28.王妃と王太子
私はちらりと母と目を合わせた。
おそらく王妃はシェリーの容姿で気付いたのだろう。
その異様な空気を読んでか、王太子のレオナルドが前に出た。
「初めましてシェリー嬢。セシルから聞いていると思うが、私はレオナルド・フォン・リンデンバウム。
一応、王太子だよ。それにしても君みたいな美しい姫を番に持てるとはまったく羨ましい。通りで休暇届けをねじ込むわけだね。」
「え、あ、申し訳ありません・・・」
「シェリー、謝ることは無いよ。王太子様、それについては後程。」
余計な事は言うなと目で合図すると、レオナルドは愉快だと言わんばかりにくつくつと笑いながら、王妃に小声で囁いた。
そこでようやく、王妃が我に返った。
「あ、ごめんなさいね!ようこそシェリーさん。あんまりにも美しいから見蕩れてしまったわ。あなたの事は色々オリビアから聞いているけど、大変だったわね・・・そしてセシル、あなたが番と出逢えて本当に良かったわ。ぜひ今日はゆっくりしていって。さぁ、座って頂戴!お茶を飲みながら話を聞かせて」
そうしてようやく5人でのティータイムが始まった。
案内された席に着くと、それぞれに紅茶が用意された。
「セシルはコーヒーの方が良かったか?」
「いえ、紅茶で。ありがとうございます」
「さて、今日は王家が保有している記録を見に来たのよね。禁書以外を用意させているから持ってこさせるわ」
王妃が仕えていた侍女に指示を出すと、侍女は王宮に下がって行った。
「ええ、ありがとうマーガレット。公爵家の記録には無くて困ってたから助かるわ。ようやく見つかったセシルの姫だから」
「そうよねぇ〜うふふ、セシルが嬉しそうで何よりだわ」
「お、王妃様、あまりからかわないで頂けますか・・・」
「だってこぉ〜んな小さい頃から探してたじゃない?『僕は番を見つけて世界一幸せにするのです!』って。あの頃のセシルは可愛かったわ〜」
そう言いながら王妃は膝の辺りに手を翳して、
これくらい、と示している。
「母上、それでは今のセシルが可愛くないみたいですよ。可愛くないですけど」
「あら、今でもレオナルドよりは可愛げがあるわよ」
「でもセシルはレオナルドと違って愛想がなくなっちゃったと思うわ。シェリーちゃんには別だけど」
何やら3人で私をネタに言い合いを始めた。
私の横ではシェリーが「セシル様の小さい頃・・・」とか呟いている。
「私を弄るのはやめてください。話を戻しましょう」
「あら、そうね、ごめんなさい。ふふ」
「そうね。そうだわマーガレット、実はシェリーちゃんが新しい記憶を夢で見たの。それについても話したくて。セシル達が記録を見てる間に話せるかしら」
王妃は母がシェリーのいない所で話したいというのを察してくれたようで
「そうなの?わかったわ。レオナルド、ここは任せるわ。終わったら禁書保管庫に案内お願いね」
「わかりました」
短くやり取りを済ますと、母上と王妃は城に向かって行った。
入れ違いに、本やら巻物を沢山載せたワゴンを持った侍従が来た。
「かなりの量だから手分けするか」
「レオ、仕事はいいのか?」
「休んでるお前が言うか!?なんてな。今日の分はもう終わらせたから安心しろ」
「さすが王太子様。感謝する」
そんなやり取りを、シェリーが不思議そうに眺めているのに気付いた。
「シェリー、どうかした?」
「あ、いえ、王太子様とセシル様がお友達のように見えたもので・・・」
「ああ、私とセシルは所謂幼なじみのようなものだから、間違いではないよ」
「レオは公の場以外で敬語を使うなってうるさいんだよ」
シェリーはそうなのですね、と私達に微笑んだ。




