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寝不足だっていうのにやたらと突っかかってくる。後編

 恥かし男子が放った巨大な火の玉にもう人生終わったと両の目を閉じた僕、あぁ、今まで楽しかった、幸せだったよ。


 小学校に上がってからは両親が共働きのために朝は冷めたご飯、昼は給食、夜はコンビニ弁当、子供には広すぎる一軒家に一人、寂しくなってお母さんに会いたくて泣いた夜、学校で起きた楽しかった事をお父さんに話したかったけど帰って来なかった夜。


 あれ?あんまり幸せそうじゃないな、いやでも学校生活は楽しんでたよ?ほんとに、友達も100人出来たし!ってマッマとの交換ノートには書いたし!いや心配掛けないようにとかそういう事じゃなくて、ほんとだもん!え?そもそも母親と交換ノートでしか喋ってないのが不幸だって?良いじゃないか、人には人のやり方があるんだよ!なんだよ、可哀想な目で見るなよ!


「うぅ、なんで僕が心の中でめっちゃ喋る理由が両親の愛が足りないからとか言われなきゃいけないんだ!」


 いや、誰も言ってないけど、誰かが言った気がしたから、あとなんか僕死んでないっぽいからついでに目を開けてみた。


 薄目で前を見るともくもくと煙が立ち込めていて、そこへ空気を読める風が吹きすさび、だんだんと煙が晴れていく、そして徐々にその姿を現わす銀色の鎧、僕を助けてくれたというイメージのせいで照りつける太陽の光を力強く反射するその鎧の神々しさはこの世のものとは思えないほどだった、細部まで拘った金の装飾や細工に職人の技が光る、そして何より兜がフルフェイス!顔を見せないミステリアスなヒーローの魅力が男の子のハートをがっちりキャッチ!


 正直に言おう


「かっけぇぇええーーーーっ‼︎」


 鎧の魅力が寝不足だっていうのにやたらと突っかかってくる。後編っ!は前編っ!の続きぃっ!


「な、なんだと?貴様いったい何者だぁ!」


 な、なんだと?噛ませキャラってホントにそんなセリフ言うんだぁ?


「さっすが健一!信じてたぜ!」


「仕方ないだろ、後ろのみんなまで巻き込む訳にはいかないし、羊一の肉片とか浴びたくないし。」


 なに言ってんだろ?なんで僕の肉片が飛び散る想像したんだろ?


「そんな事より羊一!お前の能力でいけるか?俺の能力じゃこの距離での攻撃は出来ない!」


「え、そうなの?っていうか健一、お前どうやってその鎧出したの?」


「え?あー、そういえばわかんないや、なんか夢中で覚えてないけど、気づいたらなってた!」


 えー、なにそれぇ?マジ役立たずだな!ってか夢中で覚えてないけどみんなの命を救っちゃったって主人公かよお前ぇ、なんで僕の物語でお前が主人公しちゃってんだよ、マジでムカつくな、こいつとは絶対に高校入学したら疎遠になるパターンの友達になってやる!じゃないと僕は僕の人生なのに脇役になってしまう。


「ん?夢中になってて覚えてないって事は技の名前叫ばなくても良いって事?」


「あ、確かに俺言ってないな、この鎧の漫画では一応装着するとき掛け声とかあるんだけど。」


「え、て事はあの恥かし男子はわざわざあんな言わなくても良い痛いセリフ言ってたって事?」


「おい!痛いセリフってなんだよ!これでも徹夜で考えたんだぞ!それにこの方が雰囲気出てかっこいいじゃんか!」


 おや?顔真っ赤にして、普通の男子生徒の顔に戻ったぞ?


「徹夜で考えてそれかよ、ってかどうせそんなセンスなら漫画とかから引用したほうが良かったんじゃね?」


「な!てめぇ!モブ顔だから仲間だと思ってたのに!夜通し設定を考える楽しさを嘲笑うとは、お前はそこの主人公っぽいやつの仲間になるんだな!?そういう事ならもう容赦しないぞ!」


 ん?なんかめちゃくちゃいい出したぞ?


