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番の瞳  作者: 言葉
第一章:出逢い
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36.魂の繋がり

部屋に静寂が訪れると

シェリーの瞳からポロポロと涙が零れた。


セシルは繋いでいた手を引き寄せ、シェリーを強く抱き締めた。

腕の中のシェリーはセシルのシャツにしがみつくと

抑えていた声を上げて泣き出し、

その涙はセシルの胸に滲んでいく。


しばらく泣いた後、彼女は嗚咽で息苦しそうに

途切れ途切れに言葉を絞り出した。


「セシル、さまっ、わたし」


「うん」


「わたしっ、死にたく、ないです」


「死なせないよ」


「生きたい、です」


「うん」


「セシル様と、ずっと、一緒にっ」


「うん、ずっとずっと、一緒に生きよう」


「セシル、さま、ごめんなさい」


「なぜ謝るの?」


「だって・・・っ、私、番なのに、生きれません」


セシルが再び強く抱き締めてから、ふっと腕の力を抜いた。


「ねぇ、シェリー、顔上げて?」


シェリーは一瞬肩を震わせたが、長い睫毛は緩く閉じたまま。


「愛してるよ、シェリー」


セシルの言葉に、シェリーがゆっくりと顔を上げた。

涙を滲ませた深緑の瞳は揺れている。

彼女にしっかり伝わるように、もう一度想いを伝えた。


「愛してる」


その瞬間、シェリーの瞳は余す所なく深緑に染った。


「私も、です。私も、セシル様を、愛しています」


恥ずかしげに伏せた彼女の瞼に口付けを落とすと

再び顕になった深緑の瞳から涙がとめどなく溢れた。

彼女の顔を優しく上げて、唇を重ねる。



その瞬間、

シェリーの頭にパリンと何かが割れた音が響いた。

そして魂の奥深くに今まで無かった何かが生まれた。

そこから全てが満たされていく感覚。

もう、長くは生きられないと言われたばかりなのに。

それでもいいかなと、一瞬思ってしまう程の幸福。

もう、シェリーの震えは止まっていた。

先程までは、あんなに死ぬのが怖かったのに。

これが魂の繋がりなのか。


「シ、シェリー、今・・・」


「セシル様・・・これは」


「シェリーも感じてるんだね?良かった・・・今度は私だけじゃなかった・・・」


瞳のように、またセシルだけだったらと心配してたのだろう。


「セシル様、魂の繋がりとはこれ程心が満たされるものなのですね」


「ああ・・・本当に。それに、これでシェリーと誓いの儀式が出来る。そう思うと、嬉しすぎて、やばい、どうしよう」


顔をみるみる赤くして、それを隠すように顔半分を手で覆っている。

そんな彼が愛しくてたまらなくなり、

空いている彼の手を握り、その手を自分の頬に添える。

セシルはそんな彼女を余す所なく抱き締めた。


「はぁ・・・ごめん、まだシェリーの寿命の事は解決していないのに、抑えきれなくて」


抱きしめる腕から、言葉から、魂から、溢れる愛が伝わってくる。


「セシル様、私はすぐ、死んでしまうかもしれません。それに、私が死んだら・・・セシル様の番がいなくなります。それはセシル様の寿命にも係わりますか?」


セシルはシェリーの肩に埋めていた顔を少し上げた。


「私の事などどうでも─」


彼の口に指をあてて、言葉を遮ぎる。


「私には大切な事です」


一度瞼を伏せたセシルは、溜息とともに呟いた。


「人生で一度番と結ばれれば、弊害はなくなる」


その言葉を聞いて、安堵と笑みが零れた。


「良かった・・・セシル様、私が最後を迎えるまでお側に置いて頂けますか?」


セシルは苦しそうな顔をすると、

返事の代わりに抱き締める腕に力を込めた。


「そんなの当たり前だろう!離すわけがない。それに、死なせるつもりもない」


私は小さく首を横に振る。


「それはきっと・・・難しいと思います」


「私は何をしてでもシェリーを失いたくない」


「セシル様・・・」


「シェリー、君の父上に会いに行こう」


セシルの言葉にシェリーの体が固まってしまった。

ゆるゆると顔を上げて彼を見ると、その顔は真剣で。


「それは・・・私がどこの誰か、分かったという事ですか・・・?」


「実は早い段階から予感はあった。だけど・・・憶測で話せる程君の身元は軽いものでは無かった。だからそれについて、母上が今王妃様と話している」


「王妃様と・・・?」


王族になにか関わりがあるという事なのだろうか。


「記憶や魂の事とか色々あったから、シェリーにこれ以上重荷を背負わせたくなかった。だから確実になるまで言わないつもりでいた。だけどそんな悠長に調べてる時間はない。母上と王妃様の話が終わったら、レオも含めて話そう」


彼の言葉から内容が軽くないのはヒシヒシと伝わるのに、

何故か私の心は凪いでいる。


「不思議、ですね」


「シェリー?」


「たったさっきまで、色々な不安に押し潰されそうでした。なのに今はなにも怖くないんです。セシル様がいてくれるから」


そう言うとシェリーは花が咲くように美しく微笑んだ。


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