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番の瞳  作者: 言葉
第一章:出逢い
42/641

42.束の間

湯浴みを済ませたシェリーはソファーに腰を下ろし、

ぼーっと今日の事を考えていた。


「お嬢様、紅茶をどうぞ」


ふいに声をかけられて顔を上げると、

なぜかクロエがいた。


「え?なぜクロエが?」


「ふふ、旦那様から遣いがあったのです。お嬢様が城に泊まるから来るようにと」


そう言ってにっこり笑った。

旦那様の気遣いに嬉しさと申し訳なさが混ざる。


「ありがとう、クロエ」


クロエの用意してくれたお茶は、寝る前によく飲んでいるカモミールティー。

精神を落ち着かせる効果があるらしい。


しばらく紅茶を楽しんでいると、続き部屋のドアがノックされた。

振り返るとクロエは既に部屋に居なかった。


「はい」


立ち上がり返事を返すと、開かれたドアの向こうからセシルが現れる。


「待たせたかな?」


「いいえ、クロエが来てくれて、お茶を頂いていました」


「クロエが?父上が呼んでくれたのか」


「はい、夢のこともありますから、心配してくれたみたいです」


彼は私の肩を抱いてソファーに隣合って座ると、私の手を握って、ゆっくりと話し出した。


「今日の王妃様の話、驚いたよね」


「はい・・・驚きました」


「すぐにシェリーがシェリル皇女だと確信が持てなかった理由のひとつが、皇女はもう何年も病気に伏せっている事になってるからなんだ」


「え?病気ですか?でも・・・」


私には病気は無いと、最初診てくれたお医者様に言われたはず。


「うん、シェリーは怪我はしていたけど、病気は無かった。だから他の理由で表に出されなかったか、早くにシェリーの母上のレイア様に連れ出されたんだと思う。実際、王妃様が8年前にシェリーを連れたレイア様に会ってるのを考えると、後者かな」


「お母様が・・・」


私が俯いてしまったのを見て、セシル様は私を抱き寄せた。


「レイア様の事は必ず見つけるよ。シェリー、今日は疲れただろう?明日も早くからレイと話しないとだし、もう寝ようか?」


「はい」


答えたと同時に、セシル様の左手が両足の下に回され、私の体が浮かび上がった。


「セ、セシル様、わっ」


思わず顔上げると、すぐそこに甘さを帯びた深緑の瞳があった。


「ふふ、暴れたら落ちるよ?落とさないけど」


その顔に何も言えなくなる。顔が熱い。

私はそのままベッドに連れていかれ、

恥ずかしすぎて両手で顔を覆ったまま、降ろされた。

肌触りのいい掛け布団が掛けられるのを感じた直後、

セシル様が離れていくのに気付いて、

咄嗟に彼のシャツの裾を握ってしまった。


私に引っ張られる事で少しつんのめったセシル様は

ベッドにドサッと座る。


「っと、シェリー?どうした?」


「ご・・・ごめんなさい」


「もしかして、私がいなくなると思った?」


私はこくりと頷く。すると頭上からくすくすと笑い声がした。


「私がシェリーが眠るまで離れるわけないだろ?そこの椅子を取りに行こうとしただけだよ」


そう言って指さした先には確かに椅子があった。

恥ずかしい。


「あんまり可愛いことしないで」


私の頭を撫でながら、瞳だけでなく声まで甘さを滲ませて囁く声。


「か、かわっ、かわいくないです!勘違いしてごめんなさい・・・」


「シェリーは何しても可愛いよ?」


「でもこんな事、セシル様にしかしません」


「っ・・・だからそういう・・・椅子取ってくる」


セシル様がすっと顔を逸らして、椅子を取りに立ち上がる。

持ってきた椅子をベッドの隣に置いて座ると、

艶めく黒髪をガシガシかいて、はぁ、と溜息を吐いた。


溜息の理由が分からなくて天蓋を見ながら困惑していると、

突然目の前にセシル様の顔が現れて、唇が重ねられた。

2度目の口付けは一度目より深くてクラクラする。

唇が離れたセシル様の顔は赤くて、余裕の無さそうな切ない顔をしてて。


「あまり可愛いこと言ったり・・・そういう顔をされると私が耐えれなくなる」


まだクラクラしてるし顔が熱い。

こんな顔してしまうのはセシル様のせいなのだけど

言ったらまたキスされるのだろうか。

私は椅子に座り直したセシル様に手を伸ばした。


セシル様は私の手を握り返すと、指に口付ける。

その顔も瞳もひたすら甘い。

セシル様こそ、その顔はずるいと思う。

その瞳を見ていると眠気が襲ってきた。


「セシル様・・・ごめんなさい、眠気が・・・」


「眠って、おやすみ、シェリー」


「おやすみなさい」


眠りに入る直前、耳元に囁く声がした。


「愛してるよ、今日こそはいい夢を」



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