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4 オーウェンの願い

オーウェン視点です。




退屈だ。

退屈すぎて腐りそうだ。


ああでも明日、僕の婚約者と初面会する事になっている。

それはそれで面倒臭いけど、親が決めた相手だから何も逆らえない。


女はみんな、少し愛想を振りまいただけで簡単に落ちる。

そういうつまらない女じゃないと良いけど、期待はしないでおくよ。



***




ユリア・ローゼンハイム

彼女との面会は期待以上に楽しめた。

一体どんな馬の骨がやって来るのかと思ったが、彼女と目が合った瞬間、僕の心はいとも容易く奪われてしまった。


彼女の瞳はルビーの様に美しかった。でも彼女の瞳には希望という光が映ってなかった。輝いていたらきっと彼女は、もっと美しかっただろうに。


それに噂で聞いたが、黒髪が理由で嫌われている?冗談じゃない。きっと欲深い人間たちが彼女の美貌や才能に嫉妬しただけに決まっている。人間はつくづく心が醜いと思うよ。


欲にまみれているのに人前では善意ぶる。

考えただけで吐き気がする。



そう言っている自分も人間なんだけどね……


まあ取り敢えず彼女には期待できそうだよ。




僕は楽しみにしてるよ。僕の可愛い、可愛いユリア。



***



ユリアの従姉妹に会った。シャルロッテというらしい。シャルロッテじゃあ長すぎて呼びにくいからあのガキでいいや。

ユリア曰く、彼女に普通に接してくれたのはあのガキだけだったらしい。


噂通り、あのガキの顔は整っているけどきっと顔だけの空っぽだ。

会話をしていて分かる。彼女は控え目に言って馬鹿だ。

きっと甘やかされて育ったのだろう。


正直言って、ユリア以外の女はどうでも良いし、興味が湧かない。

それに加えて天使だって?笑えてくる。

天使はいつだってたった一人。僕のユリアだけだよ。



ユリアはシャルロッテを愛している。彼女の態度がそう示している。

でもそれはユリアが辛くて、一人だった時に手を差し伸べたのがあいつだったからなだけ。

その時、君の隣にいたのが僕だけだったら、君が愛すのは僕一人だったはずなのに。

ユリアが愛して良いのは僕だけなのに。


「凄いです!尊敬しますわ、オーウェン様」


ああ、うるせぇ。

おっといけない。口が悪くなってしまった。


そういえば、ユリアはこのガキを信頼してる。

それに今見ればこいつ、完全に僕に惚れ込んでる。

ガキの相手は厄介だが、これはうまく利用できるじゃないか?


「はは、そんな事ないよ。練習すれば君にだって出来るさ」


お前のこと利用させて貰うよ。悪く思わないでくれ。

これも全て僕のユリアがもっと美しくなる為に。


ああ可笑しい。もうユリアは動揺し始めている。

表情が見え見えだよ、僕の可愛いユリア。


でも心配しなくていいんだよ。僕は美しい君のことしか愛していないから



***



「辞めて下さい、お姉さま!」


あのガキの声が響く。

今日も犬の様にキャンキャンうるせぇ。正義の味方かお前は?

ガキは黙ってアホみたいに操られてれば良いんだよ。


でも良い仕事はしてくれているみたいだ。

彼女を利用するのが正解だったな。


まあ僕の貴重な時間をあいつに使ってやってるんだからこれぐらい成果がなくちゃ困るんだけどね。


嗚呼、それにしても最近のユリアは益々僕好みになってきている。

自分の欲望に正直でそれを手に入れる為には手段を選ばない。

僕と一緒だね。本当に最高だよ。


「シャルロッテ。どうして彼を私から奪うの?」


ユリアが表情を崩す。



ドクンと僕の胸が高鳴る。



そうだ。そうだよユリア。

もっと、もっと彼女を憎むんだ。


ユリアの愛を手に入れる。僕だけのものにする。それが僕の望み。

今まで何も望まなかった僕のたったひとつの願い。

神様、叶えてくれるよね?







君が愛すのは僕一人で充分なんだから。ね?

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