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番の瞳  作者: 言葉
第一章:出逢い
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22.シェリー③

話し合いを終えたセシルはシェリーの部屋へ向かっていた。


3人での話し合いでは、

彼女がシェリル皇女であるという確実な証が出るまで、彼女には伝えないという事で纏まった。


セシルとしても、まだ体調も万全ではない彼女に

不安要素を与えたくなかった為、

両親の方からシェリーにはしばらく内密にと言われた時はほっとした。



もし、彼女が彼女自身の事を思い出したら

セシルの前から居なくなってしまうのではないか?

番と判明してから、いや、おそらく彼女が目覚めて

記憶喪失というのが分かってから

セシルはずっと、その不安を抱えていた。


『君の心を貰えるように努力する。だから、もし記憶が戻っても、もう少し私のそばにいて欲しい』


セシルがそう言った時、彼女はそばに居ると言ってくれた。

セシルはその言葉を信じている。

しかし、彼女の気持ちとは別に、

レイア皇妃の娘である彼女は、皇家という事以外でもシャウゼンでの存在は大きいはずだ。

医師の見立てではシェリーに病気は無い。

それをシャウゼンは病気として公から隠していた。

その理由次第では連れ戻される可能性がある。

あとは、彼女がどうやって公爵領に来たのか。

なぜ記憶を失ったのか。

なぜ番の証が触れた時のみ発現するのか。

母が言っていたが、確かにやる事、調べる事が山積みだ。

でも、苦ではない。

彼女を知れるのならば、寧ろ嬉しいとすら感じる。


考えながら歩みを進めるうちに、彼女の部屋に辿り着いた。

今日も彼女が少しでも安眠を得られるようにしなければ。

高揚する心を深呼吸して落ち着かせ、

コンコン、とノックし、声をかける。


「シェリー、私だけど、入っていいかな」


-----------------------------


コンコンとノックが響く。

それに継いでセシルの優しい声がした。

シェリーの心臓が少し跳ねた。

寝衣の上に薄手のガウンを纏って、返事をする。


「はい、どうぞ」


ガチャリとドアを開けて入ってきたセシルは

寝衣姿のシェリーを見てから、時計に目を移した。


「ごめん、父達と話してたら少し遅くなってしまった」


整った眉尻を下げてそう言うセシルの顔は、少し赤い。

ご両親に付き合ってお酒でも飲んでいたのだろうか。


「いえ、いつもはもう少し遅くに寝る支度をして貰っていましたから、セシル様が遅かったわけではないですよ」


シェリーがそう言うと、良かった、と言って向かいのソファーに座った。

しかし、少し距離が縮んだ彼からは、お酒の匂いはしない。

はて?と首を傾げるとセシルと目があった。


「ん?どうしたの?」


「あ・・・セシル様のお顔が少し赤いので、お酒でも飲まれたのかと思ったのですが、お酒の匂いはしないなぁと思いまして」


「あ〜、なるほど。ははは、酒は飲んでないよ。もし飲んでも、私はほとんど酔わないし顔にも出ない。」


「そうなのですね。え、それでは熱でもあるのですか?大丈夫ですか?」


急に慌て出すシェリーを見つめる目に、甘さが増す。


「いや、赤いのは多分、君のせい。」


「へっ?」


「領にいた頃は、私が夜部屋に来た時はもうベッドに入ってだだろう?だからあんまり寝衣姿はちゃんと見たこと無かったんだけど・・・綺麗だなと思って」


「っっ・・・」


シェリーは恥ずかしさにガウンの前をぎゅっと握り、耳まで真っ赤にして俯いてしまう。


「綺麗でもう少し見てたい気もするけど、さすがにこのまま見てるのは私の方が色々マズイから、そろそろベッドに入ってくれるとありがたいかな」


シェリーはセシルの言葉にびっくりして顔を上げ、コクコクと頷くと、急いでベッドに潜った。

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