50.セシルの災難
気づけば50話・・・!
びっくりしてます。
今回はストーリー的には繋がってますが、
閑話みたいな感じです。
王宮のサロンは薔薇園になっていて、今は見頃だろう。
行くのはいつぶりだろうか。
そんな事を考えながらサロンに向かう廊下を歩いていると、後ろから声がした。
「レオナルド殿下!セシル様!」
振り返ると、そこに居たのはサーベリック公爵令嬢だった。
隣でセシルが慌ててシェリーを背に隠した。
「レオナルド殿下、セシル様!お久しぶりでございますわ!」
私は一歩前に出る。
「サーベリック嬢、久しぶりだね」
「お久しぶりです」
セシルの声から嫌悪が滲み出ている。
「ここでセシル様にお会い出来るなんて・・・嬉しいですわ」
そう言って頬を赤らめる彼女に反吐が出そうだった。
セシルは昔からこの女が嫌いだった。
茶会やパーティーなどでは一度もセシルにエスコートされた事も無いのに、
将来はセシルの婚約者になる、と宣っている。
「サーベリック嬢、サーベリック公爵に会いに来たのであれば、公爵の執務室にいるはずだが」
去れ、と伝わるように言ったつもりだったが、
それに対しての彼女の返答は有り得ないものだった。
「いえ、クラウド公爵家にセシル様に会いに行きましたら、こちらだと聞きましたの!ですので会いに来てしまいましたの。ふふふふ」
ゾワッと寒気がした。
彼女はよく、先触れもなしに公爵家に来ることがあって、迷惑しているとセシルから聞いていた。
いつもであれば公爵家の人間は主の行先など教えないのだろうが、さすがに城にまで押しかけないだろうと伝えたようだ。
さすがのセシルも呆気にとられてか、怒りからか、固まってしまっている。
「あぁ!セシル様瞳の色が・・・!ついにわたくしと番になれたのですわ!」
突然そんな世迷いごとを言ったかと思うと、
セシルの手を握ろうと彼に近づいた。
しかしそれを察知したセシルが、サッと後ろに手を隠す。
「セシル様?なぜ・・・」
「ああ、サーベリック嬢、セシルの瞳が深緑なのは君が原因ではない。そもそも番というのは初めて会った時にわかるものなんだよ?突然番になるわけが無いだろう。そんな事も知らずによくセシルの番だなどと言えたものだ」
「レオナルド殿下、お戯れが過ぎますわ。ここにはわたくし以外の女性はいないじゃありませんの!ね?セシルさ・・・セシル様?その後ろにいらっしゃるのはどなたですの」
シェリーの存在に気付いたサーベリック嬢の甲高い声が途端に低くなる。
「セシル、サーベリック嬢に君の番を紹介するといい。いい加減、解らせてやった方が本人のためだ」
「セシル様の・・・番ですって?」
セシルは一瞬躊躇ったが、シェリー嬢に顔を向けるとなにか呟いた。
シェリー嬢は頷くと一歩前に出る。
顔を見るととくに怯えたりはしてないようだ。
「彼女が私の番のシェリー嬢だ。シェリー、彼女はジェシカ・サーベリック公爵令嬢だよ」
シェリー嬢を穴が空くほど見つめるサーベリック嬢は驚愕の顔をしていた。
おそらくあまりの美貌に驚いたか、番の存在そのものに驚いたか。その両方か。
そんなサーベリック嬢に、シェリー嬢が綺麗なカーテシーで挨拶をする。
「お初にお目にかかります。シェリーと申します」
シェリー嬢の美しいカーテシーに一瞬息を飲んだ彼女が、シェリーと名乗ったのを聞いて一気に馬鹿にしたような顔になった。
「・・・ジェシカ・サーベリックですわ。あなた、家名が無いということは平民てことかしら?平民の番なんてセシル様が不備だわ」
「何を言っている?」
私が怒りをぶつけそうになった瞬間、隣のセシルが唸るような声で言った。
「っ・・・セシル様!?わたくしは当たり前のことをっ」
「サーベリック嬢、シェリーは私が初めて愛した女性だ。彼女は平民ではないが、もし彼女が平民であっても何も問題はない。あと、何度も言うが私はあなたに名前呼びを許した覚えはない」
「そんなっ・・・」
「酷いとか、言わないだろうね?そもそも君は周りにセシルと将来婚約するだのと触れ回っているようだが、どういうつもりなんだ?いい加減セシルの迷惑を考えたらどうだ」
セシルから視線すら逸らされた彼女は、悔しさに滲ませた顔で
「っっ・・・!も、申し訳・・・ありませんでした・・・クラウド様・・・」
「今後一切私に関わらないで頂きたい。勿論私の番にもだ」
シェリー嬢はセシルに腰を抱かれたまま、
毅然とした態度でサーベリック嬢を見ていた。
「私達は母上に呼ばれている。待たせるわけにはいかないからここで失礼するよ」
彼女に背を向け、「いこう」と二人に声をかけると
セシルも「失礼する」と一言いい、シェリー嬢を連れてそのまま去ろうとしたが、
「失礼致します」
シェリー嬢はそう言ってまた美しいカーテシーをしてみせた。
サーベリック嬢は唇を噛んで忌々しそうな顔をしていたが、何も言わず踵を返して去っていった。
「やれやれ。私に挨拶もなしとはね」
私がそう言って溜息を吐くと、
セシルが途端に不安を滲ませた顔でシェリー嬢に向かい合った。
「シェリー、嫌な思いをさせてすまない・・・ありがとう」
「嫌な思いなど何もしていません。セシル様はあの方をなんとも思ってらっしゃらないのでしょう?それにセシル様の番はこの世で私だけですから。王太子様もありがとうございました」
そう言ってにこりと私たちに笑いかけた。
「ああ、むしろ私は彼女が嫌いだ。シェリーが堂々としてくれていて嬉しかったよ」
やれやれ・・・セシルはシェリー嬢にかかると本当に別人だな。
「くっくっ、シェリー嬢は結構肝が据わってるね。良い事だ。さて、待たせると母上が煩いから急ぐぞ」
私達はようやくサロンへと向かった。
サーベリック嬢は今後でてくるのか・・・




