59.微笑みの裏①
やっと話し終えたレイアを抱き締めたセオドアは、
苦しそうな声で呟いた。
「何故、何故隠していた?」
「妖精のままでは、貴方と番え無かったからよ」
「世継ぎを望まねばいい話だったのだろう?」
「そんな訳にいかないわ。分かっているのでしょう?」
セオドアのギリッと噛み締めた口から、血が滴った。
この人は、私を愛し過ぎている。
「レイアの話を聞く限り、魂は妖精としての意識という事だろう?それを削るという事は、もう生まれ直す事が出来ないということでは無いのか?それとも、削れていても、残っていれば可能なのか?」
ああ、この人は、なんて頭がいいのかしら。
隠してた一番の理由に、真っ先に気付くのだもの。
「少しなら、生まれ直せると聞いているわ。ただ、記憶や力はその分欠けるけれど」
「なら今、どれだけ残っている?」
「・・・3/4くらい・・・かしら」
もしかしたら2/3くらいかもしれないけれど・・・。
「それだけ使って二年しか持たなかったというのか・・・!?・・・娘を身篭ったのが原因ではないのか?」
セオドアの言葉は、多分正しかった。
シェリルは今までの、人族と妖精の子供でも有り得ないくらいの力を持って生を受けた。
そのせいで、体内にいた頃からレイアの魔力をどんどんと吸われていた感覚はあった。
一度は大量にあるレイアの魔力が枯渇しかけた程。
しかしレイアには娘に対する恨みなど、微塵も無かった。
寧ろ無事に産まれてきて安堵した。
娘が長生き出来ないとわかっているのもあって、ハーレイよりさらに愛しかった。
「セオ、私はあの子を産めて、幸せよ」
「・・・くそっ」
セオドアはボフッと寝台の毛布に拳を打ち付け、さらに食い縛った唇から血が流れた。
レイアはその血を拭いながら、セオドアの顔を自分に向ける。
「セオ、シェリルは長くは生きられないの」
「なん・・・だと?」
「人族と妖精の娘は力は大きいけれど、その分息子と違って寿命が短いの・・・だから、私はあの子に人並みの寿命を与えるつもりよ。まだ方法はわからないけれど」
「力の大きい娘ならば・・・お前のように古の魔法も使えるのか?」
「え、ええ。教えれば使えるのではないかしら?なぜ?」
「いや・・・なんでもない。顔色は戻ったが、体力はまだだろう。食事を運ばせるから、食べたら休め」
「ありがとう、そうするわ」
セオドアはようやく薄らと微笑み、レイアに口付けをすると部屋を去っていった。
この時、レイアはセオドアの微笑みの意味を理解していなかった。
それを後で酷く後悔する事になる。