「おい!お前!こいつは健一、どこにでもいそうな漢字の【健一】僕の名前は【羊一】変わった漢字の名前は主人公の証!つまり僕が主人公だ!そしてこれから仲間になるんじゃなくてもう既に仲間だ!」


「なに言ったんだ?お前はそもそもモブ顔なんだから主人公になんてなれないぞ?どうせ俺と同じ境遇のくせに見栄をはるな!」


 あ〜らら、これはもう無理だな、いい加減腹たって来たよ、フィクションのルール破ってやりたくなってきたぜ!


「てめぇ、さっきから好き勝手言いやがって、誰がモブ顔だよ!それにこの物語は僕キッカケで始まったんだよ!僕がいなきゃ健一も馬渕さんもあの変な外人の神様に能力を与えてもらえさえしなかったんだ!つまりは僕がこの物語の主人公!僕の思考がこの物語の主軸!僕の言動がこの物語を進行するんだ!この物語が人気作品になるか不人気作品になるか、全て僕次第って事さ!良いのか?僕に逆らって本当に良いのか?」


「うるさい!『メテオライト』」


 抑揚の無い声で攻撃してきた。


 あれ?全然信じてくれてないぞ?すげぇ淡々と攻撃してきた、こっわ!


 バシュゥーン!という効果音と共に火の玉を消滅させる健一。


「くっそぉ!いったいなんなんだよお前!くそぉっ!僕は、僕の人生なのに……どうしてお前達みたいのがいるんだよ!どうして僕はいつも脇役ですらないんだ!僕だって主人公になりたかった!くそぉっ!死ね主人公!」


 なに言ってんだあいつ?一人称“僕”になっちゃったし泣きじゃくってるし、はっ!顔きったねぇ!


 バシュゥーン!ともう一度放たれた火の玉を消滅させる健一、火の玉は効果が無いと諦めて捨て身の突進を仕掛けてくる恥かし男子。


「よし健一!カウンターでやっちまえ!」


 ところが健一は奴を殴るどころか抱きしめた。


「中田、俺は知ってるよ、お前がいつも朝早く登校してきて教室の花瓶に水をあげてるのを、クラスのみんなが掃除をサボってるのを見てもいつも中田だけが最後まで頑張ってるのも知ってる、そうだ、この間学校の近くの公園で捨てられてた子犬、中田が引き取ったんだろ?」


「え?なんで……知って…?」


 おぉ、中田がなんか良い感じに改心しそう、さすが健一、第二主人公。因みに第一主人公は僕だ。


「なぁ中田、人はみんなそれぞれの人生の主人公なんて言うけれど、あんな言葉じゃ慰めにもならない時ってあるよな?俺だって誰かの人生の脇役になった事だってあるよ、参加したい物語から爪弾きにされた事だってある、辛いよな、だけど俺は諦めなかったよ、だから誰かの物語の主人公になれたんだ、中田だってそうだろ?」


「いや…あの、僕は…」


「中田!あの日お前が拾ってあげなかったら、あの子犬は雨にぬれ、泥に塗れ、病気になったかもしれない、あるいは野犬に襲われたかもしれない。だけどお前が拾ってやった事で子犬は救われたんだよ、子犬にとって中田はヒーロー(主人公)なんだよ!中田をヒーロー(主人公)だって信じてくれてる子犬のために、もうこんな事はやめよう、中田。」


「う…ぅう…」


 お、中田が呻いている、これはもしや改心したか?


「……鎧…てめぇ…」


 ん?


「さっきっから中田、中田って!俺の名前は田中だーっ!」


 そんなベタなぁぁあぁぁあああーーーーーっ!!!!


 おいやめろ健一てめぇ!そんなつまんねぇギャグ仕込みやがって燃やすぞ!


 中田改め田中が力一杯にミスターベターにしがみついて全身を発光させる。


 ぬぉ?なんかやばそうだ!もしや田中、貴様人造人間ではあるまいな!?


