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短めです。m(_ _)m
オーウェン・ベルノア。
王族の証となる金色の髪に透き通った、美しい瞳。その整った顔だちと気立ての良い性格で一体どれだけの女性を虜にしてきたものだろうか。
ーー私もそんな彼に魅了された人の一人だった。
ベルノア国で合計三家しかない公爵家の内の一家であった私の家族、ローゼンハイム家は王族と親しく、私達の婚約は産まれる前から決まっていたらしい。勿論、私がこんな「醜い姿」をして産まれる事も知らずに。
婚約破棄など容易く出来ただろうが、欲に溺れた親は酷く粘ったのだろう。
最初は彼との婚約はどうでも良かった。結局私が幸せになれる訳でもない。年の離れた知らないおっさんに売られよりは良いと思った。
親に設けられた彼との初対面は私の期待を裏切った。勿論良い意味で。
彼は恋愛感情ではないが私に対して好意的だった。
「僕は見た目だけで判断しないよ」
「君は本当に美しいと思うよ」
「もっと自信を持っていいんじゃないかな?」
私が受難な日々を過ごし、苦しんでいた時、そんな彼が発した言葉に救われた。
今思えばそんなに深い意味は無かったのかもしれない。空っぽの言葉だったのかもしれない。けれど当時、ループを経験した事がなかった、精神的に弱っていた私はそんな言葉に救われた。
いつしか甘い言葉を囁いて、私を認めてくれた彼に深く溺れた。
しかし彼が私に恋愛感情を抱く事はなかった。
***
「凄いです!尊敬しますわ、オーウェン様」
シャルの声が反響する。
彼女の目に映る感情は尊敬だけではなく私が恐れていたものだ。恋。
天使に愛されてそれを拒否する人がいる筈がない。
「はは、そんな事ないよ。練習すれば君にだって出来るさ」
彼の目に映る感情も「婚約者の妹」以上のものだ。
ーーこれは私の記憶
勿論ループをあまり経験した事がなかった最初の数回、私は抜け出せない羨望で狂った。そして愛していたシャルに……手を上げた。虐め続けた。最初は罪悪感で押し潰されそうな気分だった。しかし、オーウェン殿下とシャルの距離はより一層近づいた。
彼女への嫌悪は増え続けた。
最初から物語の主人公はシャルで、私は悲劇のヒロインと王子様を繋ぐ為のただの柱。
ーーただの心の醜い悪役だった。