20.シェリー①
夕食後、シェリーはセシルに連れられて
邸の書庫に来ていた。
領地にいた時に診察してくれていた老齢の医師から、歴史書等を読んだら、出身国の記憶が戻るかも と、アドバイスを貰ったからだ。
案内された公爵家の書庫は、書庫というには広すぎた。
「セシル様、ここは、書庫ではなくて図書館では?」
苦笑いでそう聞くと、
「ははは、確かに。・・・そういえば、シェリーはそういう、場所とかの名前はちゃんと記憶が残ってるよね。」
セシルに言われて、そういえば、と頷いた。
「言われてみれば、私自身の事とか家族の事のような、身近な存在は何一つ覚えていないのですけど、固有名詞や、魔法や魔物の存在なんかは覚えていました。何でしょう・・・?」
そう言って頭をコテンと掲げて、思案し始める。
「うーん・・・。普通の記憶喪失とは、少し違うのかもしれない・・・。明日、城の帰りに魔法省に寄ってみようか。」
「まほうしょう・・・ですか?」
「あ、魔法省は覚えてないのか。ああ、そうか、シャウゼンにはないからかな。あちらだと確か、魔術師団だね。」
魔術師団なら聞き覚えがある。
ふと、シャウゼンの名称だけ聞き覚えがあると言うことは、
やっぱり私はシャウゼンで生まれた?
と思ったが、セシルの中でもそれは確定してるようだったので、とりあえず 今は置いておくことにした。
「魔術師団ならわかります。こちらでは魔法省なのですね。・・・私の記憶喪失には魔法が関わっているということでしょうか」
「うん、そういう魔法があるかも含めて、訪ねてみよう」
「わかりました。セシル様、色々、ありがとうございます」
「良いんだよ、私の為でもあるから」
「セシル様の・・・?」
「うん。さ、歴史書はこっちだよ。」
セシルは詳しく話すつもりはないようで、
歴史書が並ぶ本棚へと歩いていき、
シェリーは慌てて後を追った。
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何冊かの歴史書をシェリーの部屋へ運んだ後、
セシルは両親に呼ばれていた。
「父上、大事な話とはシェリーの事でしょうか」
セシルはソファーに座るとすぐに、父であるジェフに問いかけた。
「ああ。シェリー嬢の身元に心当たりがあるんだが、それについて明日オリビアが王妃様に確認する前に、お前に話しておいた方がいいと思ってな」
父の、身元の心当たりがあるという言葉に、
セシルは身を乗り出した。
「シェリーの身元とは!?誰です?」
その問に答えたのは、母オリビアだった。
オリビアは、
これはあくまでも私達の予想よ、と前置きしてから、徐に話出した。
「シャウゼンの現皇妃のアリシア様が2代目の皇妃様なのは知ってるわよね。」
セシルは、ええ、と頷く。
アリシア皇妃については、
王太子が零す愚痴にたまに出てくるので知っている。
「じゃあ、1代目の皇妃様は分かる?」
セシルは母の問に記憶を手繰り寄せ、答える。
「たしか、レイア皇妃だったかと記憶してますが・・・?」
「ええ、そうよ。そのレイア様なのだけど、生前は妖精皇妃と言われるほど美しい方だったのだけど」
妖精と聞いて、セシルの頭に浮かぶのはシェリーだ。
「レイア様のシンボルがね・・・若草色の美しい髪だったの」
母の言葉で、セシルは息を飲んだ。
「は、母上、それでは・・・シェリーは・・・まさか」
母は大きく頷くと、
「ええ、おそらくレイア様の娘である第一皇女・・・シェリル・フォン・シャウゼン第一皇女よ。」




