12.番の証②
ここまで聞いたシェリーは、疑問を投げかける。
「その番の証が、この瞳という事ですか?」
母は一つ頷くと、シェリーの疑問に答える。
「今までの記録では、番と出逢うと、お互いの瞳が深緑に変わるとされているわ。2人みたいに触れなくても、お互いを認識した瞬間に色が変わるの。その時に、見えないけど抗えない魂の繋がりを認識するそうよ。祖父は、昔から知っていたような、強い繋がりを確信したって言っていたわ。」
クラウド公爵家の現当主である父のジェフは、婿である。
王家の血を引くオリビアの祖父は、幼なじみの妹が番であった。
その時の話を、子供の頃に祖父から聞いていたオリビアは
息子が番に出逢えるように、ずっと祈っていた。
祖父母は大変仲睦まじく、今でも仲がいい。
祖父母を思い出していたオリビアに、シェリーが問いかけた。
「あの・・・なぜ私とセシル様は、触れないと色が変わらないのでしょうか?」
最もな疑問である。
それがあったから、セシルもオリビアも、シェリーに話せなかったのだ。
「そこなのよね・・・。私が読んだ事のある記録にも
シェリーちゃん達の様な例は書かれてなかったし、セシルもこの邸にある書物を調べたみたいだけど、やはり見つからなかったそうなの。それで、王家に遺されている記録を調べてからシェリーちゃんに話すつもりだったのよ。昨日の時点ではセシルだけしか色が変わってなかったでしょう?」
シェリーはなるほどと頷いた。
改めて見るセシルの瞳は、元からその色であったかのような深緑。
その瞳を見ていると、なんとも表し難い感情が、
シェリーの中で渦巻く。
シェリーのそんな視線に気づいた様子のセシルが、深緑の瞳を柔らかくして見つめ返した。
その様子を見ていたオリビアが、2人に尋ねた。
「繋がりは感じる?」
オリビアのその問いに、2人は考え込んでいる。
「私の方は、時折強い繋がりのようなものは感じるのですが、聞いていたような繋がりかと言うと・・・断言は出来ません。ですが、今朝シェリーの目を見た瞬間から、昨日までと違う感情は芽生えたと感じてます」
セシルのその言葉に、オリビアはさらに問う。
「その違う感情とはなに?」
聞かれたセシルは、オリビアをまっすぐ見て
「愛しさです」
迷わずそう答えたセシルにオリビアは満足気に頷き、
その隣で真っ赤な顔でセシルを見上げている
シェリーに視線を移し、たずねる。
「シェリーちゃんはどう?」
ハッとオリビアに向き直ったシェリーは、
顔を赤らめたまま、また少し俯いて答えた。
「魂の繋がりというのはよく分からないのですが・・・セシル様の側は安心します・・・とても」
シェリーは、赤らめていた顔をさらに真っ赤にして、小声で答えた。
そんなシェリーを見つめるセシルも少し赤い。
2人の様子に満足したオリビアは、テレサに遅くなった朝食の用意を頼んでから、セシルに告げた。
「わかったわ。セシル、貴方はこれからしなければいけないことが沢山あるわ」
オリビアの言葉に、セシルは強く頷いた。
「わかっております」
2人の会話を眺めるシェリーは少し不安気にオリビアとセシルを眺めていた。




