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番の瞳  作者: 言葉
第一章:出逢い
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18.この出逢いは奇跡


「シェリー、私だけど入ってもいいかな?」


ドアの向こうからセシルの声がして、

シェリーは思わず振り返った。


「は、はい!」


クロエがドアを開けると、ラフなシャツに着替えたセシルが立っていた。

その服装は領地でよく見ていた服装なのに、

何故か今までよりかっこよく見えて、

シェリーは顔が熱くなるのを感じ、両頬に手を当てた。


-----------------------------


「セ、セシル様、どうぞ」


セシルは部屋に入るとぐるりと部屋を見渡して、

立ったままのシェリーの前まで歩を進めた。


「部屋はこちらに着くまでに準備させたのだけど、気に入って貰えただろうか」


「は、はい、とても!ありがとうございます。その・・・嬉しいです」


頬を赤らめて答えるシェリーが可愛くて、抱きしめそうになるのをぐっと堪える。


(私はここまで感情で動きそうになる人間だったか・・・?それとも、番だからか?いや、多分彼女が可愛いせいだ。うん)

セシルは一人納得した。

赤く染った頬に当てていたシェリーの手を取り、庭に散歩に誘った。


-----------------------------


公爵家の庭は、正面から見るとシンメトリーに見えたが、

裏に回ると色とりどりの花が自由に咲き誇っていた。


「私から誘っておいてなんだけど、疲れてないかい?」


そう気遣ってくれたセシルに、シェリーは頭をふり、

大丈夫と伝えた。


「向こうにガゼボがあるからそこまで歩こうか。シェリー、腕の方がつかまりやすいかな?」


セシルはそう言うと、少し後ろから歩いていたシェリーに腕を出して、エスコートしてくれた。


辿り着いたガゼボは六角形をしており、色は白。

何かの蔓がからまり、可愛らしいデザインだった。


「気に入った?」


「はい、とても可愛いです」


ガゼボに添えられた椅子に座ったセシルが、

ポンポンと隣のスペースを手で叩き、

シェリーは少し照れながら、大人しくそこに座った。


「昔はここによく来てたんだけど、久しぶりに来たよ」


そう言ったセシルの横顔は、何故か少し悲しげにみえた。


「そんなに久しぶりなのですか?」


その問に、セシルは顔に少し影を落とした。


「うん、最後に来たのは妹がまだ生きてた頃だよ」


そう言うと、

ぽつりぽつりと話を始めた。


「子供の頃ここで、妹と遊んだんだ。妹も私みたいに始祖に近かったんだけど、特異体質で、魔素を永遠に吸い続けてしまう体質だった。その魔素に体が耐えられなくてね。父が妹の吸いすぎた魔素を魔法具に吸わせて減らしても、またすぐに魔素を吸収してしまうんだ。

妹が5歳の頃かな、妹の体が成長するにつれて魔力の器も大きくなって、ほんとに稀に体調のいい日が月に1度くらいあったんだ。そういう時はここで絵本とか読んだりしてたんだけど、それも長くは続かなかった。その妹もね、3歳になった頃には既に番を求めていたんだ。絵本に出てくる王子様みたいな番と出逢いたいって言ってたよ。」


妹を思い出しているであろうセシルの白銀の瞳は

悲しそうに揺れている。


「シェリーにはまだ話してなかったけど、番と誓いをたてると、魔力の器が増えて、さらに2人で魔力を補えるようになるんだ。だから、もし妹に番が見つかれば、増え続ける魔力が少しは安定するんじゃないかって、家族で探したんだけどね・・・結局見つからないまま、妹は亡くなった。魔素の吸収を抑える魔道具が作られたのは、その2年後だったかな。」


そこまで話すと、セシルはシェリーに顔を向け、


「妹の番は、3年かけて国中探しても見つからなかった。だから、私がシェリーと出逢えたのは奇跡だと思ってる」


そう言って、いつものように柔らかい笑顔で微笑んだ。


セシルの妹の話は閑話な感じで書くつもりだったのですが、2人を庭に出したあとの会話が思いつかず、ここで使ってしまいました。

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