「忌々しい鎧め!だがこれで貴様は動けまい!そして次に俺が繰り出す攻撃は今までの威力の比じゃない!試した事はないからわからんが恐らくはこの街くらいなら一瞬で消し炭だろうさ!このままなにも出来ずに周りの仲間達が燃え尽きるのをせいぜい眺めてな!」


「……っく!」


 ……っく!じゃないよ!誰がこいつの逆鱗に触れたんだよ!反省しなさい健ちゃん!全くほんとに燃やしてやりたい!マジでその無敵の鎧、僕の無敵の炎と勝負したらどうなっちゃうんだろ?なんか試したくなってきたな。


「おい、健一、この鎧の元ネタってどんな能力?正直そいつの次の攻撃防げるくらい無敵なの?」


「こんな非常時になんでお前はそんなに呑気なんだ?まぁいい、この鎧は敵意を跳ね返す鎧だ、残念ながら無敵じゃないけどこいつの攻撃に敵意が籠っていれば間違いなく耐えられるはずだ。」


「そっか、えい!」


 次の瞬間田中が燃えた。


「ぐわぁあぁああ!熱い!熱いぃ!!」


「……っえ!?」


「おぉ、やっぱ無敵の炎はすげぇな!」


 先ほどほにゃらら(こちらの都合により何を、とは言えないが)を燃やそうと思ったらなんと手から炎が出たのだ、まさかこんな簡単だったとは、ともあれ僕は能力を使えるようになったし田中の攻撃を阻止する意味を込めて燃やしてみた。


 だが残念ながら僕の敵意を察知したのか健一の鎧は燃えなかった、敵意感知能力はかなり精度が良いらしいな、残念だ…だが目的の田中は面白いくらいに燃えた。


 ちょっと燃えすぎか?


 あれ、やり過ぎかも、あれ?やばいやばい、これかなりエグい!


 うわぁ、マジかよ!あれ?これどやって消すの?あれ?あれ?やばいやばいやばい、人殺しになっちゃう!


 マジでやばい!とパニックになっていたら美少女探偵が僕の前に現れた!心が洗われた!やばっ!かわいっ!なんか燃えて転がってるやつとかもうどうでもよくなってきた。


「羊一!早く火ぃ消えろって念じながら指パッチンして!」


「……ぇ?な、なんだって?」


「いいから早く!その人焼け死んじゃうよ!もうライフゲージが赤いよ!」


 なんだかよくわからないが言われる通りに指を鳴らしてみると瞬く間に火が消えた。


「え?馬渕さんなんで消し方わかったの?僕でもわかんなかったのに。」


「唯の能力!この虫眼鏡で覗くとなんでもわかっちゃうんだよ!」


 やめてぇー!


(ウィンク+虫眼鏡)×首を傾げる=僕萌え死ぬ


 もう次からタイトル「馬渕さんが可愛過ぎて辛い」にしようかな、いやでも、それは流石にダメか?


 とか考えていたらクラスのみんなが次々と倒れた。


「ぇ?ぇ?なにこれ、怖いんだけど!!?」


「おい、みんなどうしたんだ!?」


 ちょっと健一くん!第一主人公の僕が怖がってパニックになってるのに第二主人公の君がなんでそんな堂々と主人公アクションしてんのさ?


「あ!唯わかったかも!これフラッシュモブじゃない?」


 馬渕さん、その虫眼鏡ほんとになんでもわかるの?


「馬渕さん、虫眼鏡!覗いてみて?」


「あ!羊一それナイスアイディア!あれ?っていうかみんな寝てる…だけ?」


 馬渕さんが言うやいなやいきなり目が回る。


 あれ?おかしいな、なんで急に真っ暗に?


 ドサドサッと僕の周りで馬渕さんと健一が倒れる音が聞こえた気がした。



ふひー!やっと書き終わりました!

楽しんでいただけましたでしょうか?


終わり方が気になるところですが続きは次回!明日か明後日か今日の深夜に更新予定!乞うご期待!


ブックマーク、感想、評価、バッシングさえもお待ちしております。

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