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番の瞳  作者: 言葉
第二章:レイアの過去
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94.宰相とハーレイ


フェルディナがなんとか皇妃様を探せないか方法を探すとの事で、セオドアと共にラングストンの執務室を出ていった。


「宰相、父上がすまない」


ハーレイがそう言って頭を下げるのを、普段真顔で落ち着き払っているラングストンが慌てて止めた。


「殿下、謝罪などおやめ下さい!」


「いや・・・今日の事もだけれど、これから父上は母上を探す事に躍起になると思うんだ。そうしたら宰相達に迷惑がかかると思う。だからそれも含めての謝罪だよ」


ハーレイの子供らしからぬ言葉に、ラングストンの目が点になった。

その後すぐに我に返って頭をふると、普段ニコリともしないラングストンが、優しげな笑顔を見せた。


「殿下、私の仕事は陛下と帝国を支える事と思っておりましたが、これからは殿下が引き継ぐ帝国をより良いものにする為に尽力したいと思います」


ラングストンの言葉に、今度はハーレイの目が点になる番だった。

ラングストンの言葉は、言い様によってはセオドアではなくハーレイを主と認めるようなものであり、そのハーレイはまだ立太子もしていない10歳の子供である。


「ありがとう、宰相・・・ラングストン。もし父上が母上の事で暴走したら・・・多分するだろうな。今後は僕に出来る仕事や、サインが必要な仕事は僕にまわしてくれていいから。父上にもその点はきっちり話しておくよ」


宰相とは言え、皇室の人間でなければ処理出来ない書類や手続きは多い。

もしセオドアが執務や公務そっちのけでレイア探しに走り回るような事になれば、否が応でもハーレイが代わりを務めなければならない事はラングストンにも分かる事で、断るという選択肢はなかった。


「わかりました。その際は心置き無く殿下に頼らせて頂きます」


ラングストンは爽やかな笑顔でそう答えた。


この日ハーレイは、帝国の宰相ラングストンという忠実な臣下を手に入れた。



-----------------------------



ハーレイがラングストンの部屋を後にして自室へ戻ると、ミランが紅茶とお菓子を持って部屋に来た。


「朝から何かと心休まる時間が無かったのではと思いまして、勝手ながら殿下のお好きなパイをお持ち致しました」


ミランには今朝、レイアとシェリルの事を簡単に話した。

一人城に取り残されたような形になってしまったハーレイを気遣ってくれたようだ。


「ありがとう、ミラン。心配かけたね。少し休んでから勉強しようかと思ってたけど・・・今日はゆっくりしようかなぁ」


正直、昨晩から気を揉んでいたのは確かで、優しい紅茶の香りと、林檎のパイの甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐった瞬間、ほっとしたのと同時に疲れを感じてしまった。


「そうなさってください。殿下は普段からお勉強や執務に追われ過ぎです。そもそもまだ10歳ですのに執務されるなんて・・・」


ミランの言葉にハーレイは苦笑いしかない。


「僕はまだ父上と違って魔物駆除には行けないからね。その代わり執務するのは当たり前だよ」


「ですが・・・陛下はきっと皇妃様と姫様を探しに行かれます。その間殿下は今以上にお忙しくなられるでしょう?ですので今日くらいは休んで下さいませ」


さすが城に仕える者たちは、セオドアの取りそうな行動は分かっている。


「じゃあこれを食べたら、溜まっている本でも読んでのんびりするよ。夕食まで下がってていいよ」


ミランは安心したような顔をすると、空になったカップに紅茶を注いでから下がって行った。


しばらく紅茶とパイを楽しみながら本を読んでいたハーレイの耳に、ヒルダの声が届いた。


「フィルからの急ぎの報告です」


「どうした?」


「フェルディナが姫様に追跡の魔術を施していたらしく、それを辿ってみたそうです。それでも姫様を辿る事は出来なかった様ですが、レイア様が姫様に魔術が施されている事を知らない可能性があるかと思われます」


「分かった、早めに母上に伝える。すぐに報告してくれてありがとうとフィルに伝えておいて」


「はっ」


母上との約束は夜だったが、急いだ方がいいと判断したハーレイは、ペンダントを握って呪文を唱えた。



今日もう一話書き上がればアップします。

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