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番の瞳  作者: 言葉
第二章:レイアの過去
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96.厄介な皇帝


ハーレイに思う存分褒め讃えられたノアは、いつのまにやらハーレイの膝の上に移動していた。

そのノアの背中を撫でくりまわすハーレイは感無量というような顔をしている。


「それでハーレイ・・・陛下は・・・どうかしら」


レイアの声のトーンが少し下がった事に気付いたハーレイが、ノアを撫でていた手を止めた。


「フィルからの報告だと・・・フェルディナの追跡で追えなかった事に怒り狂っているようです。すぐにでも自身で捜索に行くと言い出しそうな状況です」


「は?あの脳筋皇帝が自ら探しに?」


膝の上から見上げるノアの声に、ハーレイが頷きながら弱々しく答えた。


「父上がこの世で一番大切なのは母上だからね」


ノアがレイアの方を見ると、レイアは表情を固くして俯いていた。


「厄介な男に惚れられたもんだにゃあ」


「普段は皇帝としても、帝国一の剣帝としても尊敬されているし、愛妻家の皇帝で慕われてるんだよ」


ハーレイが、父をフォローするかのようにノアに語る。


「でも皇帝なら、妻より国を優先するべきじゃないのかにゃ?攫われたとかならともかく、レイア自ら消えたのはバレてるんだろ?」


ノアの言葉に、ハーレイがはっとレイアを見た。


「そういえば・・・僕は母上から聞いていたから疑問に思ってなかったけど、母上達が攫われた可能性の話は出てなかった・・・なんででしょう?」


「離宮の周りの結界に綻びが無く、外からの侵入では無い事がわかったのよ。もし離宮の結界に綻びが出れば、すぐにでもフェルディナに伝わるようになっていたと思うわ。私が転移出来る事は、貴方と貴方に託した密偵達とイヴ、あとはジェーンにしか話していなかったのよ。陛下もフェルディナも知らないの。だから外からの侵入は無理でも、中からは転移で出れたのよ。今回でバレてしまったと思うけれどね」


「城に張ってある結界とは別のが離宮に?知りませんでした・・・でも父上ならやりそうですね」


「なんだか皇帝の顔を引っ掻きたくなってきたにゃ」


話を聞いていたノアが、突然物騒な事を言い出した。


「だって皇帝に会わなければ、レイアが妖精界から見捨てられる事もなかったし、寿命を気にする必要も無かったにゃ」


「母上が見捨てられた・・・?」


ハーレイはレイアに問いかけたが、答えはない。


「本来、妖精は人間と過度に関わってはいけないっていうルールがあるんだにゃ。破ったら追放されるにゃ。でもレイアは女王のお気に入りだったから、追放は免れたけど・・・ボク以外の妖精はレイアには近付きもしないにゃ。出入りが禁止されてないだけで、実質追放みたいなもんだにゃ」


「そんな・・・なら妖精界にいるのも安全ではないのですか?」


「もうしばらくは大丈夫にゃ。でもずっとは無理だにゃ。レイアだけならともかく、シェリルとイヴは人間の血が流れてるから見つかるとマズイにゃ」


ノアとハーレイの言葉を俯いて聞いていたレイアは、ゆっくりと顔を上げるとハーレイの手を取った。


「考えてあるから大丈夫よ。ハーレイ、確かに私は故郷の古くからの友人達を失った。けれど・・・私はあなた達を授かって幸せなの。それだけは覚えていて」


ハーレイは母の手を強く握り返すと、笑顔で「僕も母上の子で幸せです」と答えた。


セオドアは魔術よりは魔術を駆使した体術や剣術が得意です。フェルディナが老体に鞭打って動くために編み出した身体強化を幼い頃のセオドアに教えた結果、大人しく魔術を連発するよりも敵に突っ込んでいく脳筋ができあがりました。なので、ノアからすると普通の魔術師ではなく脳筋らしいです。


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