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番の瞳  作者: 言葉
第二章:レイアの過去
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103.衣装の準備


自室に戻ったハーレイを待ち受けていたのは、城に勤める針子達だった。


「殿下にご相談がありまして」


年嵩の針子がそう言うと、後ろから大きめの箱を抱えた若い針子が3人入ってきた。

針子達は次々に箱を開けて中身を取り出し、並べていく。

ハーレイはその様子を眺めながら、年嵩の針子の相談とやらを待った。


「こちら、まだ途中ですが、再来月に隣国である式典に出られる際の、殿下の衣装なのです」


ハーレイは、そういえばそんな予定だったな、と思い出しながら、続きを促した。


「明日の立太子の儀での衣装がどうしても間に合わず・・・こちらの衣装であれば明日までに仕上げられそうなのです」


年嵩の針子の言葉に、ハーレイは なるほど、と何度か頷くと、


「うん、それでいこう。元々間に合うわけがないよなぁと思って心配してたんだよ。ところでこれ、とても素晴らしい出来だけど、まだ何か仕上げるところがあるの?」


思わずかけられた褒め言葉に、年嵩の針子が嬉しそうに若い針子達と顔を見合わせた。

そんな若い針子達も笑顔になっている。


「お褒め頂き光栄です、殿下。針子の仕事としては完了しております。後は防御などの魔術を込めるだけなのですが、フェルディナ様がお忙しくて・・・殿下の衣装に施す魔術ともなりますと、一介の魔術師では施せないのです」


「なるほど。なら僕がやろうか」


「え?殿下がですか?」


年嵩の針子と、その少し後ろに控えている若い針子達の口がポカンと空いている。

なんだか巣で餌を待っている小鳥の様に見えて、ハーレイはくすくすと笑ってしまった。


「いつも施してるのは具体的に何の魔術?」


問い掛けられた年嵩の針子が、我に返って慌てて口に手を当て、改めて答えた。


「通常ですと、魔法防御、魔術防御、物理防御の各種結界と・・・防塵・・・防水・・・でございま・・・す・・・嘘・・・」


ハーレイは年嵩の針子が上げていく魔術を聞きながら、次々と魔術を付与して行った。


「これでもう着られるのかな?」


またもや小鳥のように口を開けたままの4人に尋ねると、揃ってコクコクと頭を縦に振った。

今度はおもちゃを目で追う猫の様で、ハーレイはまたくすくすと笑う。


「さすが殿下でございますね・・・わたくし魔力が少ないので魔術には疎いのですが、この様に澱みなく魔術を付与されるのを初めて拝見致しました」


出来上がった衣装を自分に当てて確かめていたハーレイに、我に返った年嵩の針子が感嘆の声を上げる。


「そうなの?僕よりフェルディナの方が凄いんじゃないの?」


「殿下の方が素晴らしい魔力操作でございますよ」


ふいに、壁際から声がした。

振り向くとそこに居たのはヒルダだった。

ヒルダの言葉に、針子達がまたコクコクと顔を上下に振っている。


「殿下、隣国での式典用の衣装はこれから作りますので、何か色や装飾のご希望があればお伺い致しますが」


「隣国の式典も、これでいいんだけど」


年嵩の針子が今度はぶんぶんと顔を横に振りながら、「それはなりません!」と若干大きめの声で否定する為、仕方なくハーレイは幾つか好みの色等を伝えると、ようやく満足した針子達が下がって行った。


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