21.シェリー②
母の言葉に セシルは頭をフル回転させ、
もっともな疑問に行き着く。
「しかし母上、シェリル皇女はなんらかの病気で城に籠っておられたかと思うのですが。」
セシルはシャウゼンの皇女を婚約者に持つ
王太子レオナルドの補佐をしている関係で、
シャウゼンに関しては情報収集を欠かさなかった。
しかし、そのシャウゼンで唯一謎に包まれているのが
第一皇女シェリルだった。
幼い頃から病気がちだったシェリル皇女は
7歳頃からほぼ人前に姿を現さなくなり、
17歳の現在に至るまで、病気療養とされている。
そんな彼女の幼い頃の評判はすこぶる良く、
当時10歳だったレオナルドの婚約者候補に名前が上がった事があったらしいが、その後に5歳の第二皇女のアリアが婚約者におさまった。
そんな事を思い出していたセシルに、父が答えた。
「公ではそうなっているし、王家や公爵家の調べでもそうだと判断されていた。しかしな、お前はまだ小さかったから覚えていないかもしれないが、レイア皇妃が亡くなった時に少し噂が広まったのだ。」
「噂・・・ですか?」
「ああ。病気による死亡と発表されたのだが、亡くなる数日前にシャウゼンの端にある街の辺りで、レイア皇妃を見たという者が現れた。それも1人ではなく、数人の目撃者がいたらしい。」
それは確かにおかしい。
命に関わる病気であれば、帝都から離れた街にいるはずが無い。
「それが事実であるのならば・・・レイア皇妃は生きていると言うことですか?」
「そうなのではないかと、当時噂になったのだ。皇妃の葬儀でも、病で肌が変色しているとかで、遺体を見た者はいなかったそうだ。」
なるほど、それは噂になるわけだ。
しかし、レイア皇妃が生きていたとして、シェリル皇女にどう関わってくるのか。
険しい表情で父を見ると、父は分かっている、という表情で、続きを話出した。
「レイア皇妃の葬儀から数年たって、皇妃の死にまつわる噂も消えた頃に
今度はレイア皇妃によく似た女性が幼子と一緒に暮らしているという噂が流れた。」
「・・・その噂の真偽は?父上のことですから確かめられたのでしょう?」
「ああ。当時シャウゼンにいた密偵に探らせた。しかし、母娘が暮らしていると言われてた街で2人は見つからなかった。それからは目撃例もない。」
ここまで話を聞いたセシルは
頭の中で父の話を纏めた。
シェリル皇女を産んでから体調を崩し、7年後に亡くなったとされたレイア皇妃が実は生きていた。
それから数年後に、レイア皇妃は娘のシェリル皇女と市井に隠れ住んでいた。
これはおそらくシェリル皇女が公に出なくなった7歳からの話だろう。
そして今現在、レイア皇妃がどこにいるのか、生きているのかすら不明。
娘のシェリル皇女は何かのトラブルにより記憶喪失になった状態で、クラウド公爵領で発見された。
セシルは ふぅ、と一つ小さく息を吐くと
父の目をまっすぐ見て、告げた。
「シェリーがシェリル皇女だとしても、私は諦めるつもりはありません」
決意を込めた息子の顔を見て、
目の前の2人はふっと緊張を和らげた。
「勿論だ。私もオリビアも、セレナの様にお前を失いたくなど無いからな。」
セレナ。それは幼いまま儚くなった最愛の妹の名だ。
「お父様の言う通りよ。明日、シャウゼンについて王妃様に聞く予定よ。他にも私達に出来ることは何でもするわ。あなたは出来るだけシェリーちゃんに付いていてあげなさい。」
「勿論です。」
言われずとも、そのつもりだ。
王太子補佐の仕事もあるが、レオナルドには悪いが
私には彼女の方が大事だ。




