97.嗤う猫
「妖精界にはどれくらいならいれそうなのですか?」
「そーだにゃあ・・・上位の妖精にはとっくにバレてるだろうから、良くて二、三ヶ月ってとこかにゃ」
「え!?バレてるのですか?」
ハーレイが慌てるようにノアを抱き上げて顔を覗き込んだ。
「当たり前にゃ。妖精界に入った時点でバレるにゃ。レイアも分かってた事だにゃ」
ハーレイの視線が、ノアとレイアの間で彷徨う。
するとノアが手を伸ばし、ハーレイの頭をポンポンと撫でた。
「レイアも元は古い上位妖精にゃ。バレてるのは昔レイアと友人だった妖精達。他の妖精に示しが付かないから関わりは絶ってるだけで、本当は心配してるんだにゃ。だからあいつらからレイアに害は及ぼさないにゃ。安心するがいいにゃ」
レイアがハーレイに微笑んだ。
「わかりました・・・あの、母上?」
「なにかしら?」
「母上は古くからの上位妖精なら、母上はお幾つなのですか?」
「ぶふぅ」
ノアがハーレイの疑問に吹き出し、レイアがそんなノアを睨み付ける。
「あっ、ごめんなさい、母上!」
慌てるハーレイの腕の中ではノアが笑いを堪えてプルプルしている。
「いえ、いいの、いいのよ・・・気にしてないわ・・・ってノア、笑いすぎじゃないかしら?」
「だって・・・ぶふふっ」
「そのお綺麗な尻尾をちょん切るわよ?」
「母上!駄目です!ノア様の尻尾は駄目です!」
「あー、おかしい。妖精の話はしたのにレイアがいつ産まれたのかは教えてないのかよ?」
ノアが笑いすぎて猫語がとっぱらわれている。
「私の事を笑ってるけど、ノアの方が年上じゃないの」
「俺は別に自分の年齢は気にしてないからな。ハーレイ、俺はレイアより・・・1500歳ほど上ってとこだ」
「せっせんごひゃく・・・?」
「古の時代産まれなんてそんなもんだぞ、あ、そんなもんだにゃ」
今更気づいて猫語にしても遅いと思うが、ハーレイは驚きの方が大きいのか、気付いていない。
「とりあえず、少なくともあと二ヶ月はここに居れるから、その後に住む場所はこれから探すつもりよ」
無理矢理年齢の話を逸らすレイアに、ハーレイが慌てて話を合わせる。
「わ、わかりました。もし場所の選定に必要なら密偵を動かすので言ってくださいね」
「ええ、ありがとう。あ、そうだわ。7日に一度は魔力の質を変えるから、とりあえず今の私達の魔力の粒子を渡しておくわね。妖精界に居るうちは必要ないとは思うけれど、念の為」
レイアは小瓶を三つ生み出すと、その中にキラキラと光る粒子が現れた。
「ありがとうございます」
「ハーレイは念話は覚えてにゃいのか」
「念話は教えては貰いましたが使ったことは無いです。母上が、念話は盗聴される場合があるからと」
「ほう、きちんと考えてたんだにゃ。ふむ・・・ハーレイ、今度来た時にいいモノあげるにゃ」
「いいもの?ノア様のミニチュアとかですか!?」
「なんでそんなもの欲しがるのかわからにゃいにゃ・・・もっといいモノにゃ」
「はい、楽しみにしてます!」
「次はいつにしましょう・・・あまり頻繁にハーレイが眠りこけるのは無理だし、そうなると夜よねぇ」
ハーレイがレイアの空間にいる間、現実のハーレイは結界の中で眠っている状態。
「今日はあまり進展はなさそうなので、とりあえず明日の夜はどうでしょう?」
「そうね、そうしましょう。もしその前に何かあればまた呼び掛けてちょうだい」
「わかりました!では母上、ノア様、名残惜しいですが今日はこれで失礼します」
「ん。またにゃ」
ノアがハーレイの膝から降りると、現実へと戻った。
大雑把ですが、古の時代の始まりは今から7000年程前で、古の時代と呼ばれた時代は5000年程続きました。
ノアは今4500歳くらいで、レイアは3000歳くらいです。
(これには裏設定がありますが、今の時点ではノアは4500歳ということにしてあります)
人族が急激に増えだしたのはここ1500年程の期間なので、妖精とかから見たら人族の歴史など一瞬です。
レイアが肉体を手に入れてからの年月は妖精とか人外からするとあっという間の年月なので、そんな短期間の事を細かくは覚えていないのが人外特有の感覚と思っていただければ。




