ生きていけないよぉ」
「生きていくつもりもないわ」
「ムカつく………ーーーー」
“ムカつく………殺したい”
物騒な言葉と共に、私の唇はそのまま塞がれた。
もう、王太子殿下の協力は辞退しよう。
そう決意したのだけれど次の日も、その次の日も殿下は学校に来ていないようだった。
……そして同時に、トーマスもコールマン先輩もピタッと姿を消した。
そして数日後、コールマン先輩が婚約を白紙にされたこと。そして領地で再教育を受けていると言う噂を、私はクラスメイトから聞いた。
そうか、全部終わったのか。
明らかに令嬢のすることじゃないが、机に思いっきり突っ伏す。
ここ数日私のメンタルが最悪なのと、トーマスが現れないことを敏感に感じ取ったクラスメイトは静かに見守ってくれている。
トーマスと喋ったり、あっちこっち行ったりするの結構すきだったんだけどな。
仮の婚約だからいつか終わる関係とはわかっていたが……とても寂しかった。
こんな事なら最後に彼らを裏切るようなことを……しなければよかったとは、やはり思えなかった。
あれ以上は、もうやりすぎだ。私の中でその意思はやはり変えることは出来ない。
ああ、でも
「フィリー、ご飯食べに行こ〜」
と誘われる声をもう聞くことが出来ないのは……中々に辛く感じる。
「どうしたのぉ、寝てるのぉ?」
ああ、寂しすぎてトーマスの幻聴が聞こえ……ん?
やけにリアルな幻聴にばっと頭をあげると、そこにはいつものバスケット片手に糸目でのほほんと笑うトーマスが居た。
「……トーマス?」
「なあにぃ?」
「……なんでいるの?」
「酷くなぁい?」
「……ごめん」
なんで居るの。頭の中が混乱MAXな中、私はトーマスに手を引かれて教室を連れ出された。
最後に視界に入った親友やクラスメイトは何故か私を応援してくれていた。
うん、どういう状況?
トーマスに連れていかれたのは生徒会室だった。
けれど、今は誰も居ない。
「ご飯食べる〜?お話しする〜?」
「……色々と聞かせて貰ってもいいかな?」
混乱する中、ソファに座らされてサンドイッチを手渡され……うーんと、首を傾げるトーマスも向かいに座った。
「……後で殿下にも言われると思うけどぉ、コールマンの問題は解決したよぉ。お疲れ様、フィリー」
「……はあ、お疲れ様です?」
「本当に疲れたよぉ、全く。フィリーのせいだからねぇ」
「私?」
「うん」
疲れた、疲れたと言いながらトーマスは教えてくれた。
本当ならばあのままもっと大きなイベントの場でコールマン先輩を爆発させて断罪をさせる予定だったらしい。
だが、それだと私が一生後悔すると言うから急遽方針を変えたそうだ。
レイン家に来た嫌がらせや圧力の数々と、トーマスや彼の部下がとった莫大な公的記録をまとめにまとめ、収めてコールマン公爵家と王家は慰謝料と、コールマン先輩を二度と領地から出さないこと、再教育をすることで手打ちとしたそうだ。
「……」
その情報に、私はなんと言えばいいのか分からなかった。
トーマスは、王太子殿下方は私の心情を考慮してコールマン先輩の罪を和らげてくれたのだ。
ありがとうというのも違う
ごめんなさいというのも違う
複雑な感情が込み上げて、私は言葉を発せられなかった。
「……というわけでこの問題はもう終わったよぉ」
「……そっか」
「うん。という事でぇ、フィリーは僕に報酬をちょうだい?」
「…………は?」
そんな感動?もつかの間。
意味のわからないことを言い出したトーマスにまた頭が真っ白になる。
「だってフィリーは公的書記官である僕を、一ヶ月近く朝と昼と夜に傍においてぇ、使い続けたんだよぉ。これでも僕、上から数えた方が良い官僚だからぁ、たかーくつくよぉ」
「……いや、え?だってトーマスは殿下が付けてくれたんじゃないの?」
「違うよぉ。殿下は僕を紹介なんてしてないよぉ。『仮の婚約者は僕でどぉ?』って提案したらフィリーは『是非お願いします』って言ったんだよぉ。殿下は関わってないよぉ」
そう言って差し出されたのはあの日の会話記録だった。
内容を見ると確かに……殿下は仮の婚約者候補を選定しよう、と言った後にトーマスが名乗りをあげたように見えるが……勝手に私と契約をしたようにも見える。
見える。見えてしまう。
「……貴族怖い」
「ふふふ、言葉には気をつけてねフィリー。とりあえず僕のお給料は高いからぁ、身体で払ってねフィリー」
「身体で!?」
そう言ってトーマスが差し出してきたのは……婚約届けと婚姻届だった。
えー……っと?
