48.弟と異母妹
「それにしてもセシル、お前そんな風になるんだな」
レオが廊下を歩きながら私にだけ聞こえる声で呟いた。
「ん?そんな風?」
「惚れた相手には一途に尽くして甘くなるんだなって事」
「はっ!?何言って」
シェリーが不思議そうな顔でこちらを見上げたので
慌てて口を抑えた。
「セシルが今まで女に惚れたとこなんて見たこと無かったし。良かったな、初恋が番で」
そんな事を言ってくつくつと笑っている。
こいつ、からかっているな。
「あの、王太子様?」
「なにかな?シェリー嬢」
シェリーが私の隣のレオに向かって問いかけた。
「王太子様がもし、私の異母妹と婚姻されたら・・・私と王太子って、義姉弟になるのでしょうか」
「あ、たしかに。そう言われればそうか。という事はシェリー嬢がセシルと婚姻したら、セシルは私の義兄か。兄・・・ねぇ」
またシェリーが赤くなっている。
まだプロポーズしてないんだから、周りが先に言うのはやめて欲しい。
「レオ、お前本当にアリア皇女と結婚するのか?」
「・・・」
無言になったレオの顔にすっと影がかかった。
「あの、私の異母妹はどのような子なのでしょうか」
「・・・執務室で話すよ」
レオはそう言うと、ちょうど着いた執務室のドアを開け、私達を招き入れた。
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セシルとシェリー嬢をソファーに座らせ、
私は執務机の椅子に腰掛けた。
執務室の机には大量の書類が積まれている。
それを見たセシルが眉間に皺を寄せて眉を下げた。
「レオ・・・すまない」
「ああ、気にするな。そもそも側近をお前以外に付けていない私が悪い」
「王太子様の側近はセシル様だけなのですか?」
「ああ。一応私は王太子だが、弟を推す貴族の派閥があってね。信用出来る人間が少ないんだよ」
私の言葉にシェリー嬢の顔が曇った。
「シェリー、第二王子のランスロット様は王座には興味がないから、レオとの仲は悪くないんだよ」
そんな彼女にセシルが柔らかい笑みで話す。
本当に昨日から見たことの無い顔ばかり見せてくれる。
「ランスは私と違って見た目から優しさが滲み出てるような奴でね。優しいことは優しいがそれだけではないし、将来王になる気はなく、私を支えるという強い意思も持っている。なのに勘違いしてる貴族共が、扱いやすそうと勘違いして祭り上げようとしてるんだよ。迷惑この上ない」
「実際の兄弟仲がよろしいのなら安心しました」
シェリー嬢がにこりと微笑んだ。
まったく、アリアとは似ても似つかない。
「シェリー嬢、君の異母妹君の事だが」
「あ、はい」
「私がまだ10歳の頃にアリア皇女に惚れられてしまってね。それから婚約者になったんだが・・・アリア皇女は君とは正反対の我儘皇女だよ」
「そう、なのですか・・・あの、王太子様」
「なにかな」
「王太子様やリンデンバウム王国に、異母妹と婚姻を結ぶメリットは有るのでしょうか?」
「急にどうしたの?シェリー」
「いえ、王太子様は婚約を解消されたそうなので・・・メリットがないのであれば、お二人の婚約は異母妹の我儘という事かな、と・・・覚えていないとはいえ申し訳なくて」
なるほど。国家間のメリットデメリットにすぐ行き着くか。
さすが皇女だけあって記憶はなくても頭はいいな。
「君が言う通り・・・異母姉であるシェリー嬢に言うのもあれだが、私は出来るならアリアとの婚約を破棄したいと思っている。皇家と王家の婚姻というメリットはあるが、アリアの性格を考えると妃の器とは言い難いから、実際デメリットの方が大きい。しかしアリアは破棄を受け入れはしないだろうね」
私の話を難しい顔で聞いてたシェリー嬢は、
「そうですか」と言ったっきり考え込んでしまった。




