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番の瞳  作者: 言葉
第八章:望む未来への道程
315/641

315.匂いの半分

8/19

315.316話でクラウスとフリードがごっちゃになってしまってたので、修正&加筆しました。そしたらちょっと長くなりました…すみません!

あと、応接室に執務机はないのでは、と気付いたので直しました。(そしたら少し本文長くなりました)


「報告は以上です」


ハーレイは自室で昼食を食べると言って執務室から下がり、寝室と続き部屋になっているリビングにいた。

反対の続き部屋である応接室と違って、完全なプライベートの部屋で、用途としては猫達とまったりする部屋ある。

しかし部屋の窓辺には執務机があり、なんともハーレイらしいリビングだった。

ハーレイはその部屋の、一人がけだがゆったりとしたソファに掛け、ジーンからの報告を受けていた。

足元に猫が1匹寝転がり、日が当たる出窓には3匹の猫が日向ぼっこをしていた。


向かいにはミカエルとクラウス、ミシェルを膝にのせたラングストンがおり、エヴァはいつも通り扉の横に立っていた。

フリードは騎士団の仕事が立て込んでいるためか、まだ来ていない。


「結界は上手く機能しているようですね」


ミカエルが隣のクラウスと目を合わせながら少し安堵の息を吐く。


「はい、解くには骨が折れそうだと言っておりました」


ミカエルに答えたジーンが、ハーレイの顔を覗き見た。


「殿下、何か気になる点が?」


「あ…ああ、うん…アリアがアンリエッタに『その名前で呼ぶな』と言ったのか?」


「はい、確かにそう言っておりました。私も気にはなったのですが、アンリエッタの声は聞こえないので…」


普段のアリアとアンリエッタの会話は、表に出ている人格というか、魂の声しか周りには聞こえないため、アンリエッタと会話をしていると知らない者から見れば、只管独り言を言う怪しい人物にしか見えない。


「…そうだな」


ジーンとハーレイのやり取りを見て、エヴァがハーレイの座るソファに歩み寄ろうとした所で、ようやくフリードが来てソファに掛けた。

ジーンが先程、口頭で報告しながら同時にフリードに念話で同じ内容を伝えていたため、説明は必要なかった。

喋りながら念話を送り、しかも口頭と念話を別で会話までこなせる、という離れ業をサラッとこなしているジーンだが、彼以外に出来る者など聞いたことがない、と本人に言ったら、『えっ?普通出来ないんですか?』と、かなりショックを受けていた。

おそらくこの世にジーンしかいないだろう。素晴らしい才能だ!と褒めたつもりが、『変人みたいで凹みます。密偵の中で自分だけは普通だと思ってたのに』と、本気で涙目になっていた。


ハーレイがそんな事をふんわりと思い出していると、エヴァと目が合った。

そういえば、先程何か言いかけていた気がする。

目が合ったエヴァが、再びハーレイの側に寄って口を開いた。


「殿下、おそらく、殿下が先程考えていた事は正しいかと」


皇族らしく、滅多に動揺を見せないハーレイの瞳が見開いた。


「イ…エヴァ、どういう事だ?」


イヴと呼びそうになったクラウスに、エヴァが自分から話していいものか、という迷いから微妙な顔を向け、徐に口を開いた。


「もしかしたらですが、アリア様の中にいる魂は、アリア様ではないかもしれません。それが誰のものなのかは…まだわかりませんが、おそらくアンリエッタがアリア様の中に入る前の名前を呼んだのでしょう。魂を入れ替える等というのは今の世で出来る方はほぼ居ません。それをやったのもアンリエッタかと」


「なっ…そんな事ができるのか!?」


エヴァの説明に、ミカエルが驚愕して声を荒らげた。


「…エヴァ、もしかしてその魂に心当たりがあるのではないか?」


「…」


クラウスに問いかけられたエヴァが、口をつぐんでハーレイをみた。

ハーレイも口をきつく結び、少し苦悩の表情をして俯いている。

少しの沈黙が訪れたその時、ラングストンがぼそりと呟いた。


「…魂の匂い」


「「え?」」


ミカエルとクラウスが同時にラングストンに視線を向け、声を揃えた。


無意識に零した独り言で視線を集めてしまったラングストンは「アリア様に入っている方の魂のことでは無いのですが」と前置きをした上で、先程気付いた事を述べた。


「アンリエッタが器としていたミモザという少女の身体に、弱々しい魂が保管されていたのですが、その魂から陛下の匂いがする、と、妖精の女王様が仰っていたのです。その時私は陛下のお身内の方の子供や、隠し子等を探しましたが、対象になる少女は居ませんでした。しかし女王様が残り半分の匂いに覚えがあるが、思い出せないと仰っていたのを聞いたのですが、ノア様の話だと女王様は数百年、人間界に降りたことはなく、人と関わってこなかった、と」


ここまで一気に話したラングストンは、喉を潤す為に少し冷めた紅茶を飲んだ。

ラングストンの話を聞いていたクラウスとミカエルは、まだ要点が分からずに困惑した顔で話の続きを待った。


「女王様がその魂の匂いに気付く前、アンリエッタに操られたアリシア様が妖精界に乗り込み、女王様と対峙したのです。そしておそらく、女王様の思い出せない匂いというのは…アリシア様の魂の匂いではないかと」


「ちょ、ちょっと待て。陛下とアリシア様の匂いの魂と言う事は…嘘だろ?」


言葉遣いを正すのも忘れたミカエルが頭を抱え、隣のクラウスは瞠目しながらハーレイとエヴァの顔を交互に見て、顔を青ざめさせていった。


ホントに長かったよー。

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