失意の先に・漂泊の海を越えて⑥
ああ、なんて情けない。
あれだけ大口を叩いておきながらこのざまだ。
結局、俺自身の力じゃ本気になったあいつを倒すどころか、抑えきることすらできやしない。
畜生。このまま俺はやられるのか。
何もできないまま殺されるのか。
そう弱気に駆られたとき、ふとあの少女の顔が過った。
俺にずっと付きまとってきたあの金色の髪の少女。
親友を救うために勝算のない戦いに身を投じたあいつ。
俺の正体を知って絶望の表情を浮かべてもなお、立ち向かう気力を決して失いはしなかった彼女。
大切な人の意志を継いで挑み、そして最後には俺すらをも救おうとした。
そんな彼女を想う。
ああ、俺は何てちっぽけな男なんだ。
自分の意地を通すためだけに、俺は俺自身の力だけで勝負に挑んだ。
その時点で、俺はもう負けていたんだ。
戦いに情けはいらない。
戦いに出し惜しみは無用。
覚悟を決めろ、ロイド・エルケンス。
あいつを救い出すためなら、俺は無類の力を解き放とう。
――そうだ、俺が諦めてどうする。俺が諦めたら、誰があいつを助けるんだ。誰があいつをこんな牢獄から引きずり出してやれるっていうんだ。
なあ、聞こえてるんだろ、霊獣。
あんたが俺の中にいることは分かってるんだ。
俺が今まで使ってきた魔術、死神の正体はお前なんだろ。
湖の遺跡で話しかけてきた声の正体はお前なんだろ。
俺の身体をいいように使って暴れたいんだろ。
その機会をずっと探ってきていたんだろ。
だったら受け入れてやるよ。
死神でも何でもきやがれ。
この身体が欲しいんだったらくれてやる。
だから俺に力を貸せ。
あいつを蹴散らすための、絶対的な力を俺に――ッ!
『ふふ、よい決断だ。力なき者よ』
―――ぐぁああぁ!!
頭の中に直接言葉を響かせられるような感覚。
それは女性のような声で、その衝撃が俺の脳を食い破る。
『まったく、ずいぶんと待たされたものよ。このまま燻るようならば、この身体を乗っ取り余のものにしようかと思うたぞ。だが、力なき者よ。余を従えて何を得る? 余の力をもって何を成す?』
――俺はただ、ティアのためにこの身をささげる。それだけだ!
『ははは、その意気やよし。世界の歯車にすらなりえぬ矮小な存在にしては上出来よ。だが、言葉だけの誓いなどいらぬ。今この瞬間のみ、余の力を貸そう。分かるな。まずは仮契約だ。貴様が余の主に値するかいなや。
幻属性を司るこの霊獣ライブラに、この闘争をもって示してみよ!』
――望む、ところだ!




