11.番の証①
「シェリー、お願いがあるんだけど」
セシル様がシェリーの顔を覗き込みながら言う。
何故かセシル様は少し顔が赤い。
「多分だけど・・・君の瞳がここまで染まったのは、一晩中私と触れていたからだと思う」
そう言われたシェリーは、一気に顔が熱くなり、両手で顔を覆ってしまう。
確かに昨晩、眠ってしまったセシル様を横にならせ、手だけ触れた状態で眠りについた。
今朝目が覚めた時は、何故かセシル様の腕の中にいた。
ちなみに今は腕枕の状態。
「母にシェリーの瞳を確認して貰いたいんだけど・・・それまで手を繋いでいてもいい?・・・私も恥ずかしいのだけれど」
照れたような声色のセシル様を、シェリーが指の間からこっそりと見ると、頬を赤らめていた。
そんな彼の態度は、なぜだか酷く愛しくなる。
これが番という事なのだろうか・・・。
シェリーは恥ずかしくて、こくりと頷く事しか出来なかった。
セシル様はシェリーから離れないように手を繋いだまま、ベッドから器用に出た後、侍女を呼ぶベルを鳴らした。
待ってました!とばかりにやって来たクロエに、セシル様が母上を、と一言告げると同時に扉が開き、そこに笑顔の公爵夫人とテレサがいた。
「やっとお目覚めね。さぁ詳しく!」
ワクワクが止まらない!というような公爵夫人とテレサ、クロエと、何故か執事のレナードさんまでいた。
そっとセシル様を見ると、笑顔が引き攣っていた。
-----------------------------
「ホントだわ・・・少し元の色が見えるけど、ほとんど深緑ね・・・」
母はシェリーの瞳をまじまじと観察し、観察されているシェリーは相変わらず顔が赤い。
母の後ろでは、他の3人も おぉ、とかわぁ〜とか感嘆している。
「シェリーちゃんはセシルから、番の話は聞いた?」
シェリーは頷き、恥ずかしがりながらも
「私がセシル様の番、というのは聞きました。あと・・・その番がこの世に一人だけというのも」
そう答えた。
母は、私とシェリーが座るソファーの向かいに座ると
ゆっくり話し出した。
「この国、リンデンバウムの王家の始祖はね、古の聖獣の一人で、名をエイデン・リンデンバウム様と言うの。記録には白銀の龍のようだと書かれているわ。龍はこの世に産まれてから、その魂が繋がる一人の相手がいるらしいの。それを番と言うのだけど、その相手は必ずしも龍という訳では無いそうで、番が人間というのもよくあったらしいわ。エイデン様の王妃様は人間で、エイデン様の番だったの。」
ゆっくりと話す母の話を、シェリーは何一つ聞き逃すまいと聞いている。
その様子が嬉しくて、握る手に力が入った。
「そのエイデン様の子孫であるセシルは、生まれた時の見た目からも、かなり強くエイデン様の血が現れていたの。今は黒髪だけど、元は白銀だったのよ。」
それを聞いたシェリーは、驚きの目でセシルを見上げた。
老齢で黒髪から色が抜けて白銀のようになる事はあっても、白銀から黒髪は確かに普通ではない。
その様子を眺めながら、母は話を続けた。
「先祖返りと言われたセシルは、物心ついた頃にはエイデン様と同様に番を探していたの。普通貴族は幼い頃に婚約を結ぶのだけど、セシルに婚約者を探すと伝えた時にね、私には番が居るはずだから、婚約はしないって言われて驚いたわ」
コロコロと笑いながら昔の自分の事を話す母を見て、恥ずかしくなってしまう。
たしか、セシルがまだ5歳か6歳の頃の話だ。
その頃には既に、自分に番がいる確信があった。
番でもない令嬢と婚約など、考えられなかった。
「セシルは我が子ながら、子供の頃から結構モテたのよ。身分も公爵だしね。だから婚約者に立候補する令嬢は多かったのだけど・・・記録にはね、番と結ばれなかった子孫は寿命があまり長くなかったって残っているの。決められた婚約者と結婚した後に番と出逢ってしまって、泥沼離婚なんてのもあったらしいわ。だから、旦那様が陛下に話して、適齢期の内は婚約者を宛てがわない許可を貰ったのよ。現陛下も子孫だから、その辺は理解してくれたそうなの」




