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番の瞳  作者: 言葉
第二章:レイアの過去
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83.皇妃と皇女の消えた城①


翌朝、早めに起きて自室の窓から見える離宮の母の部屋を眺めていた。

すると朝の支度の為に母の部屋へと入室した侍女が、すぐに部屋から出てくる。

母の不在に慌てているのだろう。侍女はオロオロと部屋の入り口に立つ護衛になにやら大声で怒鳴りつけているようだ。

やがて護衛も慌てて部屋を確認し、また飛び出して来ると、城へとかけていった。


「出番かな」


ハーレイはそう呟くと、ベルを鳴らして侍従を呼んだ。


「殿下、おはようございます。もう起きておられたのですか」


部屋に入るなりそう挨拶をした侍従のアデルに、ハーレイは素知らぬ顔で尋ねた。


「おはよう。目が覚めてしまって外を眺めていたのだけど、母上の部屋の前でなにやら騒ぎが起きてるようだ。何があったのか聞いてきてくれる?」


もちろんアデルはまだ何も聞いていなかったのだろう、顔に驚きを浮かべ、すぐに確認します、と部屋を後にした。


侍女に朝食の用意を頼み、その間また母の部屋を見ていると、アデルが戻ってきた。


「どうだった?」


ハーレイに聞かれたアデルは、気まずそうな、しかし焦ったような顔で、オロオロと話し出した。


「ええと、その、ですね・・・、皇妃様と、皇女殿下のお姿が・・・消えてしまったようで・・・」


額に汗を垂らしながら、しりすぼみになる声でアデルが答えた。


「母上とシェリルが!?離宮のどこにもいないの?」


ハーレイは、さも今知りました、という態度でアデルに尋ねる。


「ええ・・・今離宮の隅々まで探しておりますが・・・護衛の話では入り口や窓からは出ていないとの事なので・・・」


「母上が自ら居なくなったか、外部の誰かが転移して来て連れ去ったか、って事か」


アデルはハーレイの言葉に弱々しく頷いた。


「父上には知らせない方がいいね」


「えっ?」


「だって父上は今、魔の森で戦闘中なんだよ?そんな時に最愛の母上が消えたなんて知らせたら、怪我をおうかもしれないじゃないか」


皇帝が皇妃を寵愛しているのは臣下だけでなく国民も知る所である。


「確かに、殿下の仰る通りです・・・その旨、宰相に伝えてまいります」


「うん。頼むよ。必要なら僕も話しにいくから」


アデルは頭をぺこっと下げると、慌てるように部屋を出ていった。


(これで少し時間が稼げるかな。出来れば今のうちに母上達には少しでも魔力の質を変えておいて欲しいけど・・・母上の事だからもうやってるかな)


ハーレイは念の為、レイアの魔力を探ってみたが、感知は出来なかった。


そこへ侍女が来て朝食が運び込まれた。

毎朝見るハーレイ専属の侍女のミランも、若干顔色が悪い。


「ミラン、大丈夫だよ」


ハーレイの言葉に、ミランがハッと顔を上げた。


「殿下・・・申し訳ありません、殿下の方がお辛いでしょうに、私がこんな顔をしていて・・・」


ハーレイは瞬時に防音の結界を貼ると、ミランに告げた。


「大丈夫。母上の行先は僕が知っているし、今回の事は6年前から決まっていたことだから」


ハーレイの予想外の言葉に、ミランがぱちぱちと目を瞬かせた。


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