なかなか、珠理奈は複雑である。
珠理奈から、圭との関係を聞かれた玲奈は、表情を変えた。
玲奈
「圭君とは・・・」
少し口を濁す。
となると、口を濁すほどの理由があるのだろうか。
珠理奈は、いろいろ考えるけれど思いつかない。
それでも、圭に片思いをしながら声もロクにかけられない自分よりは深い関係なのだと思う。
それでも、玲奈や圭のライン連絡の流れから、お互いの信頼は切れてはいない、それも仕事だけかもしれないけれど。
そう思った珠理奈は
「もしかして・・・例の支店長と邦男のことが絡むの?」
すると玲奈
「うん、それ・・・圭君が、それで身を引いていたの」
少し涙ぐむ。
珠理奈にとってはドキンとする答えが返ってきた。
しかし、不思議に玲奈にヤッカミの気持ちがおこらない。
むしろ、玲奈が可哀そうになってしまった。
「そうかあ、将来有望な支店長の御子息との結婚を、チラつかされてか・・・」
「それで圭君が?うーん・・・」
「それも、圭君弱腰だなあ」
今までは、ほとんど思っていなかったけれど、そんな言葉が出てきてしまった。
玲奈
「でも、今度は珠理奈ちゃんが、連絡を取ってくれて」
「ようやく話も圭君と出来た」
「だから、珠理奈ちゃんには、感謝なの」
玲奈は、少し笑った。
珠理奈は、その時点で、圭への片思いは消えた。
それより、圭と玲奈を応援しようと思ってしまった。
「まあ、全く残念、私も圭君狙っていたの」
「でも、みんな狙っていたし、私なんか月並みな言葉しかかけられなかった」
目を丸くする玲奈に珠理奈は、言葉を続けた。
「私もあなたに救ってもらった」
「下手をすれば邦男の嫁で」
「その後は、私だって危険だった」
「だから」
玲奈は、まだ目が丸い。
珠理奈
「私が変な気持ちを起こさないように」
玲奈
「え?」
珠理奈
「女に奥手な圭君を、しっかり捕まえてね」
「約束だよ」
そう言って、玲奈の手をしっかりと握った。
玲奈は、そのまま泣き崩れてしまった。
そんな玲奈を見ながら珠理奈は思った。
「はぁ・・・結局、両天秤は失敗するんだ」
「でも、これで良かったのかなあ・・・」
「勢いで、言ってしまったけれど」
「圭君に奥手は私のほうだ」
なかなか、珠理奈は複雑である。
(完)




