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番の瞳  作者: 言葉
第一章:出逢い
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6.魔力の枯渇


今回の領地視察は、領地で療養している母の定期検診も兼ねていた。

その為、母が王都にいた時の主治医も連れてきていたのだ。

老齢の医師に簡単に説明し、少女の眠る客間に向かった。


そこにはいつの間に来ていたのか、療養してたはずの母がおり、テレサとクロエと共に忙しなく支度をしていた。

普段から母に仕えている侍女のテレサからの話では、普段あまり動かないと聞いていたはずのだが。


「母上、何故ここに…?動き回っても大丈夫なのですか?」


母は口に人差し指を当てて、声を抑えるようにとジェスチャーしながら


「今日は体調が良いのよ。それに、こんな愛らしいお嬢さんに手を焼かずにいられないわ」


と、なにやら上機嫌で侍女に小声であれこれと指示をしていた。


少女はボロボロのドレスから、肌触りの良さげなシルクの寝衣に着替えさせられて、ベッドに寝かされていた。

掛けられた毛布から見えている肩は、寝衣越しでもわかる程酷く細い。


「ドレスもあちこち引っ掛けたようにボロボロだったから着替えさせたのだけど、露出していた腕や足に切り傷が多くて、他にも膝とか肩とかにぶつけた様な傷なんかが沢山あったのよ。だから傷が痛まないようにシルクにしたの」


母は少し痛ましげな顔で少女を見ながら、頬に手を当ててため息を吐いた。


「何かに襲われたような傷はありましたか?たとえば魔物とか…人とか」


セシルが少し控えめに尋ねると、それを聞いた母は、安心させるような柔らかい微笑みで


「それは無いと思うわ。爪痕なんかもなかったし…木が生い茂る森の中を走って、至る所に引っ掛けたような、そんな感じかしら。打撲も襲われたような感じでは無さそうよ」


母の後ろで聞いていたテレサもこくこくと肯定している。


それならばとりあえずは安心か。


一応未婚であろう女性という事で、医師には見える範囲の傷を軽く確認してもらったが、傷に関しては医師の診断も母と同様だったので

急を要する様でなければ、目が覚めるのを待つのがいいだろうと母に言おうとしたセシルだったが、

老齢の医師がなにか考え込むような顔をしているのが目に入った。


「どうしました?何か気になる所でもありましたか?」


「かなり深い眠りのようですが、魔力が枯渇しかけている為のようですな」


魔力の枯渇。

それは滅多に起こることではない。


この世には魔素が溢れており、魔力を消費しても少し経てば体が勝手に魔素を取り込み、魔力は回復する。

魔力の少ない平民でも、日常生活で魔力切れなど滅多に起きる事ではなかった。

戦争時であればいざ知らず、一般的に魔力が多いと言われる貴族では有り得ないと言えた。

そしておそらく、目の前で眠る少女も貴族だった。

身につけていた物や傷だらけでも分かる陶器のような白い肌、どれをとっても貴族令嬢のそれだ。


「早く魔力を回復出来たら、彼女が目覚めるのも早くなるのですか?」


医師にそう尋ねると、


「そうですな、魔力をわけ与えれば、眠りから覚めるのも、魔力切れの怠さからの解放も早いでしょうな」


老齢の医師はうんうんと頷きながら答えた。


セシルはすぐに眠る少女の手を取り、いきなり流し込まないように注意しながら、ゆっくりと少女に魔力を流して行った。



一人称がこんがらがります。

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