61.微笑みの裏③
「皇妃様が妖精であらせられるとは・・・いやはや驚きですな。しかしそうであれば、あの魔力量や魔術行使の精密さも頷けますじゃ」
「私はなんとしてもレイアを失いたくないのだ」
「陛下は皇妃様の余命を伸ばしたい、と」
「そうだ」
「しかし、人族でその魔法を行使出来る者がいるかどうか・・・」
「当てはある」
セオドアの言葉に、フェルディナは少し目を見開いた。
「どなたですかな?私にはその様な者に心当たりはありませぬが」
「娘だ」
セオドアのなんの感情も孕まない言葉が、執務室に低く響いた。
「娘、といいますと・・・先日お生まれになられた第一皇女殿下の事ですかな?」
「そうだ。娘はどの道長生き出来ないそうだ。それがいくつまでかはわからぬが、それならば私は娘の魂でレイアを生かす」
「陛下のそのお考え、皇妃様には・・・」
「言わぬ」
「しかし、皇女殿下に魔法を使わせれば、必ず皇妃様に気付かれますぞ」
「それを気付かせぬように、レイアには娘は病弱と伝える。娘が例の魔法を使える年になるまでは通常の勉強などはさせるが、時折寝込むように仕向け、あまり公には出さぬようにする。お前ならばそれくらい容易かろう?」
「まぁ、出来なくはありませぬが・・・それまで皇妃様は持ちそうなのですか?」
「それについてもお前に頼むつもりでいた。なんとしても持たせろ。あと明日、娘の魔力測定と、先読みを行え」
「かしこまりました。この後、皇妃様の容態を診ても宜しいですかな?」
「うむ。レイアの寿命を伸ばす方法を探るよう私から頼まれたと話してかまわん。しかし、妖精と言うのはレイアに言われるまでは知らぬ振りをしろ」
「はっ」
フェルディナはまた恭しく頭を下げると、執務室を後にし、レイアの部屋へと向かった。
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「皇妃様、お加減はいかがですかな」
レイアの部屋に通されたフェルディナは、顔色のいい皇妃に少し驚きつつ尋ねた。
「心配をかけましたね。もう大丈夫よ」
二人はテーブルを挟んで座ると、用意された紅茶を飲みながら世間話を始めた。
「明日、姫様の魔力測定を行いますじゃ」
「そうなの?よろしくね」
「あと・・・先程陛下から、皇妃様の寿命の件を聞きましたぞ」
レイアはカップを持ち上げかけていた手を止めると、フェルディナを見て、手を下ろした。
「そう」
「皇妃様の寿命を伸ばす方法を考えるようにと、言われておりますじゃ」
「そう、なのね。他に何か聞いた?」
「いえ、姫様を妊娠されていた間に弱ってしまったという事だけですな。今は顔色がとても良いようですが・・・魔力は半分程まで減っておるように見受けられますが?」
「え、ええ。出産で枯渇しかけたから、まだ戻ってないの。ようやく戻り始めたからだるさが抜けて起き上がれたのよ」
魔力の多い赤子を産む時、親の魔力を殆ど吸って生まれることが多い。
しかしレイアの魔力はこの国で一番多く、それを全て吸って生まれたとなれば、皇女はとんでもない魔力量だろう。
しかし、すでに出産から数日経っている。
おそらく今魔力が半分なのは、古の魔法を使った影響だろうと、フェルディナは正しい答えに辿り着いていた。
「ノイラートの書物を調べ、見つかり次第すぐお知らせしますじゃ」
「ありがとう、フェルディナ」
「では儂は今日はこれで失礼しますが、皇妃様は顔色はいいとはいえ、もう少し休んで下され」
フェルディナの言葉にレイアは笑顔で頷いた。
レイアの過去が続くので、章で分けてサブタイトル変更しました。




