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ムーンの光

作者: 小鳥 歌唄

 一人の可愛らしい、女の子が居ました。名前はムーン。

 ムーンはいつも、真っ暗な夜空を見上げて思います。

 「あぁ、光輝く綺麗な夜空が見てみたい・・・。」

 人間の国の夜空は、真っ暗でした。星も無く、月も無い、真っ黒で空っぽな夜空。

 人間は暗い夜空を照らす変わりに、沢山の宝石を身に着けていました。キラキラと光輝く、美しい宝石。

 ムーンは思いました。

 「あの宝石を夜空に散りばめれば、きっと綺麗だわ。」

 ムーンは宝石を、夜空に投げてみました。

 しかし、宝石は夜空へは届かず、落ちて壊れてしまいます。

 「きっと偽物の輝きだから、ダメなのね。」

 ムーンは本物の輝く光を探しました。

 太陽の光を集め、夜空へと投げてみました。

 すると夜から、朝へと変わってしまいます。

 「太陽は朝にしか顔を出さないから、ダメなのね。」

 また失敗。

 次はどうしようかと悩んでいると、嬉しそうに話をしている、一人の男の子を見付けました。

 男の子は、夢について話していました。大人になったら、こんな風になりたいと話している男の子は、とても輝いていました。希望に満ち溢れ、 その瞳はキラキラと光輝いています。

 ムーンは思いました。

 「人間の夢は、とても綺麗に輝いているわ。人間の夢を夜空に投げてみようかしら。」

 ムーンは一人の人間の夢を、夜空へと投げてみました。

 すると夜空に、一つの光が輝き出しました。真っ暗だった夜空に輝く、一つの光。

 「綺麗!一番星!」

 それからムーンは、沢山の人間の夢を集めました。沢山集めて、沢山夜空に散りばめました。

 気が付くと、空っぽだった夜空は、沢山の光に埋め尽くされていました。真っ暗だった夜空は、沢山の夢で光輝いています。

 「綺麗!綺麗!」

 ムーンは喜びました。夜空に光輝く、人間の夢で出来た、沢山の星。

夜空が星空に変わりました。

 空っぽだった夜空が埋まると、変わりに人間が空っぽになりました。夢を無くした人間は、ただの人形へと変わりました。

 ムーンは空っぽの人形を、海へと投げ捨てました。海の中も、空っぽだったからです。

 空っぽだった海の中に、沢山の人形が沈むと、今度は海の中が埋まりました。

 海の中は、投げ捨てられた人形の瞳から、真珠が出来ました。真珠は太陽に照らされると、キラキラと光輝きます。

 「綺麗!綺麗!海の中も綺麗になった!」

 ムーンは喜びました。

 夜は綺麗な夜空の星が輝き、朝は綺麗な海の真珠が輝く。ムーンはとても喜びました。

 しかし、人間が皆居なくなり、ムーンは一人ぼっちになってしまいました。

 一人ぼっちのムーンは、とても寂しくて仕方がありません。

 皆は一緒に夜空に居るのに、自分だけここに一人。

 「夢を戻せば、皆戻ってくるわ。でも変わりに、また夜空も海も、空っぽになってしまう。」

 ムーンは悩みました。

 皆の夢を戻して、また空っぽで真っ暗な夜空にしてしまうか、このまま綺麗な星空のままにして、一人で過ごすか。

 悩んでいると、ムーンはいい事を思い付きました。

 「そうだわ!私も皆の所に、行けばいいのよ!そうしたら、一人寂しくない。夜空も綺麗なままだわ!」

 ムーンの心は、喜びと嬉しさで、輝きました。眩しい位に、光輝いていました。

 ムーンはその輝きを、星空へと飛ばしました。

 星空の中に、大きな丸い光が輝きました。

それはムーンの光で出来た、綺麗なお月様。星空の中に、月が生まれました。

 変わりにムーンは、空っぽになりました。空っぽの、人形になってしまいました。ムーンも人間だったからです。

 人形になってしまったムーン。その体を、海に捨ててくれる人は、誰も居ません。それでもムーンは、幸せでした。皆と一緒に居られる。誰よりも光輝ける。

 何かを手に入れる為には、何かを失ってしまう。

 しかし、それが本当に欲しい物なら、失ってしまっても幸せなのだと、ムーンは知りました。

 ムーンは皆と、光が散りばめられた夜空を見たかったのです。

 こうして夜空には、星と月が生まれ、海には真珠から、命が生まれました。

 ムーンは夜が来る度に、空から空っぽになった自分の人形の体を、見守り続けました。

 いつか新しく生まれた命が、海に捨ててくれる事を願って。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まさに童話的! [気になる点] 後ろから六行目付近が蛇足? 全体の中でそこだけが浮いて見えるんですよね。 [一言] 柔らかな語り口も、主人公が残酷さを含んだ無邪気な性格なのも、すごく洗練…
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