31.レイ
禁書保管庫から出てからは先程の庭園ではなく、
防音の魔法具が備え付けられているという応接室に案内された。
禁書保管庫が少し肌寒かったので、
シェリーは出された紅茶のカップを手で包み、暖めながら尋ねた。
「セシル様、レイ様というのはどのような方なのですか?」
「本名はイースレイ・ウェイバー。彼は魔法省にいる筆頭魔法士で、周りには賢者とか呼ばれてる凄い人。性格はちょっと・・・変わった人、かなぁ」
変わった人?
よく分からなくて首を傾げてると王太子様が補足してくれた。
「レイは流石賢者と呼ばれるだけあって、魔法知識もその他の知識も凄いんだけどかなりの人間嫌いで、普段全く喋らない。でもレイが気に入った人には物凄く人懐っこく話しかけてくる。二重人格並に別人になるよ」
「そうそう。まぁ、シェリーは多分大丈夫と思うけど」
「気に入って頂けるか不安ですけど、頑張ります」
気に入られるまではいかなくても、
せめて会話になるよう頑張ろう・・・。
「セシル、多分レイが来るまで時間があるから、さっきの夢の話を聞かせてくれるか」
「ああ、話そう」
時折私に確認を取りながら、セシル様が私の夢の内容を王太子様に話してくれた。
「魂を削って行使する力・・・だと?なんだそれは。禁術か?」
セシル様の話を聞いた王太子様は顔を歪めた。
声色からも不快感が滲み出ている。
「わからない。1度きりなのか、何度も行使する力なのかも、1度行使した場合の魂の消費量もわからない。そもそも、魔力でなく魂を使う魔法なんて私は聞いたことがなかったから・・・番の認識も、魂が少しでも削れたら不可能なのかすらわからないんだ」
「あの夢の続きをもう少し見れれば何かわかりそうだったのですが、途中で夢が切り替わってしまって」
「ああ・・・そうだ。レオ、シャウゼンに精霊の湖ってあったか?」
「シャウゼンに?聞いたことないな」
「シェリーが精霊の湖にいる夢を見た。勿論、クラウド領のではない」
・・・精霊の湖?
「セシル様、あれは精霊の湖というのですか?」
「そうか、シェリーは気絶してたからクラウド領の精霊の湖は見てないんだったね。シェリーの話を聞く限りは精霊の湖で間違いないと思う。一応、このシュヴァルツヴァルト大陸ではクラウド領だけに存在すると言われているんだよ」
私が倒れていた場所が精霊の湖という場所なのか。
セシル様と私の話を聞きながら、王太子様は考え込んでいる。
そこに侍従の方が来客を告げた。
「レオナルド殿下、魔法士のイースレイ・ウェイバー様がいらっしゃいました」
「通せ」
「失礼致します」
部屋に入って来られたのは、黒地に銀糸で刺繍を施されたローブを纏った細身の男性だ。
藍色の長い髪を邪魔そうに流している。
前髪も長いせいで、顔は半分隠れていた。
「お久しぶりでございます。お待たせしてしまい申し訳ありません」
「いや、大丈夫だ。私こそ呼び出してすまない。先に紹介しておくが、こちらの令嬢はセシルの番のシェリー嬢だ。シェリー嬢、彼が筆頭魔法士のイースレイだよ」
「おぉ、セシル君の番とは!お初にお目にかかります。ご紹介にあずかりましたイースレイ・ウェイバーと言います」
「ご丁寧にありがとうございます、シェリーと申します。お忙しいのに御足労頂きありがとうございます」
挨拶を交わすと、イースレイ様は向かいのソファーに座った。
先程の話からすると、お二人はイースレイ様にかなり気に入られている様子。
「久しぶり、レイ。忙しいのにありがとう」
「お久しぶりですね!セシル君には魔眼の研究と番の研究でお世話になってますし、なによりセシル君の魔法は美しいですからいつでも歓迎ですよ!そしてようやく番を見つけられたのですね!・・・・ん?・・・おおお?これは!?」
何故だかイースレイ様にとても見られている気がするし、テーブルに身を乗り出して少し距離が近いような。
「レイ、近い」
セシル様がイースレイ様の肩をガシッと抑えて止めてくれた。




