静寂と美味しいご飯。
朝目が覚めると家の中に一人と猫が2匹。ぽつりと一人ソファーに座っていながら静寂の空間にいると鳥達の鳴き声が聞こえ、暑くも無く心地の良い風が窓を通り抜けて家の中へを入ってくる。
とても、居心地の良い生活が送れるようになった所で、ふと何処からか秋を感じさせる焼き魚や、茸のいい匂いが家の中を通り一年もあっという間に終わるのだと感じさせられるのである。
ふと、秋空を見ていると今年も一年もうそろそろ終わるのだろうと考えてしまった。約一年間、何をしていただろうと思い返してみるけれど特にこれといったものは思いつかずただただ時間だけが過ぎていったような気がしていた。
その時考えてしまうのは、自分が何故生かされているのかを一人でいると考えてしまう。猫に質問を投げてみても、猫が喋る訳でもなく『ニャー』と鳴く事しか出来ない。だからといってこの疑問が消えるわけでもなく結果自己満足だと分かっている。
一人でいる時間というものを上手く使えない私だからこそ、悩んでしまうのかもしれない。こんなにマイナスな事ばかりを考えていると、負の連鎖になってしまう事なんて少し考えればと理解はしているのだが何故か考えずにはいられないのだ。
この部屋に一冊しかない絵本を手に取り開いてみた。それは多分皆なら読んでみた事があるだろう。シンデレラの話を……。
元はグリム童話ではあるが、今この手の中にあるものは子供向けになっている明るい話だ。母や姉妹から虐められている毎日だが、それでも前向きに考え日常を過ごしていくそんな姿に私は惹かれた。
非現実的ではあるけれど、一度だけでいいから魔法使いが目の前に現れてくれないだろうかと何度考えたであろう。こんなこと言ってしまえば本当に考えているのか謎になってしまうかもしれないが、私は私なりで考えているのである。
幼い頃から努力をしても人に伝わりにくい性格をしているせいか、『嘘吐き』『怠け者』とよく兄弟に言われたのを覚えている。だからなのかもしれないシンデレラに惹かれるものを感じたのは……。
だからといってなんだ。結局は自らが弱いからなのかもしれない。周りがそういったから『そうなんだ』と錯覚をしてしまいその先には何もない。
そんな気持ちになりながらシンデレラを読み終えると、時間は12時と時計が指していた。
「お昼の時間だ。今日は何を食べよう」
そう誰もいない部屋でぽつりと呟きながら冷蔵庫を覗くと、中には何もない。確か非常食として春雨スープを購入していたのを思い出し昼食にしてしまおうとする。
具は卵と椎茸、小葱が入っている。お湯を注ぎしばらくし蓋を開けるとスープの良い匂いがしとても美味しそうだ。普段から料理を趣味としている私は市販ではなく1から作る事が好きなのだ。
恐る恐る一口食べてみると、それは落ち着く味をしていてとても美味しかった。
食事を取りながらふと感じたことがある。私は美味しい食事を取る為に生きているのかもしれないと……。
美味しいご飯を食べ、日常をのんびりと過ごす事が私には合っているのかもしれないとそう感じたのだ。
秋の季節は、美味しい食べ物が沢山あるのである。茸や秋刀魚、薩摩芋やお米など色々なものがある。それらを食す為に私は生きて生かされているのだとそう思った。
そんな事を考えているうちに私は自然と眠りについたのだ。