51.ジェラルド・フォン・リンデンバウム
私達がサロンに着くと、母上と王妃様、そして何故か陛下がいた。
レオが陛下に気付くと少し大股で進み、礼をした。
「父上、母上、クラウド夫人、お待たせしてし申し訳ありません」
「よい。私はセシルの番に挨拶をしに来ただけだ。紹介してくれるか」
レオの言葉に返したのは陛下だった。
ジェラルド・フォン・リンデンバウム陛下はブロンドに栗色を溶かした様な髪に白銀の瞳の一見優しげな雰囲気の壮年だが、実際はかなり頭のキレる方だ。
陛下も私と同じく瞳の魔力も持っているが、
私が癒しや眠りといった魔眼が得意なのに対し、陛下は相手の動きを止める、嘘を見破る、毒物を見抜くなど、特殊な魔眼に特化している。
『王族にはピッタリだと思わんか?』と、以前言っていた。
私とシェリーはレオの後ろで跪いて挨拶を述べようとしたが、陛下に「面倒」と一掃されて立たされた。
「陛下、この度は禁書の閲覧許可を始め、お力をお貸しいただいて感謝致します。こちらが私の番のシェリル・フォン・シャウゼン皇女です」
陛下は王妃様から聞いているはずと判断し、シェリーではなく本名で紹介した。
隠していると思われては厄介だという思いもあった。
すると、シェリーも私の意図に気付いたようで、迷いなく本名で名乗った。
「ご紹介に与りました、シェリル・フォン・シャウゼンです。陛下にお会い出来るとは光栄です」
「そうか、そなたが・・・。王妃に話は聞いていたが、実際会ってみればなるほど納得だな。セシル、しばらくレオナルドの補佐は休んで良い。全て解決するまでは皇女の助けになってやれ。」
「「ありがとうございます」」
「そろそろクラウド公爵が探してる頃だな。私は仕事に戻るとする」
そう言うやいなや、颯爽と去っていった。
相変わらず忙しそうな方だ。
「慌ただしくてごめんなさいね。こちらにいらっしゃい」
王妃様が苦笑いでこちらに手招きしたので、用意されていた椅子に座った。
すぐに目の前に用意されたのは薔薇の花弁が浮かべられた紅茶で、
シェリーは浮かぶ花弁を嬉しそうに眺めている。
「レオ、遅かったようだけど何かあったの?」
王妃様がレオに小声で聞いているのが耳に入った。
「あぁ、ここに来る途中にサーベリック嬢に会いまして」
レオの言葉に真っ先に反応したのは母上だった。
母上も何度も邸に押しかけてくるサーベリック嬢が嫌いだった。
「まさか王宮までセシルを追いかけてきたのではないわよね?」
いつもは温和な母上が険しい顔をしているのに気付いた王妃様が、レオに尋ねる。
それに対してレオはバツがわるそうな顔をして、私の方を見た。
「そのようです。ですがシェリーを紹介したのでもう邸にも来ないかと思います」
私が代わりに王妃様に答えると、王妃様と母上は揃って大きな溜息を吐いた。
「まぁ、番を引き裂くなんて出来ない事はサーベリック公爵も知ってるでしょうし、さすがにこれまでのように娘に好き勝手はさせないでしょう。それにセシル、シェリーさんは陛下にも紹介済みだから大丈夫よ」
王妃様の言葉で、一先ずこの話は保留となった。
それから少し歓談した後、母上がカップをソーサーに置いた。
「セシル、シェリーちゃん、一先ず用事は済んだのよね?紅茶を頂いたら帰りましょうか」
「「はい」」
「あら、寂しいけれどわたくしも午後からは公務があるし・・・仕方ないわね。何かあれば手紙を飛ばしてちょうだいね」
「ええ、ありがとう」
シェリーと薔薇を見ながら残りのお茶を楽しんで、サロンを後にした。
帰りは断ったのにレオが見送りについてきてくれた。
こういう所は王太子らしくないんだが、私は好ましいと思う。
「レオ、さっき陛下からしばらく休みをと言われたが、何かあれば呼んでくれ」
「ああ、分かった。シェリー嬢にハリーから返事が来たら知らせてくれ」
「勿論」
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こうしてようやく私達は公爵家に戻った。
1日しか経ってないはずなのに、何日も帰ってなかったような気がした。
「シェリー、疲れてなければ後で庭に出ない?」
「はい、喜んで。すぐ支度しますね」
にこりと微笑んだシェリーは、クロエと自室へと歩いて行った。




