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番の瞳  作者: 言葉
第一章:出逢い
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1.悪夢

初めて掲載できるだけ書き進められた作です。

誤字脱字は確認してますが、あったらすみません!

私は逃げていた。

暗い、森の様な場所を。

履いていた靴はだいぶ前に無くした。

擦り切れた足からは

おそらく血が滲んでいる。

ドレスの裾は木々に絡まって擦り切れた。

もう、魔力もない。

息も苦しい。


後ろから赤い目が追いかけてくる。


もう、どこに向かって逃げているのかも分からない。


それでも逃げなければ──。




-----------------------------


「──リー、シェリー、大丈夫だ。目を開けて私の目をみて」


私はいつもの夢を見ていた。

もう治ったはずの傷に痛みを感じる。

今まで走っていたかのように息が荒い。

ゆっくりと呼吸を繰り返し、落ち着ける。

痛みも消え、呼吸が落ち着いた所で右手で私の手を優しく握り、左手で震えていた私の背中を摩る暖かい手の主を見上げた。

優しい緑がかった白銀の瞳。

その色に落ち着きを取り戻す。


「…セシル様、ありがとうございます。もう、大丈夫です」


ふう、と大きく息を吐く。


「まだ顔色が悪い…痛みは?」


「もう、治まりました。ありがとうございます」


「まだ夜明け前だからもう一度休んだ方がいい。けど、すぐに眠ったらまた夢を見てしまうかもしれないし、何か暖かい飲み物でも飲んでから休もうか」


セシルはそう言って隣室に侍女を呼びに行った。


シェリーと呼ばれる私は離れていった優しい温もりの彼を目で追う。


時計を見るとまだ夜中。

悪夢を見続けて今日でもう何日目だろうか。

今日もまた彼に迷惑をかけてしまった事に苦しくなった。



-----------------------------




それは遡ること数日前。


ここは王国リンデンバウムの公爵であるクラウド公爵家の公爵領の屋敷。


私は クラウド公爵領にある湖の傍で倒れていた所を保護された。


丸一日死んだように眠っていた私が目覚めたのは、柔らかな陽が差し込む公爵家の一室だった。

私が目覚めた事に驚いた様子の侍女が、慌てて2人の男性を連れてきた。

一人は白銀の瞳に艶やかな漆黒の髪を後ろで結んだ美丈夫で、名をセシル・クラウドと名乗った。

もう一人の老齢な男性は格好からして医師だと思われた。

セシルは心底安心した という顔で柔らかく微笑んで、「良かった」と一言いうと、横にいた老齢の医師に「お願いします」と診察を頼んだ。


診察を終えた医師は、ドレスから露出していたであろう部分に擦り傷、切り傷が多数と、アザが至る所にあるが、治癒魔法で治ると診断し、すぐに治してくれた。


治療を終えたタイミングで、セシル様が優しい笑みを浮かべ、「君の名前は?」と、そう尋ねてきた。


答えようとして口を開きかけた私は そこで愕然とする。


分からないのだ。

自分が誰なのか。

何者なのか。


名乗ろうとして開きかけた口を思わず両手で覆って、小さくカタカタと震える私の異変に、医師は怪訝な顔になっていく。

セシル様は私が寝かせてもらっていたベッドに腰掛けると、顔半分を覆っていた私の手をそっと取り、白銀の瞳を細くして、私に優しく笑いかけてきた。


「大丈夫、話してみて」


見つめ返した白銀の瞳が少し緑がかって見えた。

一瞬でその不思議な瞳に見入った私は

気づくと震えは止まっており、不思議と落ち着いていた。


「…思い出せないんです、名前が。それどころか、自分が何者なのかも分かりません」


それを聞いたセシルは一緒驚いたようだったが、すぐにまた微笑んで、「分かった」と、それだけ言った。


医師によると、記憶喪失は治癒魔法ではなおらないし、治せる魔法も聞いたことがないという。

記憶を失ったきっかけにもよるが、何か過去に触れたことのあるものや場所などに行けば、記憶は戻るかもしれない、と言われた。


セシル様の話によると、私が身につけていた物から、貴族であろう事は察せられたが、身元をはっきりと示せそうな物はなかったそうだ。

リンデンバウムの貴族で行方不明の令嬢などは居ないようで、クラウド公爵領の隣である隣国シャウゼンの令嬢かもしれないと、調べてくれると言われた。

何もかも忘れた私に両親の記憶はないが、セシル様が「ご両親が必死に探しているだろう」と、必ず家に返すと約束してくれた。

正直、何もかも忘れた私には帰りたいのかどうかも分からなかった。

ただなんとなく、セシル様の不思議な瞳にそれは伝えれなかった。



その約束をしてくれた夜、私は初めて悪夢を見た。

ひたすら逃げる夢。

そして私は叫び声を上げたらしく、部屋にいてくれたらしい侍女にゆすり起こされた。


昼間に治癒魔法で癒えたはずの傷が痛む。

今まで全力疾走してたかのように息が荒れる。

痛みと呼吸が戻らない私を見かねた侍女が、私の肩にショールを掛けてから部屋を飛び出していき、セシル様を連れてきた。

私の尋常じゃない様子をみたセシル様はベッドに腰掛け、苦しくて胸を抑えている私の手の片方を握り、そっと背中を摩った。


私の荒い呼吸を和らげるように。

痛みに震える体を暖めるように。


「大丈夫だ、私の目をみてゆっくり息をして」


彼は白銀の瞳で私の瞳を見つめながら、そう繰り返す。


セシル様の暖かさが体に染み渡るのと共に、痛みも呼吸も治まっていくのが分かった。


セシル様の顔は月に照らされていて、瞳は僅かに滲むように緑がかっていた。


「落ち着いた?」


ふと問いかけられて、我に返り、俯く。


「あ…はい…落ち着きました。申し訳ありません、こんな時間にご迷惑を──」


「気にしないで。何か悪い夢でも見た?」


そう問いかけられて、夢を思い出した私は一瞬強ばったのだろう、握られた手にほんの少し力が入った。


「…はい」


「どんな夢か、聞いても大丈夫?」


たかが悪夢と呆れることもなく、問いかけられる。


「暗闇で追われている夢…です。何か…黒くて赤い何かに…」


そこまで言って、あの赤を思い出してまた少し震える。


ふと、背中を撫でる手が止まった事に気づいた。


「大丈夫だから泣かないで」


言葉の意味が分からなくて顔を上げ、彼の瞳を覗き込むと、気のせいだろうか?

彼の瞳はさっきよりさらに緑がかって見えた。


私の背中に当てていた手を、そっと私の頬に触れ、水滴を拭う。


そうか、私は泣いていたのか。



拙すぎて目眩がー。

まだ文体が決まってないので、後々修正するかもです。

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