「ごめんねぇフィリー。貴族の奥様になっちゃうのは我慢してぇ。でも殿下がフィリーも雇ってくれるって言うからぁ、僕もフォローするからこれからずーっと一緒に頑張ろう?」
これは……プロポーズ、なのだろうか。
いや婚姻届があるしプロポーズなんだよな。
プロポーズ……トーマスと……うん、うん。
手で頭を抑えて、早く書いてぇと署名を急かすトーマスを待たせながら考えて……うん。
「……私からもひとつ条件を出したいんだけど」
「……ぇー…」
「そうね、毎週一回は『愛してる』って言って欲しいわ。私恋愛結婚をする予定だからこの条件は外せないし、愛の言葉の無いプロポーズなんて受けられないわ」
ふっと笑ってそういうと
トーマスはとても驚いた。驚きすぎて、その時初めて私はトーマスの目の色を見た。
トーマスの目は緑色なのね。
そう思いながら、私は愛の言葉を囁くトーマスのプロポーズににっこりと笑って頷いた。
おまけ
隣室から出てくる王太子殿下達。
「お前な、こんなとこでプロポーズするなよ。出ていきにくいだろ」
「ごめーん。でも僕もいい歳だからさあ、焦っちゃって」
「……いい歳…?」
「ライバー嬢、本当にこいつでいいのか?童顔だから分かりにくいが十歳も上だぞ」
「十歳!?トーマス、26歳なの!?」
「うん、そうだよぉ。今は殿下の侍従としてここに来てるよォ」
「その割にそばに全く居ないがな」
「でもレイン様に嫁入りするのであれば、マナー教育もきちんとしないといけませんわね。社交をあまりしない家門とはいえ侯爵夫人になるのですから」
「侯爵!?はい、なんで!?」
「僕の父さんは僕に爵位を譲ったからぁ、今は伯爵なんだぁ。だから僕は伯爵子息でぇ、現侯爵なんだぁ」
「もうだめ、情報量が多すぎて追いつかない……」
「だいじょうぶぅ?よしよしぃ」
「……念の為に聞いておくが職業は言ったよな?お前、ライバー嬢を同じ部署に欲しいって熱望してるんだからそれくらいは言ったよな?」
「聞いてないですけど!?学生だと思ってましたけど!?」
「僕の職業は、公的書記官だよぉ」
「またの名を影、または密偵だ。ライバー嬢には密偵たちが集めた情報をまとめてもらう予定だが……」
「この結婚、なかったことにしてください」
「だめぇ!?もう部下に教会に提出してもらったもん!」
「もんじゃないでしょ、もんじゃ!?トーマス貴方、言ったら振られると思って秘密にしてたわね!?」
「うん!」
「うん!じゃないわよ、このバカ!!」
久しぶりに乙女ゲーテンプレート系をかけて満足しました(*>∀<)ノ♪
この夫婦は将来はこんな感じだと思います。
「夕飯はビーフシチューにするつもりよ。食べたかったら早く帰ってきてね」
「……どうしたんだ突然」
「ああ、すみません殿下。影の報告書に伝言を書いてもらった方が旦那様には早く伝わるので。それで、隣国の情報が欲しいんでしたっけ?」
「あ、ああ……すっかり情報管理部に馴染んだな…」
「逃がして貰えないなら、開き直った方が楽ですもの」
「……そ、そうか…」