29.記録①
「それにしてもこれでお前の憂いも晴れるといいな。セシル、シェリー嬢を逃がすなよ」
「あたりまえだ。ていうかあんまりじろじろ見るな」
「くっくっく、セシル、お前のそんな顔初めて見たぞ?これはレアだな〜いいもの見せてもらったよ、シェリー嬢に褒美をやらねば」
「うるさい。とりあえず見るな」
「あの、セシル様の憂いとは?」
シェリーが気になったのかレオに問いかける。
「ああ、セシルはクラウド公爵家の血筋ってのもあって、番を探してたのは有名な話なんだけどね、爵位は公爵、頭脳明晰、おまけにこの顔だろう?令嬢がほっとくわけない。お近づきになろうとする令嬢は昔から数え切れない程いるんだよ。パーティーとか出る度にこいつの周りは令嬢だらけ。王太子の私より人気なんだよ?
学院にいた頃なんてもっと凄くて、毎日逃げ回ってたよ。魔法で瞳を緑にして、『私がセシル様の番ですわ!』ってやってきた令嬢もいたな。セシルの目は変わってないのに。番の事も知らないでそんな事言ってたから笑ってしまったよ」
「レオ、その辺にしてくれ・・・」
思い出すだけで頭が痛いし、
シェリーにあまり聞かせたくない。
「やはりセシル様は人気があるのですね・・・」
シェリーが俯いてしまった。
「シェリー、学院はもう卒業したし、私は今まで誰とも付き合ったことは無いからね?」
「シェリー嬢、何も心配することは無いよ。どうやらセシルの好みはシェリー嬢がどストライクみたいだし、事実、君に心底惚れてるようだし」
「レオ!」
「ん?間違いないだろ?見てればわかる」
「・・・それは、まぁ、そうだが」
「う、あ、うぅ〜」
シェリーが耳まで赤い。
この状態のシェリーを他の人に見せたくないんだが。
「ほら、レオ手が止まってるぞ。無駄口叩かず目的の資料を探せ」
「くっくっく、わかったよ」
その後もレオはしばらく笑っていた。
時折雑談を挟みながら2時間程読み漁ったが、
目的のものは見当たらない。
「無いな。やはり禁書か」
「そうだな。レオ、案内頼めるか」
「ああ、ついてこい」
広い王宮の廊下を進んで、地下への階段を降りた。
そこに古びた扉があった。
レオは鍵を取り出すと、ガチャリ、と鍵を開けた。
そして扉に手をかざし、魔力を通した。
不思議そうに見ているシェリーに気づき、レオが説明してくれた。
「ここは王家や国にとって大切な資料が保管されている。だから前もって登録してある者の魔力を通さないと開かないんだ。鍵は予備だよ」
そして見た目より重厚そうな扉をくぐり、禁書保管庫に入った。
部屋を進んで行くと、魔法具の照明が灯っていく。
「番に関する資料は・・・確かあの辺のはずだ」
レオが立ち並ぶ本棚の一角を指さし、
3人でそちらへ向かった。
中には古語で書かれたものもある。
私とレオは古語を読めるが、シェリーはどうだろう。
「シェリー、このタイトル読める?」
「あ、はい『聖獣ミリティア』でしょうか」
どうやら読めるようだ。
言語に関する記憶も問題ないということか。
「セシル、それ古語だろ?シェリー嬢は古語が読めるのか?記憶を無くしていると聞いたが」
「シェリーの記憶喪失は少し普通と違うんだよ。この世界の成り立ちというか、国があり、王家や皇家があり、魔法があって魔獣がいる、というような・・・基本的な記憶は問題なくて、それ以外だと、おそらく記憶を無くす前に学んだ内容を覚えているんじゃないかと思う。その中に古語があったんだろう。あとは、貴族の礼儀作法とかも完璧に覚えてるよ。まぁ、その貴族社会の面倒なルールとかは忘れてるけど、そんなのは忘れてても私がいれば困らないし。シェリー自身に関わる記憶は綺麗さっぱり消えているんだけどな」
「なるほどな。それは確かに普通の記憶喪失とは違うようだ。手紙に書いてあった、お前が故意的に消されたと考えるのも頷ける。よし、古語も問題ないのであれば、ここにあるものを片っ端から調べるぞ」
「シェリーは棚の上の方は届かないだろうから、この下のをお願い」
「わかりました」
こうしてしばらく禁書保管庫に篭った。




