18.この出逢いは奇跡
「シェリー、私だけど入ってもいいかな?」
ドアの向こうからセシルの声がして、
シェリーは思わず振り返った。
「は、はい!」
クロエがドアを開けると、ラフなシャツに着替えたセシルが立っていた。
その服装は領地でよく見ていた服装なのに、
何故か今までよりかっこよく見えて、
シェリーは顔が熱くなるのを感じ、両頬に手を当てた。
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「セ、セシル様、どうぞ」
セシルは部屋に入るとぐるりと部屋を見渡して、
立ったままのシェリーの前まで歩を進めた。
「部屋はこちらに着くまでに準備させたのだけど、気に入って貰えただろうか」
「は、はい、とても!ありがとうございます。その・・・嬉しいです」
頬を赤らめて答えるシェリーが可愛くて、抱きしめそうになるのをぐっと堪える。
(私はここまで感情で動きそうになる人間だったか・・・?それとも、番だからか?いや、多分彼女が可愛いせいだ。うん)
セシルは一人納得した。
赤く染った頬に当てていたシェリーの手を取り、庭に散歩に誘った。
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公爵家の庭は、正面から見るとシンメトリーに見えたが、
裏に回ると色とりどりの花が自由に咲き誇っていた。
「私から誘っておいてなんだけど、疲れてないかい?」
そう気遣ってくれたセシルに、シェリーは頭をふり、
大丈夫と伝えた。
「向こうにガゼボがあるからそこまで歩こうか。シェリー、腕の方がつかまりやすいかな?」
セシルはそう言うと、少し後ろから歩いていたシェリーに腕を出して、エスコートしてくれた。
辿り着いたガゼボは六角形をしており、色は白。
何かの蔓がからまり、可愛らしいデザインだった。
「気に入った?」
「はい、とても可愛いです」
ガゼボに添えられた椅子に座ったセシルが、
ポンポンと隣のスペースを手で叩き、
シェリーは少し照れながら、大人しくそこに座った。
「昔はここによく来てたんだけど、久しぶりに来たよ」
そう言ったセシルの横顔は、何故か少し悲しげにみえた。
「そんなに久しぶりなのですか?」
その問に、セシルは顔に少し影を落とした。
「うん、最後に来たのは妹がまだ生きてた頃だよ」
そう言うと、
ぽつりぽつりと話を始めた。
「子供の頃ここで、妹と遊んだんだ。妹も私みたいに始祖に近かったんだけど、特異体質で、魔素を永遠に吸い続けてしまう体質だった。その魔素に体が耐えられなくてね。父が妹の吸いすぎた魔素を魔法具に吸わせて減らしても、またすぐに魔素を吸収してしまうんだ。
妹が5歳の頃かな、妹の体が成長するにつれて魔力の器も大きくなって、ほんとに稀に体調のいい日が月に1度くらいあったんだ。そういう時はここで絵本とか読んだりしてたんだけど、それも長くは続かなかった。その妹もね、3歳になった頃には既に番を求めていたんだ。絵本に出てくる王子様みたいな番と出逢いたいって言ってたよ。」
妹を思い出しているであろうセシルの白銀の瞳は
悲しそうに揺れている。
「シェリーにはまだ話してなかったけど、番と誓いをたてると、魔力の器が増えて、さらに2人で魔力を補えるようになるんだ。だから、もし妹に番が見つかれば、増え続ける魔力が少しは安定するんじゃないかって、家族で探したんだけどね・・・結局見つからないまま、妹は亡くなった。魔素の吸収を抑える魔道具が作られたのは、その2年後だったかな。」
そこまで話すと、セシルはシェリーに顔を向け、
「妹の番は、3年かけて国中探しても見つからなかった。だから、私がシェリーと出逢えたのは奇跡だと思ってる」
そう言って、いつものように柔らかい笑顔で微笑んだ。
セシルの妹の話は閑話な感じで書くつもりだったのですが、2人を庭に出したあとの会話が思いつかず、ここで使ってしまいました。




