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神様は金を借りに来ました。

「……はぁ」


 このごく普通な落ち着きのある空間に一人の男が溜息をついた。

 そう、困った事なんて何一つなかった。ないはずだった。


「こいつが来るまではな……」


 目の前のちゃぶ台の上で一人黙々と茶碗にもられた白米を食べる異様な服装をした少女。

 口元についた5粒の米粒など気にせず、ただ黙々と食べ続ける。

 それは明らかにこの東京という圧倒的近代チックな首都という名の聖域に似つかわしくない服装だった。

 そう、絶対にこことはかけ離れた田舎にいるような感じの……、うん、いい例えが見つからない。


 やがて、食べ終わった少女が口を拭き、俺に向き直った。


「今日もおいしかったですっ。東京なのに米って食べるんですね」


 ハリ倒してやろうか。と一瞬思ってしまった。相変わらず一つ言葉が余計なのである。


「米は東京でなくても、色んな所で食される。お前の所にはなかったのか?」

「あぁ~そうですね。私のところでは、ゴッドスープとかゴッドベーグルとか……」

「もういい、大体わかった」


 どうにもならなさそうなので切り上げた。そう、今の話を聞いてわかったと思うが……。


 こいつ、神様だ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 事の発端は去年の夏の頃だった、俺はごく普通に朝8:30に起床し、歯を磨き、白米を食べ、仕事に出かけた。天気は快晴、体は良好。いつもと何も変わらない。会社に到着して、同僚に挨拶し、仕事をやって、上司に叱られる。うん、何も問題ない一日だ。何も……うん、何も。


 ないはずだった。


 その会社の帰りに事件は起きた。会社の帰りに近所のコンビニよって、いくつかアイスと弁当を購入し、家へと向かった。今ハマっているスマホゲームの最新情報とかなんやらを確認しながら家に着くと……一人の少女が俺の家を見つめていた。そう、その少女がこいつである。何も言わず、じっと見つめていた。明らかな不審者だ。


「こ……こういうのって警察に行ったほうがいいんか?」


 突然の出来事で脳内ビッグバンを起こしていると、突然少女がこちらを向いた。何か助かったかのようにキラキラと眼を輝かせて、こちらに走ってきた。


(まずい……見つかった……)


とっさに逃げる体制をとると、少女が叫んできた。


「あ……あの、この家の方でしょうか」

「え……あ……そ、そうだが? なんなんだ、人の家をジロジロと……」


すると、人の話も最後まで聞かず、こう切り出した


「あの! お金、貸してくれないでしょうか!?」


この一言から、この生活の全てが始まったのだ。

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