35.妖精
「妖精!?実在してたのか…?」
レオが私が抱いた疑問と同じ言葉を叫んだ。
この時代でいう妖精は、神話やお伽噺にしか出てこない。
「この試薬が載っていた書物は古の時代のものなのですが、そこに人と妖精の子で男性の場合は『透明がやがて闇になる』女性の場合は『闇がやがて透明になる』と載っていました。なので少なくとも古の時代には実在し、実際にこの試薬を使ったことがあるのだと思います」
確かに、色が変わる様などは実際に見なければ書けない。
「シェリーが…妖精の血をひいてると?」
シェリーが妖精の血を引くのなら、
レイア皇妃は妖精ということか?
そして息子のハーレイ皇子もという事になる。
妖精と人との子供なんて予想外すぎて頭が混乱してきた。
妖精にも…番はあるのだろうか…。
「はい、シェリー嬢は人と妖精の御子だと思われます」
私の頭にひとつ気になる事が浮かんだ。
「なぁレイ、人と妖精の子の寿命はどれくらいかわかる?」
神話やお伽噺での妖精には寿命はなかったはず。
だから現実でも…いや、短命でさえなければいい。
「…あくまで僕が得た知識によるものですが、純粋な妖精はほぼ不死に近いとされています。しかし、人間と妖精の子として生まれた場合、男性はさほど能力を引き継げず…と言っても人族よりはかなり優秀ですが、対して女性はほぼ全ての能力を引き継ぐそうです。そして男性も女性も肉体は人間で生まれ、不死にはならないそうです…が、男性は能力は低い代わりに寿命は普通の人間と同等、女性は…あまり長くないそうです…」
レイから途切れ途切れに聞かされた言葉に目眩がした。
微かに揺れるシェリーを支え、
聞かなければならない事を聞く。
「どれくらい…だ」
「おそらくですが、女性の場合、人間の肉体を器にして妖精が入っているような状態で、バランスが取れていない。そのせいで器である肉体が力に耐えきれず、もたないのだと思います…。見たところ、シェリー嬢の魔力の器も相当な大きさの様ですから、かなり強く妖精の力を引き継いでいると思われます。なので…今の予想できるシェリー嬢の年齢から考えますと、早ければ18、遅くとも…20歳くらい、だと思います…」
シェリーがひゅっと息を飲む音がする。
私はさらに目眩が酷くなって視界が歪む。
「肉体が…持たないという事は…番の儀式をしても…っ」
「はい…多少は伸びるかとは思いますが、おそらく儀式後持っても半年~1年、くらい…かと」
番の誓いを交わせても、肉体がもたなければ意味が無い。
シェリル皇女は今17歳のはず…。
儀式をしても、早ければあと1年でシェリーを失ってしまうのか…?
いや、そもそも今のままでは、儀式すら上手くいくか分からない。
やっと、見つけたのに。
やっと、逢えたのに…。
目眩でガンガンする頭をおさえて、レオとレイに 「シェリーと話したいからしばらく二人にして欲しい」と言うと
「わかった。本来は良くないが、扉もしめていく。終わったら侍従に伝えてくれ」
と、扉を閉めてくれた。
そして応接室にはシェリーと二人だけになった。




