66.愛という執着
奇跡的に本日2話投稿できましたー
「セオ、アリシア様の元にいかなくていいの?」
枕に肘をつき、機嫌良さげにレイアの長い若草色の髪を撫でているセオドアに、レイアが尋ねた。
「何故そんな事を聞く?」
撫でる手を止めて、セオドアが聞き返した。
「突然アリシア様の元に行かなくなったと聞いて、懐妊でもしたのではないかと思ったの」
「ああ、そうか。確かに今第二妃は懐妊しているが、別に会いに行く必要はないだろう」
まるでなんでもない様に答えたセオドアの目を見て、彼が本気で言っているのがわかった。
肘をついていたセオドアの腕がレイアの首の裏に回される。
「アリシア様は初めての懐妊でしょう?不安なはずよ?あなたが支えてあげなくては」
「私が興味のない妻子などに気を回す必要はない。私が支えるべきはレイア、お前だけだ」
セオドアは首の裏から背中に回した手で、レイアを抱きしめながら答える。
「興味がない・・・?」
セオドア自らアリシアを娶ったはずなのに?
「そうだ。私が想うのはレイアだけだ」
ならば何故。
「なら何故アリシア様を?」
「レイアが気にすることでは無い。私には君だけだと言う事をわかっていてくれればいい」
レイアは改めて思う。
この人は私を愛しすぎていると。
そして考えた。彼のやりそうな可能性を。
アリシアを娶ったのも、私に理由があるのではないか。
もしかして、私を死なせない為にアリシアが必要・・・?
アリシアは魔力がとても多いと聞いている。
まさか荊の祈りをアリシアに?
流石に人族でそこまで多い魔力を持って生まれるのは不可能だと思うけど・・・。
でも術者が死を賭けて行使するなら可能かもしれない。
(少し探らなくては)
そう決心したレイアは、セオドアの腕の中で眠りに落ちていった。
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侍女長であるクレアは、第二妃が来てから憂鬱な日々を過ごしていた。
理由は皇帝陛下から第二妃付きに任命されたからだった。
当初は陛下に信頼されているという喜びもあったが、すぐに第二妃の酷さにうんざりして任をといて欲しいと思った。無理なのは承知だけど。
「今日も陛下はあの女の元なの?」
カタンから来た第二妃は侍女に深紅の髪を梳かせながら、苛立った口調で壁際に居た私に問うてきた。
「あの女とはどなたの事でしょうか」
「レイアよ!分かるくせに一々っ!なんなの?なぜ・・・?わたくしは陛下に求められてカタンを出て来たのよ?なのに、なのに、こんなの、おかしいわ」
髪を梳く侍女も、入口を守る護衛も、そして私も、目の前でおかしいと繰り返しながら爪を噛む第二妃を冷めた目で見ている。
ここにいる護衛も侍女も全て、主である皇帝陛下の意図を理解していた。
『この第二妃は皇帝陛下にとってはただの道具に過ぎない』と。
シャウゼンからかなりの距離がある小国カタンから来たこの方は、皇帝陛下と皇妃陛下の仲の良さを知らない。
皇帝陛下には皇妃陛下がいれば他は必要ないと言うことも知らない。
皇帝に仕える者達は、なぜ皇帝陛下がこの女を娶ったのかは分からなくとも、それは皇妃陛下の為にした事と理解していた。
そして、懐妊させたのにも理由があるのだろう事も。
「陛下を呼んでよ」
「出来かねます」
「どうせあの女が陛下に我儘を言っているのでしょう?だから陛下がわたくしに会いに来れないのよ」
「皇妃陛下の事をあの女呼ばわりはおやめ下さいませ。誰が聞いているかわかりません」
「陛下はわたくしの事を愛しているのよ?愛されていない女をなんと呼ぼうが構わないでしょ」
私は『陛下が愛しているのは皇妃陛下だけですよ』と、言いたいのを堪える。
陛下からは『度が過ぎた我儘以外は適当に流せ』と言われている。アリシアが皇妃陛下に害をなさない様、上手くあしらわなくてはならない。
「あまり興奮されますと、お腹のお子にさわります」
「くっ・・・そうね、この子が生まれれば・・・」
私は『子供が生まれても貴方様の立場は何も変わらない』と、心で毒づく。皇帝陛下にとって、道具から生まれたものもまた道具に過ぎないだろうから。




