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番の瞳  作者: 言葉
第二章:レイアの過去
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68.調査②


レイアの視界に見えるフェルディナは、どうやら少し暗い書庫に居るようだ。


(あら、これ、ノイラートの秘術が見放題だわ)


レイアはそんな能天気な思考を脇に追いやると、フェルディナが机に並べている本のタイトルを見ていく。


(命、再生、血液、時間、魂・・・今見ているのは番に関する書?)


セオドアはやはりレイアの事をフェルディナに話したようだ。

しかし番に関する書がわからない。

あと、血液もだ。


(たしかに血液を媒体とする魔術は多い・・・そういえば忘れていたけれど『荊の祈り』は本人以外は番か血族相手にしか使えない。それ以外となるととんでもない魔力が必要になるはずよ。そう考えると他者に『荊の祈り』を使わせるのは不可能よね?私の血族と言えばハーレイとシェリルだけだもの。まさか私の番でも探そうというのかしら?)


暫く感覚共有で本を読んでいる状態だったが、突然フェルディナがそそくさと書庫を後にした。

そろそろ城に向かう時間なのだろう。


「イヴ、そちらはどう?」


右手で右目を覆ったままのイヴの方に視線を移す。


「今の所、黙々と執務をされておられますが・・・陛下が決済される書類は私が見てもいい書類ではない気が」


焦るイヴに「後で忘れちゃえばいいのよ」といい笑顔で返した。



しばらくしてフェルディナが城に着くと、予め聞いていたであろう従者に連れられて、陛下の執務室へと向かった。


従者がフェルディナの来訪を告げると、陛下は手元の書類を纏めて箱に入れ、フェルディナを迎えた。


二人は軽く挨拶を交わすと執務室のテーブルに向かい合って座った。

それまで部屋にいた執事がお茶の用意をして退室すると、セオドアが防音の魔術具を起動させる。

しかしレイアの精霊はすでに『中』なので問題はない。


『どうだ?』


『第二妃様の輿入れの際に魔力量を測りましたが、確かに人族としては膨大といえますじゃ。ですがそれでも足りませぬな』


フェルディナの言葉にセオドアがチッと舌打ちをする。

こんなに不機嫌を隠そうともしないセオドアを、レイアは見たことがなかった。


『ならば当初の予定通りすすめるしかあるまい』


『そう・・・ですな』


『早くて6歳と言っていたな?その間の対策は見つかったか?』


(6歳・・・?誰のこと?)


『あるにはあるのですが・・・ちと、陛下は気に入らぬかもしれませぬ』


『・・・なんだ』


『皇妃様の時間を止めるのですじゃ』


『時間を?その間、レイアは』


『ギリギリまで止めるのであればこれから五年間、眠ったままのような状態になりますじゃ』


『五年間、レイアの声も聞けず、笑顔も見れぬと・・・そんな事になったら私の気が狂ってしまう!だめだ、他の方法を探せ!』


『・・・かしこまりました』


そこで何かに思い至ったセオドアが、難しい顔で俯いたままのフェルディナの名を呼んだ。


『・・・フェルディナ、時を止めれるのならば早めることは出来ぬのか』


『リスクはありますが、出来ますじゃ』


『それで娘を6歳まで成長させればいいのでは無いか』


(今・・・彼は何て言った?『娘』って言った?)


『魔力量とその器というのは成長しながら徐々に増えていくものですじゃ。成人して魔力が安定した後ならまだしも、赤子から幼児までを魔術で無理やり成長させると魔力が暴走する確率が50%なのですじゃ。おすすめはしませぬ』


(どういう事?この二人はなんの話をしているの?)


『娘に荊の祈りを使わせる前に魔力の暴走で死ぬかもしれぬと言う事か。それでは本末転倒だな・・・』


セオドアの言葉に、ヒッ と、レイアの喉が鳴る。

聞き間違いであって欲しいと、イヴの顔をゆるゆると見上げると、ただでさえ色白のイヴの顔が真っ青になり、そこから表情が抜け落ちていた。


『第二妃様のお子の魔力増幅と合わせて、もう少し調べてみますじゃ』


『ああ、できるだけ早めに頼む。あと、帰る前に娘に魔術をかけていってくれ』


『前回から少ししか空いておりませぬが』


『別に害は無いのだろう?レイアがあまり娘と関わりを持つのを避けたいのだ。そうすれば娘が居なくなった時の悲しみが減る』


「イヴ!すぐにシェリルを連れてきて!」


フェルディナとセオドアの会話で娘に危険が迫ってるのを感じたレイアは、気づくとイヴにそう叫んでいた。

イヴは、「すぐに!」と言うと礼儀作法など忘れ、ドアを勢いよく開けるとシェリルの部屋に駆けていった。

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