22.シェリー③
話し合いを終えたセシルはシェリーの部屋へ向かっていた。
3人での話し合いでは、
彼女がシェリル皇女であるという確実な証が出るまで、彼女には伝えないという事で纏まった。
セシルとしても、まだ体調も万全ではない彼女に
不安要素を与えたくなかった為、
両親の方からシェリーにはしばらく内密にと言われた時はほっとした。
もし、彼女が彼女自身の事を思い出したら
セシルの前から居なくなってしまうのではないか?
番と判明してから、いや、おそらく彼女が目覚めて
記憶喪失というのが分かってから
セシルはずっと、その不安を抱えていた。
『君の心を貰えるように努力する。だから、もし記憶が戻っても、もう少し私のそばにいて欲しい』
セシルがそう言った時、彼女はそばに居ると言ってくれた。
セシルはその言葉を信じている。
しかし、彼女の気持ちとは別に、
レイア皇妃の娘である彼女は、皇家という事以外でもシャウゼンでの存在は大きいはずだ。
医師の見立てではシェリーに病気は無い。
それをシャウゼンは病気として公から隠していた。
その理由次第では連れ戻される可能性がある。
あとは、彼女がどうやって公爵領に来たのか。
なぜ記憶を失ったのか。
なぜ番の証が触れた時のみ発現するのか。
母が言っていたが、確かにやる事、調べる事が山積みだ。
でも、苦ではない。
彼女を知れるのならば、寧ろ嬉しいとすら感じる。
考えながら歩みを進めるうちに、彼女の部屋に辿り着いた。
今日も彼女が少しでも安眠を得られるようにしなければ。
高揚する心を深呼吸して落ち着かせ、
コンコン、とノックし、声をかける。
「シェリー、私だけど、入っていいかな」
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コンコンとノックが響く。
それに継いでセシルの優しい声がした。
シェリーの心臓が少し跳ねた。
寝衣の上に薄手のガウンを纏って、返事をする。
「はい、どうぞ」
ガチャリとドアを開けて入ってきたセシルは
寝衣姿のシェリーを見てから、時計に目を移した。
「ごめん、父達と話してたら少し遅くなってしまった」
整った眉尻を下げてそう言うセシルの顔は、少し赤い。
ご両親に付き合ってお酒でも飲んでいたのだろうか。
「いえ、いつもはもう少し遅くに寝る支度をして貰っていましたから、セシル様が遅かったわけではないですよ」
シェリーがそう言うと、良かった、と言って向かいのソファーに座った。
しかし、少し距離が縮んだ彼からは、お酒の匂いはしない。
はて?と首を傾げるとセシルと目があった。
「ん?どうしたの?」
「あ・・・セシル様のお顔が少し赤いので、お酒でも飲まれたのかと思ったのですが、お酒の匂いはしないなぁと思いまして」
「あ〜、なるほど。ははは、酒は飲んでないよ。もし飲んでも、私はほとんど酔わないし顔にも出ない。」
「そうなのですね。え、それでは熱でもあるのですか?大丈夫ですか?」
急に慌て出すシェリーを見つめる目に、甘さが増す。
「いや、赤いのは多分、君のせい。」
「へっ?」
「領にいた頃は、私が夜部屋に来た時はもうベッドに入ってだだろう?だからあんまり寝衣姿はちゃんと見たこと無かったんだけど・・・綺麗だなと思って」
「っっ・・・」
シェリーは恥ずかしさにガウンの前をぎゅっと握り、耳まで真っ赤にして俯いてしまう。
「綺麗でもう少し見てたい気もするけど、さすがにこのまま見てるのは私の方が色々マズイから、そろそろベッドに入ってくれるとありがたいかな」
シェリーはセシルの言葉にびっくりして顔を上げ、コクコクと頷くと、急いでベッドに潜った。




