#7 準備
「う、うおぉ。凄いな」
「…今生き残れてんのはこの《根性》っていうスキルのおかげだろうな」
《根性》に感謝だ。
まだめっちゃ痛いけど。
「でも、問題なのはそっちではないな」
そう、本命はこの《刻印》と《慈悲なき正義の執行者》だ。
「まずはこのスキルから。これは明らかに職業関連だな。」
《刻印》は自分が片手で持つことが出来る生き物以外のものに紋章を刻むと書いてある。
「片手で持てるもの、片手で持てるものっと」
周りを見回す。
そこら辺に転がってた小石を拾う。
「これなんかがいいか」
「…よし。《刻印》『炎』っ!」
体から何かが抜けていくような感じがして、小石の表面に金床のマークが浮かび上がってきた。
「えーっと。で、次はー。『発動』!」
ぼわっ。
小石からちょっとした火があがる。
「うわっ!熱っ!」
「…でも、思ったより弱いな。MPはどうなってるんだ?」
ステータスを開く。
雨宮陽 15歳
職業:【紋章師】
レベル1
HP 1/32
MP 24/25
攻撃力 11
防御力 30
敏捷 21
「1しか減ってないな。じゃあMPをもっと込めたらどうなるんだ?」
今度はMPを4くらい込める気持ちで。
「《刻印》『炎』」
「『発動』」
ごうっ。
今度は少し火柱が立った。
「ちょっとでも結構変わるもんだな。ていうか4でこれなら20はとんでもないんじゃないか?」
取り敢えずこのスキルでの攻撃の目処はたった。
残りのMP20を込めて。
「《刻印》『炎』」
ちょっとくらっときた。
これは所謂魔力切れだろうか。
それはいいとして、体を引きずりながらブラックワームの近くにMP20の炎の紋章を付けた小石を置いておく。これでいつでも発動できる。
次は、《慈悲なき正義の執行者》か。
これは色々とツッコミどころがある。
まず罪の重さとはなんぞや。
説明には理に背く行為ほど重いとか書いてあるが。
理に背く行為?
過去を変えるとかそういう系の?
何が基準かくらい書いとけよ!
まあいいや…。次。
なんで相手にかかる重力が10倍になって、ついでに首を狙うと10倍になるんだ?
クリティカルヒットみたいなことだろうか。
そして重力は狙いやすくするためか?
分からん。
でも、現状を鑑みるとHP1でMP0だし、《根性》はもう使えないのでこのスキルは確実に使うこととなる。
懸念点は相手の罪の重さとレベルが分からないこと。
まあ、あいつの攻撃はとんでもない強さだったので多分レベルは高いだろう。
身をもって体験したから分かる。
最悪なのはレベルよりも罪の重さのほうが大きかったときだ。
そうなるとこのスキルは全く使えなくなる。
死は確実だ。
…でも、今の手札ではどうすることもできないので後は祈ろう。
作戦はこうだ。
戻ったらMP20の『炎』を発動して、《慈悲なき正義の執行者》をすぐ発動する。
そして、首を狙う。
…ブラックワームに首ってあるのか?
まあ、準備は出来た。2ラウンド目だ!
「準備は出来たぞ!戻してくれ!」
『貴方の命運を祈っています…』
そして時は動き出す。
次はブラックワーム戦(職業あり)です。