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番の瞳  作者: 言葉
第二章:レイアの過去
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79.師匠と弟子①


「イヴ、お疲れ様にゃ。シェリルはどうにゃ?」


テーブルの上の二人のカップが空なのを見て、再び紅茶のお湯を沸かそうとキッチンへ向かいかけたイヴにノアが尋ねた。

しれっと最初の態度に戻っている。


「疲れていたようで着替えて直ぐに眠られました。少し様子を見ておりましたが大丈夫なようです」


イヴが薄く微笑んでそう言うと、今度こそキッチンへと入って行った。

それを見届けたノアがレイアに向き直ると、腕を組んで睨みあげてきた。


「レイア、今のうちに聞いておくがお前どうやって去年までの6年を伸ばした?普通なら、荊の祈り一度で四年が限界のはずだ。まさかなにか禁忌魔法を使ったりしてないだろうな?」


ノアがレイアに対してことさら厳しいのは、ノアがレイアの魔法の師匠であったからである。

ノアは傍目からみたらそれは可愛らしい羽の生えた黒猫だが、実際は古の時代の初期に産まれた、妖精界では知らない人は居ない程の偉大な妖精である。

人間の過去の記録にも乗っているらしいが、それも各国の王家や皇家の手で保存された貴重な書物であり、さらにその当時は人型だった為、今の姿で人前に出た所で気付く者はいない。

そしてノアは魔法の使用には厳しかった。

レイアが弟子として学んでいた時も、何度も『禁忌魔法や禁忌魔術は使ってはならない』と言い聞かせられた。


「禁忌魔法は使ってないわ。時を止めた空間の中で、定期的に自分の時間だけ戻していたの。それも限界が来たから・・・去年もう一度荊の祈りを使ったの」


ノアはレイアの話を聞いて、あぁ・・・なるほどな、と顎に手、というか肉球を当てて考える素振りをしている。どうやら禁忌魔法ではないと分かって怒りは消えたようだ。


「ふむ・・・よく思いついたな。流石俺の弟子」


また可愛いだけのドヤ顔でノアがふふん、と胸を張る。


「空間魔法は夢魔法と同じくらい、ノアからきっちり学びましたから」


レイアがノアをたてるように答えると、ノアはさらに満足そうな顔になる。


「で、去年もう一度魔法を使った後は時間を戻すのに無理は無いのか?」


「ええ、今の所はまだ大丈夫」


「そしたら前と同じであればあと五、六年はなんとか持つんだな?なら、今緊急でやるべき事は・・・」


「帝国に・・・セオドアとノイラートに見つからない事、ね」


レイアがノアの言葉を引き継ぐ。


「ああ、その通りだ。皇帝は魔術よりは脳筋寄りだが、ノイラートは厄介だ。でもここに長くもいれない。それはわかるな?」


レイアは力なく頷いた。

本来、人間を妖精界に招くにはきちんとした手順が要る。

たまに妖精が、人間の子供とどこかから拾ってきた子供を取り替えて連れてくること(妖精の取替え子と呼ばれている)はあるが、それは本来違法である。


「お前、女王に気に入られてたのに・・・何にも言わずに人間に嫁いだりしたから頼みになんて行けないだろ」


「ええ・・・もう私の事は忘れているとは思うけれど、とても頼みになんて行けないわ」


「なら、人間界に戻っても見つからない方法を探すしかないな。さしあたって、魔力の質を変えるのが先決か」


生まれ持った魔力と言うのは人それぞれ違う。見える人には魔力の色が見えたり、匂いなんかでも分かるらしい。

それが変えれるのならば、ノイラートの追っ手を躱せるかもしれない。


「どうやるの?」


「そうだな・・・精霊に魔力を交換してもらうか」


ノアがふにふにした猫の口の口角をニャッと上げた。


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